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妖しい中華エステのキャッチにあえてついて行ってみたお話。

夜を知った日

17歳の時だったと思う。高校三年生になりたての春季・・・そう、同級生がお受験の勉強を血眼になってしている時にだ。ぼくはエロゲー音楽のライブを鑑賞しに東京・渋谷に来ていた。

それまでも度々東京には来ていたが今回はちょっと事情が異なる。ライブの開催は夜になってからで、終幕は22時頃になる。それから2時間ほど時間をかけて実家のある栃木にまで帰るのは少々億劫だった。

よーし、夜の街に繰り出すか!
当時未成年のぼく、親に「信頼できる人の家に泊めてもらうから安心してくれ」と連絡をして、夜の渋谷をぶらつくことにした。

ライブハウスがあるのが道玄坂のあたり。まずはそこから駅チカの通りまで歩いていく。道中、やたらとホテルが多いことに気づく。煌々とした派手な外装に、休憩4000円~と書かれた(当時のぼくにとっては)奇妙な値段表。

(ホテルなのに休憩?はて?)

当時のぼくは田舎生まれ田舎育ちの未成年である。まだまだ純粋だった。

顔を進路に向けると、向こう側から歩いてくる、高級そうな服と色気を纏った女性が見えた。彼女は先のホテルに入っていった。

(あぁ!これが「らぶほ」ってやつか!)

この日少年は夜の世界を知った。知ってしまった。


・・・・・・・・

・・・・・

・・・

繁華街にやってきた。周りは人、人、人。ぶつからないように人流に乗るのはまだ難しく、たどたどしい動きでなんとか人を躱しながら前進していった。

「オニイサン、ウチカワイイコイルヨ、ヨッテカナイ?」

突然片言の日本語で話しかけてきた中国人(推定)だ。
何度でもいうが当時のぼくは17歳だ。キャバクラ(推定)にお持ち帰りされるのはちょっとマズイ。それくらいは理解していた。

「いや・・・あの・・・ちょっと」
「イイジャンイイジャン、チョットデイイカラヨッテキナヨ」

今も昔も変わらず、NOとは言えない性分なのである。しかし、足は止めずにやんわりと断り続けたらあちらも諦めたようで元いた場所に戻っていった。

で、こんなやり取りがあと2回。計3回ありました。

なんか怖くなったのでロイヤルホストに逃げ込んだ。当時は深夜まで営業してたので、一品だけ注文して深夜2時まで立て籠もっていた。この時の経験があって、今でもぼくにとってはロイヤルホストはロイヤルホテルなのである。

この時に行ったライブの映像が残ってました。たみー可愛いよ。


夜に駆ける

時を経て、現在。
家族と友達はずいぶん遠くに行ってしまい、気軽に遊べる人は皆無。
仕事が終わるのが早くても21時なので、退勤した後に開いている店と言えば・・・ガールズバー、キャバクラ、ピンサロ、そしてお風呂屋さん。

↑そういえば、去年末はガールズバー(今思うとアレはキャバだったわ)にハマってましたね。


すっかり夜の世界に馴染んでしまったぼく。
夜の世界の住人って、ぼくに積極的に構ってくれるのよ。
それが金の為だってのは理解ってる、けどね、それでも話しかけてくれるってだけで心の間隙がほんの少しだけ埋まる気がするのよ。

昨晩も急に孤独が襲い掛かってきたので夜の世界の住人に構ってもらおうと思い、川崎へ繰り出した。

ちょっと(当社比)だけ酒を飲み、酩酊状態になっておく。わざと足元がおぼつかない歩き方をしながら、ときどき足を止めて視線を泳がせながら、歓楽街を歩いていく、ぼく(19+x歳)

なんでわざわざこんな歩き方をしているのかというと、こういう人はぼったくりキャッチ曰く「カモ」だから、とのこと。
ぼくの目的は住人たちに構ってもらうこと。だから「カモ」を演じているというわけだ。

↑ぼくの人生に大きすぎる影響を与えてしまった動画制作者さん。この人の動画で歓楽街のキャッチの生態を学んだ。

「お兄さん、なにかお探しですか?」
「1時間3000円で飲み放題、どすか?」
「お兄さん一緒に飲まなーい?」

キタキタ下北沢!じゃなくてここは川崎だ。
来たよ来たよ、寄ってきたよ夜の世界の住人たちが!
君たちにはぼくのことが「カモ」に見えているんだろうがね…

今日はテメェらにnoteのネタになってもらうぜ!

