Ruina組曲「そして、物語は終わり、冒険は続く」の解説

敬愛してやまないEcallis(@ZirvoYeelorn)さんが本記事を中国語に翻訳してくださいました!!!本当にありがとうございます!!
ぜひこちらからご覧ください!
http://esmostella.lofter.com/post/2378b1_1cb4a4ce6

初めまして,大河の白い蛇(@RuinaFun)と申します.

ずっと作りたかったRuina〜廃都の物語のBGMメドレーが完成しました.
こちらからお聴きいただけます.
ぜひ一度ご視聴いただけますと幸甚に存じます.

Ruina〜廃都の物語とは,2008年に発表されたツクール2000製のフリーRPGです.地図の空白を埋めながらダンジョンを探索する,ゲームブック的なRPGというキャッチコピーの通り,一風変わったゲームシステムとなっています.

フリーゲーム史上最高峰と名高いこのゲームの魅力は尽きるところを知りませんが,ただただ製作者である枯草章吉先生に尊敬の念を抱くばかりです.ぜひ一度プレイしてみてはいかがでしょうか.

さて,前置きが長くなりました.
今回,二次創作としてこのゲームのBGMのアレンジメドレーを製作しまして,これでもかというほど愛とこだわりを詰め込みました.そこで,この楽曲に込められたこだわりをただただ解説しようと思います.

この記事はその性質上ネタバレが多分に含まれます.あらかじめご了承ください.さらに,文言はかなりメルヒェンでポエミィです.ご容赦頂きますようお願い申し上げます.

始まりは「歌」から.そして「帝国」と「女神」を暗示する

Ruinaの最終盤・アーガデウム出現時の街の曲であり,星幽界の果て・至高天に流れる「歌」からこの組曲は始まります.コーラスを主体としてヴァイオリンが荘厳さを演出しています.アーガデウムから聴こえるこの歌は子供達が歌う人間と帝国の賛美歌です.

途中ハープの音が重なりますが,このメロディラインは,オープニングおよび忘却界で出会う大いなる川の娘のテーマから取られています.

このRuinaがタイタスアークフィア,それぞれ帝国女神を舞台にしているゲームであることを暗示します.

素晴らしい結末に至った,この物語を想う

場面が変わり,グッドエンディングから組曲が始まります.エンディングが流れるということで,このメドレーのテーマは「回想」です.
調は嬰ヘ短調(F#)であり「暗く神秘的、妖怪的、同じに情熱的」な特徴を持ちます.まさにRuinaの雰囲気に合致していますね.

それでは,今までの冒険の物語をひとつひとつ丁寧に記憶から取り出し,想いを馳せていくことにしましょう

このメドレーはだいたい12小節で場面が切り替わるようになっていて,
最初の4小節で場面の想起,次の8小節でメインパートを持ってくる構成になっております(一部例外があります)

落雷で開いた洞窟,冒険の始まり,仲間との出会い

滝の洞窟が始めてのダンジョンでした.パリスとネル,ラバンの3人とダンジョン探索の基本であるロープやツルハシ,ランタンの使い方を学びつつ,さらに竜の塔へと続きます.

竜の塔では,キレハを助けたりチャンピオンと戦ったり,魔将の一人であるナムリスに竜の子と共に挑みました.
メドレーの中でも割と王道なアレンジというか,少しだけ勇ましくなってはいますが原曲とほぼ似たメロディラインになっています.後半は音を重ねてよりヒロイックな感じを増しました.

九人の罪人と魔法陣,不思議な蓮池,大河流域の帝国の主

続いて宮殿です.Ruinaのなかで一番のホラーダンジョンですね.九人の罪人を磔に処して,皇帝を倒しましょう.中庭の蓮池は訪れるたびに別の夢をみせてくれました.
ピアノのガーン,というフォルテがホラーぽさを演出した曲です.メロディ部は原曲では7/4拍子だったのですが,4/4拍子に変えました.コーラス部分は人々がたくさん集いそうな場面に利用していて,宮殿の前半でも使われています.

迷いの森を抜けて,妖精の王が語る真実

宮殿を抜けると妖精の塔です.妖精王によれば,四つの塔には四人の守護者がおり,探索者たちはこれを斃すか屈服させなければならぬ運命でした.塔の中に作られたミニチュアの森,大河源流にあると伝えられる宇宙樹のレプリカはまるで絵画のようです.

宮殿から妖精の塔でBGMの雰囲気がガラリと変わったので,このメドレーでもフルートとストリングスを前面に出して爽やかさを意識して,いままでの重苦しいイメージと区別しました.5/8拍子というかなり珍しいリズムですが,メドレーに組み込むときに4/4拍子に変えています.

時を超えて,滅んだかつての帝都を望む

妖精の塔を越えると,大廃墟へ到達します.このダンジョンで古代都市と大廃墟を行ったり来たりするという展開に震えました.

