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逃避メドゥサ

あたしね。決めたんだよね。
今日からメドゥサになることにした。

髪の毛が毒蛇だっていうじゃない。
あたしの場合はね、それがもちみたいになってて
いろんなもんをくっつけて歩くの。
ありとあらゆるものを。
選ばないの。
なんてもかんでもくっつけて歩く。

目は、ガラス玉みたい。
決してジャッジしないんだ。すべて受け入れてやる。
目に映るものをそのまんま見るんだ。

今日もね、体育のプールをさぼった。
「せんせえ、きょうあたし生理なんで。」
いやー、いったいあたしって、月に何回生理あるんだろうね?笑
もうさ言い訳のバリエ考えんのもめんどいわ笑
今年の夏は一回もプールに入ってない。
あー。どっか抜け出したい。
教室で男子がエロい話ばっかしてんのもウザい。
おまいら、女の趣味わりぃだろ。
なんだかおなかが痛くって仕方がないって嘘言って
学校を抜けて図書館へ行ってた。
途中できなこねじりパンとつめたく冷えた牛乳パック買って。
机につい立てがあるからなんか籠れるし。
いつ行っても、だーれもいないんだよね。あすこ。
つまんなそうな顔した職員しかいない。
カーテンが茶色に煤けてて古い紙の匂いしかしない。

大好きなミュージシャンのことを考えてた。
かっこいいんだよね。
ぜんぜん女ぶってないところが好き。
どんどんステージで脱いでくんだけど、
衣装だってなんかエロいんだけどさ。
でも、あたし可愛いでしょ?綺麗でしょ?みたいのが
微塵もないんだ。かけらも媚びてないんだ。
そこがすき。
ただの体そのものになって
最後は精神だけで踊り狂って歌うんだよね。
ステージはゴテゴテなんだよ。
びかびかのネオン。これでもかってくらいの大仰な装置。
たくさんのダンサー。なんでもかんでも
ごてごてにあって、ごてごてに埋もれながら吠えるんだ。

いろんなものをくっつけて。
いろんなひとのいろんなものをまだまだくっつけてくれる
なんかとてつもなくおおきな

それくっつけながら吠えるんだ。立ち上がって
筋肉質の細い体だけで。

すべて受け入れるさ。
でも、毒蛇無数だかんね。
なめんなよ。

あー、きなこ旨いな。
粉が口の周りにすげー笑

画・文 Rumiko Hosoki

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