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インドの医療、必要なのはお金と主体性

病院ラッシュの2月がもう間もなく終わる。

2月に入って一つも記事をあげられなかった自分にがっかり。

といってもまだまだ子どもたちの異変は続いている。そうなのだ、2月に入ってから子どもたちがおかしい。おかげですっかりインドで病院に行くことが苦ではなくなった。

私立こども病院の受診

最初の受診は予定していたものだった。

インドにきて3ヶ月たつし、そろそろハルのインドでの主治医をみつけておこうと思って予約をしたのだ。

ここでインドの病院事情に少し触れておく。(と言っても聞きかじり…)インドには大きく分けて公立病院と私立病院があり、両者の診察料には雲泥の差があるらしい。公立病院はタダに近い金額で診察がうけられるらしいけれど、施設も不衛生で混乱してる野戦病院のようなところが多いとか。(行ったことないから、実際どうなのかはわからない)

私立病院は、大病院チェーンや自宅で開業している先生など様々だけれど、診察料はそれぞれの病院が勝手に決めるのでバラバラらしい。お金のある人が来ると見込んで、必要ない検査までさせて高額な請求をするということもままあるようだ。ただ、私立の大病院は夫が下見したところ、かなり混雑していて待ち時間も長い。

タマンナのハルの同級生のお母さんから「小児に特化した神経科医はすごく少ないけど、ここの開業医の先生はいいわよ」と聞いたクリニックは、日曜日もやっていて確かに沢山メディアにも取り上げられているような有名な女医さんだったけれど、建物が見た目掘っ立て小屋で、ハルが車椅子ででかけていっておむつを替えたりペースト食を食べたりするには難易度が高そうな印象だった。

様々な情報をもとに、結局ハルはレインボー・チルドレンズ・ホスピタルという昨年できたばかりのこども病院の小児神経科を訪ねた。

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想像していたよりも施設はずっときれいで整っていて、こぎれいなカフェも食堂もあって、予約のためかほとんど待ち時間はなく、先生もきちんと紹介状や服薬履歴を読んでくれて、まともだった。(上からですみません・・・)

むしろまともじゃなかったのは、初回だからとアテンドをお願いした日本語通訳アテンド会社の日本人のおばさん・・・まともに英語を聞くことも話すこともできず、病院の制度や施設についてもたいして知識がなく、挙句の果てに知ったかぶり、仕事はすべて同僚のインド人のお姉さんがテキパキとこなして、チーン、アテンド料3000ルピー。インド人のお姉さんにすべて差し上げたい。おばさん、どうして英語あんなにしゃべれないのに通訳の仕事してるんだろう・・・なんか私、むしろ自分の英語に自信がつきました。ええ。


病院の受診の流れで、日本と大きく違ったのは次の2つ。

(いやもちろん、体重の測り方のいい加減さとか、掃除のゆきとどかなさとか違うことはたくさんあるんだけど!)

1.お金は事前に支払い

受付したらまず診察の支払いをして、はじめて診察が受けられる。検査も事前支払いが必要だ。インドの国民性も反映されているのかな。医療サービス受け逃げ防止ということのようだ。

2.カルテは自分持ち

受診してドクターがぐちゃぐちゃっとかきこんだ落書きのようなカルテは、ファイルごと自分で持ち帰り、次回受診するときに持っていく。”お医者さま”の決定事項をありがたがる日本とは少し違い、基本的にすべて患者主導で、ということの象徴のようだ。


長男、手術

ハルのはじめての受診を終えて数日した日の朝、「なんかお腹痛い・・・」と長男が訴えた。

ちなみにその前日まで、咳をしているから学校に来るなと学校から強制的に欠席を申し渡されていた。しばらく休んだものだから、家にいるの楽ちんさに味をしめて仮病つかってるんだろ、と思って最初は聞き流していた。