メドレーでは,なんと大廃墟と古代都市の二曲が行ったり来たりします.4小節ごとに変わっていることにお気づきになられましたでしょうか?
二曲とも6/8拍子ということで,二つの曲を融合して生まれたパートです.

ハープの音を注意深く聞くと,それぞれがそれぞれに寄る形でアレンジされていることに気づくかもしれません.

廃都の物語という副題の通り,全ダンジョンの中心に存在するこのダンジョンのみ例外的に拍子が6/8となっており,パートもやや長め(16小節)となっています.

指輪がために争う小人,古くから伝わる炎の魔神の正体とは

大廃墟の南東には小人の塔がありました.王と王弟が指輪のために争い,王子ダリムと行動を共にして,戦争を終結させましょう.小人の塔は指輪物語の影響が随所に見られるダンジョンでした.

もともと金管の勇ましさが詰まった曲です.損なわないようにしながら迫力アップに努めました.サビはホルンとトランペットを主体に,ドワーフの力強さを表現しています.

悠久の時が流れる異教の寺院,巨人の王の名を当てよ

大廃墟の南西には巨人の塔が構えています.この寺院は大河の神々ならぬ神を信奉していると思われますが,果たして何の神を奉じているのでしょう.
巨人の王がすなわち神なのでしょうか.ギリシャ神話のタイタン神族を彷彿とさせますね.

寂しげなギターとオーボエが素敵な寺院BGM.この曲も3/4拍子だったものを4/4拍子に変えています.間延びしないようにリズムを工夫したので,ここは結構お気に入りなパートです.木管が主体でメロディを奏でていますが,実は原曲は音程の高低差がありすぎて,現実のオーボエでは演奏できません.工夫してメロディを変えつつ,違和感がないように仕上げるのが難しかったところです.

四つの碑石を手に,最奥の遺跡の扉を拓くとき

墓所・墓所玄室への侵入シーンです.四つの碑石を手に,四枚の未知の物質で出来た扉の封印を解き,最後のダンジョンへと進みます.

四回鳴るガラスが砕け散るような効果音は,四枚の封印を解く音です.
そして八回鳴る鐘の音は,八枚の花弁を持つタイタスの領域を示します.

ついに探索者たちは,千年帝国の主人にして女神と契りを結んだ偉大なる帝王・初代タイタスの元へと向かいます

目覚めた墓守と霊廟に眠る十五人の帝,隠された五つめの石

墓所・墓所玄室は今までと違い,暗い緊張感と焦燥感が伴うダンジョンです.いままで以上に強い怪物達に探索を阻まれ,苦しめられたかと思います.地の底まで続くかと思われる最後の部屋には,金銀細工,宝石,瑠璃,瑪瑙による煌びやかな「世界」が創造されておりました.

不協和音で満ちた不気味で焦燥感を覚える楽曲です.メロディラインと言えるほどのメロディが含まれているわけではありませんが,前面に混沌を押し出したアレンジになっております.

静寂(しじま)――歌が聴こえる,どこから?

タイタス一世を倒した探索者らは,違和感を覚えます.不気味な沈黙があたりを支配します.
時が止まったような静寂,探索者らが地上に出るとそこには.

四小節の沈黙.いままでの激しさが嘘のような何もない空間です.音の残響だけが満ちるようになっています.4:33という有名な楽曲がありますが,沈黙もまた音楽なのかもしれません.

蘇る帝都アーガデウム.黄昏に浮かぶ逆さまの国

朱く染まった空から紫の結晶が降っている.ひとびとは想いを糧とする鉱物ソムニウムに覆われ,夢を見る.
全ての怪異を解決するため,探索者たちは最後の戦いに発ちました.

子供達の夢見る「歌」を背景に女神のハープが響きます.そして流れるようにタイタス追撃戦へと移ります.ここのBGMはテンポが速すぎたため,疾走感ではなく壮大さを意識しながらアレンジしています.最後なので嬰ヘ短調(F#)から二音高くして嬰ト短調(G#)に転調しているのですが,実はグッドエンディングの原曲が嬰ト短調です.
これは全くの偶然でありまして,「歌」の原曲の嬰ヘ短調から「グッドエンディング」の原曲の嬰ト短調へ転調できることに気付いた時は自分で感動しました.つまり,転調することでそれぞれの原キーになっているということです.

そして,物語は終わり,冒険は続く

物語を勝利で飾り,Ruinaというゲームは終わります.
しかし,きっと彼の探索者らの冒険はこれからも続くはずです.

最後はファンファーレで終わります.エンディングの最初のファンファーレです.
これは新しい物語への門出のお祝いであり,探索者達の未来への祝杯です.

最後に

至らぬ駄文でありましたが,ここまでお読みくださりありがとうございました.

末筆ではありますが,ゲームの製作者である枯草章吉様,素晴らしい楽曲の生みの親である作曲者の方々に感謝申し上げます.

大河の白い蛇(@RuinaFun


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