狩られる側は…どっちかな(暗黒微笑)

「オニイサン、マッサージドウ?」

今だ!一本釣りィ!

「え?何円?」
「30プンデ3000エンダヨ」

キャッチの前で足を止めてはいけない。
さっき載せた動画で学んだことである。
ぼくはその教えを破った。

「イコ?」
「・・・うん」

高校三年生の春、もしもあの時に中国人に付いていっていたらどうなっていたのか、その答えを探りに、ぼくは路地裏へと入っていった。


その店は雑居ビルの2階にあった。
重い扉を開き、入店。
3000円の前金を払い、半裸になることを促された。

ベッドにうつ伏せになり、毛布を掛けられ、マッサージが始まる。

「オニイサンカタコッテルネ」
「えぇ、そうなんですよ。」

実際ぼくは首から肩にかけての筋肉がガッチガチなのだ。
コリッ、コリッと固まった筋肉がほぐれていく音がした。

あっ普通に気持ちいいぞコレ!

そりゃマッサージ店なんだからね!気持ちいいよね!

目的とは別のところで満足してしまっていた。

「オニイサン、オイルシナイ?2000エンダヨ」

正直いらんけど、金払いのいい客だと思わせるためにポンと出してやる。

潤滑性を増した手が、ぼくの背面をなぞっていく。

あっ普通に気持ちいいなコレ!


入店から体感時間15分後…

「オニイサンアオムケニナッテ」

言われた通り、仰向けになる。

「オニイサンホソイネ」

うっせぇ。これから筋肉ムキムキになる予定じゃ。多分。

左肩から胸に、胸から右肩に。施術は行われていった。

そして遂に…

「オニイサン、アトイチマンエンクレタラキモチヨクシテアゲルヨ?」

出たー!これが俗にいう「裏オプ」ってやつか!!

「えぇ~どうしよっかなぁ~」
「ヤロウヨヤロウヨ キモチイイヨ?」

流石に一万円払う気はない。が、noteのネタを得るために明言は避ける。

「カワイイコヨンデアゲルカラ、ソノコヲミテカラキメテモイイヨ」
「じゃあ見るだけなら・・・」

すると施術師は・・・叫んだ。

「イー↓シャン↑、リンチー↓チン↑シャオ↓ラー!」
チョン↑パァ!

とは言っていないが、流暢な中国語で店の奥にいる人を呼んだ。

するりとカーテンを捲って女性が入ってきた。

「コンバンワー」
「アトイチマンエンハラッテクレタラ、コノコトキモチヨクナッテイイヨ」

うーーーーーん
悪くはないけど、うーんって感じ。
この人に一万円払うのは・・・うーん。

「やっぱやめときます」
「ソウ、ムリニトハイワナイヨ」

そんなに押しが強くない!これは優良店ですねぇ!
いや、不良店ではあるんだけどね、その中ではだいぶマシな方だ!


夜に駆けた

裏オプを断った後、5分くらい普通に施術してもらい、終了。

衣服をまとい、退店。

「オニイサンアリガトネーマタキテネー」
「うん、また来るかも。」

本当にまた行くかもしれん、気持ちよかったし。

・・・・・・・・

・・・・・

・・・

時計の針は1時を指していた。

さーて帰るか。

「お兄さんお店をお探しですか!」

帰路に就いても猶、夜の住人たちが声をかけてくる。

「いやぁ~特には・・・」

どうせ金の為だろ、それはわかってる、けど。

「ちなみに、どういう女の子が好みですか?」
「ぼくはMッ気があるので押しが強い子とか結構好きですね」
「ならいいお店があるんでご案内しますよ!」
「でも今はお金持ってないんで、失敬」

目的はどうであれ、構ってもらえるのは、嬉しい。









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