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kono星noHIKARI 第8話

GEMINI &  ORIGINAL Ⅱ  2020.03.30


 ダニーが話し始める。

ダニ「えと、これから話す事は、シークレットだよ。周りは全てシールドされている。自分達以外は知り得ない話をするから」

 ノアひとりがキョトンとした顔で、ニコとルカの顔を交互に見る。

ダニ「俺ね。最初は自分たちの惑星KPnsで天体の未来シュミレーションをしたの。ルカがMUGENとコンタクトとれるようにしてくれたから、ある程度のデータを入れるだけでMUGENから画像として送られてれてくるのよ。これが綺麗で楽しくってね。ペテルギウスの超新星爆発がもっと先だってこともわかったし、直近でおこる天体ショーをファンに案内する予定立てたりして天の川銀河を調べてたんだ。だけど、MUGENからのデータが雑になってきて。あれ?と思って、データに穴が空くような現象の原因が想像つかなくて、自分の星でできることは全部やってみた。それでもだめで、TopにTRANS申請したんだ。ルカのミスは絶対にないと思ってたし、もし、俺の力で原因が分かるなら、それが一番いいと思って。そうしたら、Topはジェフをくっつけてきたよね。システムの確認のためだよね。ITにも強いジェフだし、知り合いだし、良かったと思って。リオは地球に興味を持っていて希望枠で。昨年の9月の末に3人でここに着いたの」

 ルカがPCを操作するとオフィスの各々のモニターに同じ映像が現れた。
 モニターにはダニーとルカがシークレットルームであらゆる方向からMUGENにアプローチしている様子が映し出されている。

ダニ「ジェフが最初にMUGENのダウンロードシステムの異常はないと確認してくれた」

ジェ「だって、ルカ作ったシステムよ」

ルカ「それはどうも」
 ジェフが自慢げに話すが、モニターにはMUGENからある日を境に、KP系と太陽系のデータがそれぞれ消え、4人は釘付けになる。

 そして、正体不明の彗星の存在が、画面にバーチャル映像として映し出された。周りの恒星や惑星へ影響を及ぼしながら、進む彗星の姿............

ノア「え?」

 皆、ノアを見る。
ノア「いや、何か、あ、ごめんなさい。説明の最中に」

ダニ「うん。動揺するよね。結局俺にはどうにもできなくてルカを呼んだ。Topの、最高機関に依頼したんだ。彗星のことは伏せて。ハッキリしてないからね。この星の他の国へ現在TRANSしているものも何名かいるけれど、日本には今この6人だけ。TRANSって、本当に危険なのよ。......無事に着いて本当に良かったけど」

 ルカが続ける。
ルカ「まだ、この彗星のせいなのかは分からないんだ。関係しているか、他の原因があるかをダニーと俺で調べていくことになるんだけど、みんながMUGENを操作できるから助かるよ。何かお願いすることも出てくると思う」

リオ「なんか、やばいね」
 とノアに顔を向けた。

 不安そうな表情だったノアの目が虚ろになっていく。

リオ「ノア?」
 ノアの異常に気付き声をかける。

 今まで片肘をついていた机から、ゆらりと上半身が傾く、椅子から落ちそうになったところを、リオが床に滑り込んでノアを抱き止める、その拍子にリオの椅子が倒れ、大きな音が響いた。

リオ「ノア、ノア、どうした?」
 必死に叫ぶ。

 即座にニコもFILMを発生させながら駆け寄り2人を包み込む。

ニコ「ノア!」
 焦点の定まらない目を徐々に瞼が覆い、顔から血の気が引いていく。
ニコ「ノア?ノア?」
 呼びかけながら、ノアの首筋に指先を当て、耳を近づけ口元で呼吸を確認する。

ルカ「何がどうなってる?」
 皆、駆け寄り心配そうに覗く。

リオ「ニコ、ノアどうなってんの?どうすればいい?」
 ノアを抱えながら、ニコにすがる。

ニコ「まって、呼吸させる。リオも手伝って。リオのFILMもお願い」
 リオのFILMが発生する。

 ニコが集中する。1分ほどでノアの顔色に赤みが戻る。長く感じる時間だった。

ダニ「こんなことあるの?」

ニコ「いや、初めてだ。リオこのまま、僕と一緒に繋がっていれる?」

リオ「大丈夫」

ニコ「ありがとう。ノアのFILMが発生しない」

リオ「なんで?」

ニコ「わからない......ノア、どうした?お前。目を覚ませ」
 頬を擦りながら穏やかに話しかける。
ニコ「MINDが離れている」

リオ「ノアどこに行っちゃったの?」

ニコ「わからない。......ノア、来たかった地球だからって、身体置いて、飛び回っちゃダメだ。早く戻らないと、あんなに愛してくれてるパパやママに会えなくなるぞ。ノア、ノア。パパもママも、お前が誕生する時、どんなに待ち望んで、心配したと思う?お前が元気だとわかって、どんなに喜んだかわかるか?お前に長生きしてもらいたいから、丈夫な体にって、パパも一緒になって鍛えてくれてたんじゃないか。そんな、身体を置いて行くな。ノア、戻れ......ノア!」

 《original》の平均寿命は、約30歳だ。ゼロ年齢か50年齢前後で亡くなることが多い。

リオ「ノア戻って......」
 涙がこぼれ、小さな真珠のように一瞬輝きFILMの水溶液の中に溶けていった。

ニコ「originalでこんな事が起きるなんて。意識で会話できる距離を越えてしまっている。この傍にはいないみたいだ。長い時間戻らなければ、危ない」
 話しながらニコは頭の中の記憶を探る。先代に遡って症例や処置を探す。しかし、この星でという特殊条件にマッチするものはない。必死に思考を巡らす。
ニコ「あっ!」
 と顔を上げた。
ニコ「A105(エーファイブ)だ。ルカ、A105を探す。ジェフと」

 ジェフの記憶が開く。
ジェ「この星で消えた人よ?」

ニコ「遺伝子学者だ。僕がずっと探している人だ。彼だったら、TRANSしてきた仲間を何人も診てるはず」

ルカ「何年も前に不明って......」
 脳裏で燻り始めるものがあった。

 遺伝子学の権威であるA105は、先代の多くの学者たちの記憶にも功績が刻まれているほどの、ニコが尊敬する偉大な人物だ。今後の星の進化には欠かせない人だった。

ニコ「いや、僕は、まだこの星で絶対に医療行為をしていると思っているんだ。自分たちがこの星でこうしていれるのも、彼の存在のお陰なんだと思う。この企業の組織下なら」

ルカ「組織の下なら、絶対どこかに、データか何かしらの痕跡がある!」
 ルカが叫ぶ。

ジェ「help you?」
 ジェフが問う。

ルカ「ジェフがいないとだめだ」
 ジェフの器用な解析能力は必要だ。

ニコ「ダニー、来て。呼吸は安定してるから、僕と代わって!僕もデータを探す」

 すぐダニーがFILMを発生させる。皆でノアをソファに運び、ニコがゆっくりその場から抜けFILMを収める。リオがノアの頭を膝にのせダニーは足元に座った。

ニコ「ちょっと頑張っててね」
 不安を振り払うように、明るい笑顔を向ける。

リオ・ダニ「わかった」

 2人が頷くのを見て、ニコ、ルカ、ジェフが部屋を飛び出していく。

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