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「シュメールの突先」へ (By la la la 41)

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「わたしにはね、どうもこう、世界の歴史が、塗りかえようとされている気がしてならないんですよね」
ヨリコさんのこの言葉は、アラビアから帰ってきてもなお、わたしの頭の中に強く残った。

こんにちは。先日お話した「シュメールの突先」続きの記事です。
突然本題に入る流れになりましたが、いけるとこまで行ってみます。
文体がいろいろ混ざるかもしれませんが、必要なことを必要な文体で書いていこうと思います。

    ✴︎    ✴︎    ✴︎

ヨリコさんはわたしたちのガイドを任された、しかしガイドというよりかは学者のような人である。実際エジプト人の旦那様は学者であって。ヨリコさんと旦那様はエジプト、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン、と、通訳の仕事やなんかをしながら移り住み、しかし数年前にレバノンにも住めなくなって、ドバイにやってきた。
「世界の歴史が塗り替えられているって、どういうことですか」
ヨリコさんは、すこし黙って言葉を選びながらこう言った。

「みんなも世界四大文明というのは学ぶと思うのだけれど、本当は世界最古と言われている文明はアマゾンの奥地、今でいうとイラクのあたりに存在していた”シュメール文明”なのですよ。これはね、このあたりの国々ではごく当たり前にみんなが知っていることなのです。でもね、わたしはこれまでいろんな国に行ったのだけれど、アメリカが印刷しているーーつまり西側のーー地図には、この文明というのは、跡形もなく、消されてしまっているのです。まるで、そんなものはそこに存在しなかったように」

それから。ヨリコさんは言葉を続けた。
「みんなも覚えているイラク戦争あったでしょう。あの戦争の時、実はアメリカが攻撃したのは、軍事施設でも工場でもなく、由緒ある遺跡や、歴史建造物なのです。アメリカはあの戦争で ”歴史” というものを根こそぎ破壊した。それがあの戦争の、アメリカの目的だったのでしょうね最初から」
身じろぎもせず聞いていたわたしの前で、グラスの中の氷が、からん、と音を立てた。

わたしたちは遠いアジアの島国で暮らし、やっぱりとてもちっぽけなのだと思った。小さな島国は急激に成長をとげ、溢れんばかりの情報が飛び交っているはずだけれど、こうして、こちらから足を運ばなければ、その島国までは届いてこない声がある。そして聞こえないことによって、わたしたちは何も知らず、知っていることだけで「世界ってこんなものなのだろう」と勝手な領域でイメージする。

これは決してアメリカ批判とか、誰がどうとか言うための記ではない。
ただ「真珠湾攻撃というものがあったんだよ」と語られるならば、それは同時に「ヒロシマ」と「ナガサキ」のことも語られなくてはならない。
イラク戦争というのは”大量の化学兵器”というものと大きく紐付いて語られている。だとしたらば、きっと「もしかしたらそれは建前で、実は歴史を塗り替えるための攻撃であった」かもしれない可能性についても語られなくてはならない。

伝聞というのは心もとないなあと思う。
こうやって日本の自宅でこれらを文字に起こすと同時に、それらは何か眉唾モノの記事の匂いを帯びてしまう。けれどあのとき、わたしの目の前にいたヨリコさんは「イラク戦争の当事者」のヨリコさんであった。その人が話すことは、日本で、被爆した人が「あの時こうだったんだ」と教えてくださる話と同じように、リアルで、生々しく、実感と真実しかない話だった。

その日からわたしの頭の中には「誰かが世界を塗りかえようとしている」という言葉が強くこびりつくこととなる。
誰かがって「誰が?」 でも「どうして?」
それから「どうやって?」

そのヒントはまず、世界地図から消滅した「シュメール」にあるのではないかとわたしは考えた。シュメール。シュメールの突先。
「突先」を辞書で調べるとこうある。
突先:突き出た先端。とがった端。突端

あの日ヨリコさんからあの話を聞いた瞬間から、わたしはなぜか、
「シュメールの突先」がじぶんに向かって、突きつけられているのを強く感じ始めた。突先はわたしに向かって、あまり時間がないと告げていた。
「急げ。そして早く思い出すのだ」「じぶんが何者で、何をするために今この日本に生まれたのかを」

グラスの中で氷がカラン、と音を立てたあの瞬間に、わたしの人生は変わってしまった。いやもはや、なぜかわたしがーーわたしのような著名でも輝かしいキャリアがあるわけでもない物書きのわたしがーーこの国に呼ばれた時から「シュメールの突先」はわたしに向かって指令を、出していたのかもしれない。そにかくその旅を境にわたしは、純粋に売れっ子作家になって直木賞を目指そう、というような、そういった目標のために生きることができなくなってしまった。いつも背後に、目の前にその突先を感じる。
あらがうことのできない、シュメールの突先。
その突先はブレることなく常にわたしに照準を合わせていて、
わたしに何かを求めているのだ。でもわからない、
何が求められているのかが。

そんなわけでそれから3年と3ヶ月がたった頃、手探りのまま、わたしはラム子になってラララ世界を始めるのであって、
そして今また「シュメールの突先」を始めることとなるのである。

これはその、きっかけの物語である。

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