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決壊のカタチ

縫う作業は、肉に食い込んでくる感じ。手触り。手でじかにつかみ、入り込んでいく柔らかい質感。縫い込んで硬くなる感覚。なんども刺していく繰り返し。

いろんな人々の記憶が湧きだしてくる感じ。さまざまな時代のいろんな場所。なぜこんなにもカラフルで、こんな形が噴き出すのか?日本でもどこでもない。どこかで知っていた異国の。かぶりたくなって、肩に乗せたり首にかけて。いまにも、どっかのお祭りに参加できる。そんなものがどんどん湧いてくる。

どんどん湧き出る色と、縫い込まれていく動きに、なんだか沸き立ってくる感情。けれど、とても地味な繰り返し。ひとつひとつをつなぎとめる。ひとつひとつを縫い込める。そんな一粒一粒を大切に愛するような。愛しすぎて頭おかしくなるような。だから思う。特別な祭りや、護りだけじゃなく、地べたにある生活のあれこれを吸収して、鎮静する。そんなものも含まれてるのかもしれない。縫っていたら唐突にあふれ出た滝涙。唐突に大量に。封じ込められていた何かが決壊した。あとにもさきにもそれ一回だけだけど。すげーぜ、『縫う』って。きっとどの人の身体にも(おそらく多くはそういった作業を担当してきた女性性に…女性限定ではなくて)記憶されている行為なのではないか、と考えてみたり。『縫う』って、人間にとって「なにか」があるんだ。

20170308


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