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画劇 / Drama Draw プロローグ 試金石

私は試金石です。
昨日、友達と話していて、あ!って。気づいた。
金さえも試すんだから、金なんかよりももっと純粋にきんきんしてるわけ。ほんとうにね。わたしはだれかをめちゃくちゃに破壊したいんです。ただ、壊すわけじゃない。壊して溶かして一体化してそしてね、新しい何かに生まれ変わる。とてもじゃないけど、そこいらの化学反応式でなんかじゃあらわせないのよ。変化が予測できる程度のモノなんかじゃないんで。

わたしはね、そうやって本当にわたしを根底から生まれ変わらせてくれる誰かを求めてる。くっつけてコラージュして。剥がしてまた貼って。溶かして混ぜて重ねて。そういう、化学反応式なんかじゃあらわせないような、凄まじい結合と変化を自分の身体に興してみたい。

見た目はつぎはぎの気味の悪い不格好な人間に見えるかもしれないよ?
でもさ、いったん溶け直したものの、あなた、美しいことばを知らないでしょ?
ほんとうにね。そのどろどろに溶けたところから生まれたことばには、輝く鱗粉がつくんだ。それらが垂らすしずくは、北の果ての樹液よりも透明でさ。とろっとしていて。でも、どこまでも透けてるんだよ。

どろどろになった私の心臓は硬質な試金石だ。誰しもを試すんだ。ほんとうにあなたは化学変化なんかじゃあらわせないくらいのあなたなのか。今日もね、友達と話していて試金石が揺らめいてた。


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