けれど、今日はなんだか本当に痛そうなのでお休みさせることに。お腹の風邪かな、と思って食事をやめさせて様子を見ていた。寝て本を読んでいる限り平気そうだが、動くと途端に痛いらしい。一日様子を見ても一向に痛みはおさまる様子はなく、微熱も続いていたのでどうもおかしいと思い、素人ながらに触診。明らかに右下腹部を痛がる。「ちょっとやめてよ!痛いよ!押さないで!」力なく怒る長男。

「右下腹部痛 微熱 歩くと痛い」

検索するとドンピシャだったのが虫垂炎、いわゆる”盲腸”。

こりゃ盲腸なんじゃないのか・・・痛がる息子を担いで先日ハルを連れて行ったばかりのこども病院に連れて行くと、ビンゴ。最初から虫垂炎を疑って飲み食いさせていなかったので、そのままスムーズに手術へ。

長男、まさかのインドで初手術。

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ハルの受診で一度病院にきていたおかげで躊躇なく受診でき、スムーズに治療にもっていくことができた。

入院を通して驚いたことがあった。

1.入院生活のマネジメントは患者任せ

長男、術後うまくおしっこができずに尿管を入れた。それを抜いた後のおしっこがとにかく激痛で、トイレに篭っては「い``〜だ〜い``〜!」とこの世の終わりのように叫んでいた。どうやら尿意は感じて出したいのに、痛すぎてオチンチンがおしっこするのを許してくれないようで「でちゃうよ〜!(なのに)出ないよ〜」と泣いていた。あんなに痛みに泣き叫ぶ長男は初めて見た。尿管をまた入れるのだけは絶対に嫌だ!と言って頑張って次第に出せるようになったのだが、このものすごい叫び声を聞いても(絶対ナースステーションまで聞こえてたと思う)看護師さんが気にしてくるということはなかったし、1日1回の回診以外は医療スタッフがなにかしにくることはなかった。

日本で入院するとうるさすぎるほど血圧や体温を測りにきたり、勤務交代の挨拶にきたりするのに、そういうのが一切ない。用事や要求はこちらから言わないと何もない。自分の治療は自分で責任を持ってマネジメントしろ、ということのようだ。

2.メニューを選べる食事は当然のように付添の分も

医師の指示で、術後1日目の朝、りんごジュースを飲んだ。特に吐くこともなかったので、昼には半固形の昼食を食べてみて、大丈夫なら夜から固形食にしましょう、と言われた。日本のような感覚でいた私は、医師の指示通りに病院のキッチンがなにか作って持ってくるのだろうと思っていた。ところがお昼を過ぎても何もこない。看護師さんに、「お昼は柔らかいもの食べていいって言われてるから出してね」というと、「オーケー、いまから部屋の移動があるから13:00ごろに出るわ」と言われた。しかし部屋移動をして、13:00になっても来ない。「あのね、半固形かペースト食みたいの、食べていいってドクターに言われてるんだけど、お昼出してくれない?」再度看護師にいうと、「わかりました、リクイッドなやつね」と言った。しばらくすると、私にはできたてのラザニアが運ばれてきて、息子にはりんごジュースが1本渡された。え?私のあるの?という驚きはあったけれど、手術が終わってからずっと「はらがへったーもうちょっとしたら食えるー」と待っていた長男の前で私だけ食べるわけにもいかない。息子は「これだけ?そりゃないよ・・・」と涙目だ。

「あのね、朝9:00にりんごジュース飲んだの。それで大丈夫だったから、お昼は半固形食を食べていいって言われて待ってたの。それなのにまたりんごジュースがきたの。おかしいよね?」涙目の息子のために母も強気に出た。

「オーケーマム」看護師はそう言って、しばらくするとニコニコしたジェントルメンが2人部屋にやってきた。

「私達はキッチンから来た、マネージャーとシェフです。何を食べたいですか?チャーハン?グラタン?」

???なにこれ、食べたいもの自分で言うの?ていうか、医師からの指示はキッチンや看護師には伝わってないの?

