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3. 中野区へのインタビュー|内田悠貴

質問に対する中野区からの回答は以下の通りである。
① なぜIngressを選んだのか?
 もともとプレイしていたこともあり、石巻での申請イベント*1や横須賀市の猿島航路割引キャンペーンを参考に、2014年12月頃に取り組みを開始した。
 中野区としては、人を呼び込み来外者を増やし、観光消費額を増やすことと、寺社や中野サンプラザ、中野ブロードウェイをはじめとする観光資源があり、それらをプレイヤーが巡ることが中野区内を回遊することにつながるため、中野区のPRや来街者の増加という効果が見込めるのではと考えた。

② 観光振興においてIngressが効力を発揮する条件とは?
1) 地域にやる気を持ったプレイヤーが多くいること
 このことがアノマリーやミッションデイなどのイベントが各地で開催される要因なのではないだろうか。
2) 自治体の主要産業が観光であること
 主要産業が観光であれば、アノマリーやミッションデイで多くの参加者が訪れても、その地域住民は(知らない人がたくさんくることを歓迎している又は慣れているから)寛容であるため、受け入れやすい観光資源が適度に散らばっていること地域内に観光資源が散らばっていることで、地方では商店街が駅前にしかなく、郊外には大型ショッピングモールがあるという例があるが、東京23区内では商店街が駅前のみならず各地にある。よって、駅前だけではなく、駅から離れたところに観光資源があれば、駅から離れた商店街などをプレイヤーが回遊することで観光消費額の増加が見込める。

③ 各種イベントやキャンペーンの目標人数や最終的な応募人数について
1) スマートフォンゲーム「Ingress」を活用した観光・地域活性化を考えるセミナー(2015年1月26日に開催)
 20人を想定していたが、最終的には約100人が参加した。区外からの参加者が多数で、純粋にプレイヤーとして来ている人が多く、自治体関係者はゼロだった。また、商店街関係者へ事前に声をかけていたが、当日参加した方はいなかった。
 セミナーの開催に関連して、企業・自治体・メディアから少なくとも10件以上の問い合わせがあった。
2) 「なかのまちめぐり博覧会」で、オリジナルミッションをクリアした人へのモバイルバッテリープレゼントキャンペーン(2016年12月31日に締め切り)を行った。
 このキャンペーンが掲載されていた『まるっと中野』*2は中野区とサンケイリビング新聞社との公民協働事業であり、このキャンペーンはサンケイリビング新聞社が中心となって行った。
 最終的に応募は約150人あったが、目標数を特に定めておらず、PRが主な目的であるため、ウェブページの訪問などで十分に効果があった。

④ イベントやキャンペーン成功の鍵とは?
1) Ingressと何かを掛け合わせる
例:Ingress×健康、Ingress×地域活性化、など
2) Ingressに限らず、イベントやキャンペーンに付加価値や魅力を持たせる
例:ミッションデイにおける記念品の配布など
3) 事前の情報発信
『スマートフォンゲーム「Ingress」を活用した観光・地域活性化を考えるセミナー』の開催前には、まるっと中野のホームページや東京商工会議所のメールマガジンへの掲載が行われた。
4) 参加費が無料であること

⑤ 今現在はIngressを用いた取り組みを行っていない理由は?
 当初、石巻や横須賀で活用したイベントが開催されており、中野区の地域特性を活かしやすい取り組みだと感じていたが、公式イベントでの有料チケット販売などのマネタイズ面や地域トラブルなどの新聞記事での表出があること。また、住宅都市である中野区では、商業地域のすぐ隣に住宅街があり、住宅街を避けてイベントすることの困難さや歩きスマホなどネガティブな要素も多いため、大きなイベントは難しいと考えている。

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*1 イトナブ(2014年5月14日)『Ingress Meetup in Ishinomaki』、http://itnav.jp/old/archives/938, 2017年12月12日参照。
*2 東京都中野区・サンケイリビング新聞社運営、『中野区都市観光サイト まるっと中野』、https://www.visit.city-tokyo-nakano.jp/, 2017年12月12日参照。
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