第166回芥川龍之介賞候補作の評価と感想

会合前、
わたしの今回の芥川賞予想は
島口大樹「オン・ザ・プラネット」と乗代雄介「皆のあらばしり」のW受賞です。
以下、点数(最高5点、最低1点)と感想です。

1.石田夏穂「我が友、スミス」2点
ボディビルの話、それも女子選手だからあまり知られない世界の、知らない世界で面白かった。
本来、身体を鍛えることが一番に思えるけど、コンテストでは、見せる要素も大事、女性らしさとか、ジェンダーの問題にも関わってテーマは深い。ここをもっと掘り下げる余地があったと思う。

2.九段理江「Schoolgirl」3点
太宰の「女生徒」が朝起きてから、寝るまでの少女の1日を意識の流れに沿って描いたように、母と14歳の娘の1日を対比して描き出す。母親は右脳で考え、娘は左脳で考えるような対比、娘は世界を巨視的に捉え理性で行動しているが、やはり母のことを思う娘でもある。「女生徒」の「あなた」が誰か、最後のビデオに解があるように思った。「あなた」とは小説の作者であろう。

3.島口大樹「オン・ザ・プラネット」5点
ストーリーは大学生の4人が、映画を撮影するために、横浜から、鳥取砂丘に車で旅をする話。ストーリー以上に4人の会話だけで、充分におもしろい。難しい言葉は使わないけれど、哲学的思推が深くて感心。言語の限界、世界の意味とか、メタフィクションの構造などおもしろかった。難を言えば、ストーリーに起伏がなく、長すぎるが、最高。

 4.砂川文次「ブラックボックス」1点
前半部分は自転車で書類を配送する、メッセンジャーという仕事について、都心を走り回るシーンがよくかけていてよかったけど。後半は、主人公が社会不適合者になってしまって、刑務所に入ってもどうしようもない衝動に駆られる。刑務所のことをよく調べているとは思うものの、描写というより説明で面白くない。

5.乗代雄介「皆のあらばしり」4点
皆川城址で歴史を研究する高校生のぼくに妙に歴史に詳しい怪しい男が近づき、皆川城近くの酒屋の蔵書に「皆のあらばしり」というものがあると探索を進める。ほとんどぼくと男の会話だけで進んでいくが、真実を語っているかどうかわからず、最後に拙い感じだったぼくが男の上手をいくということで終わる。幕末の歴史の謎解きとしても読める蘊蓄小説。

#芥川賞

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