「あのね、ドクターに半固形食、っていわれてるの、だから、そうだな、じゃあおかゆお願い」

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自宅から持って来たコーンスープをこっそり(本当は持ち込み禁止)そして染み入るように飲みつつ待つこと30分、ようやく息子用のおかゆがでてきた。

話は長くなったけれど、つまり、ここでもマネジメントは自分で、というスタンスが貫かれているようだった。

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その後は毎食ごとに担当者がメニューを聞きにきてくれて、「朝ごはんのチーズサンドはチキンサンドに替えて」とか「朝は大人の分はチャイじゃなくてコーヒーにして」とか言える。素晴らしい。息子は焼きそばにチャーハンにグラタンと、好きなものばかり食べられる上に1日2回のティータイムまで楽しんで、ベッドの上で一日中漫画を読んで、幸せそうだった。

子どもが入院すると付添者の寝る場所は狭いしご飯も出ない日本の病院も見習うところがあるんじゃないのだろうか。

個人の開業医の受診

実は長男が手術・入院している間、同時進行でハルも熱発していた。長男が退院し、ハルの熱も落ち着いて、ようやく日常がもどってくるかな、と思っていたところに、長女がやらかした。

「なんか〜耳がヘン」

日曜の朝、寝起きにかったるそうに言い出した。耳かき大好きな長女なので、耳かきしすぎたんじゃないの?と思いつつライトで中を見てみると、なんと大きめの緑のビーズがキラキラと光っている・・・!

「え。これ。あんたビーズ。入れたの?」

「なんか〜昨日の夜遊んでたときに、ポトって音したんだよね〜。自分ではなんにもしてないよ」

自分で何もせずに偶然ビーズが耳に入ることがあるだろうか。ポトッて音がした後に自分で耳かき棒で取り出そうとしたらしく、それがさらに事態を悪化させた模様。まったくもって出てくる様子はない。

こうして今度は近所の個人開業の耳鼻科医を尋ねることになった。

普通に受付をして、ほとんど待ち時間なく、きれいな英語をしゃべる紳士なドクターが十分すぎる設備で診察。その後、処置室に移動してスムーズに取り除き作業が終了した。取れたけど耳の内部に傷がついているからお薬出しときますね、と言われて終了。

お代なんと、8800ルピー!!!

たっけえーーーーっ!

もちろん保険請求したけど、高い。耳にビーズで、約13000円。ガクブルである。つくづく日本の皆保険制度ってすばらしい。

そして落書きのような処方箋が書かれたカルテを持って近くの薬局に塗り薬を買いに行くと、棚という棚の中、冷蔵庫の中もぎっしりと薬が詰まった薬屋敷からおじさんが出てきて、「あるよ。130ルピーだよ。」とすぐに塗り薬を出してくれた。

なんというか、多分処方箋がなくてもお金を出せば医薬品が買えるんじゃないかな、という雰囲気。実際、一回の処方で、そのカルテを持っていけば何度でも同じ薬を買えるんだとか。当然分包などのサービスはあるはずもなく、薬をきちんと分けて分量ずつ飲む(または飲ませる)のも患者のマネジメント頼みのようだ。

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わずか10日たらずの間に何度も病院に足を運び、すっかりデリーでの病院のかかり方もマスターした気分。長女は学校をお休みしてカフェで好きなもの食べて得した気分。

とにかくインドで安心して医療を受けるためにはまずは金、そしてきちんと自分で治療を主導していく必要がある、ということがわかってきた。

逆にいえば、金さえあれば抜群のホスピタリティで医療サービスを受けられるし、自分でマネジメントしていく気持ちがあればとても納得行く治療が受けられるということだとも言える。

は~ でもほんと、病院って疲れる。。

みんな学校に通い始めたところで、こっそりスパに行ってきたのは夫には内緒である。しばらくは病院に行きたくない。

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・・・が、冒頭でも触れたとおり、実はこどもの異変は未だ現在進行形で続行中なのである。なんと先日4歳を迎えてからというもの、はるるんがニコニコしまくる、しすぎる、ニコニコしすぎて三日三晩寝ない、という異変が・・・いったいどうしちゃったのはるるん!

つづく。



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