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突先9. 姫妃(キヒ) < Ⅰ >

さっき家の下の階でお金の計算などをしていたら、窓の奥の木の葉の隙間から、熟れた柿のようにオレンジの夕日が、ぐっとこっちを見ていた。
ちょっとアラビアを思い出すような、感じ入るものがあったのでラララ用に写真を撮っていたりしたら”それ”はちょっとした角度の問題でみるみるオレンジの光を失っていった。そのときに気づく、これはナギサ。
「ハララ妃!」
携帯を置いて思わずベランダに飛び出したけれどすでに太陽は日没の最中、先ほどのように「見られている」ようなオレンジには再び会えなかった。

(わたしはこのような形で現れ、そしてメッセージする。覚えておくよう)

(かしこまりました)
そう答えて部屋の中に戻った。姫妃(キヒ)との最初の形ある交信である。

    ✴︎   ✴︎   ✴︎

ここに今から記すことはいつか書く物語へ続く執筆メモであるので、真実のような嘘のような、曖昧な輪郭のものである。なのでちょっとした不思議な物語ーーもはやフィクションだと思って読んで欲しい。

「姫」または「女王」または「女神」あるいはそういったようなもの、がとても重要であることは、伊勢神宮の多賀の宮、そして[突先8 太陽]に記した佐奈度神社での特別な体験を通して追いかけた瀬織津姫や持統天皇をめぐる流れから、うすうす気づいていた。それで霊感のないわたしがなんとか辿り着いた答えは、おそらく滋賀に邪馬台国があったのだろうということと、
わたしの実家がある勝部という地名からすぐ近くにある伊勢町から出てきた遺跡、これと伊勢神宮や邪馬台国はきっと関係があるのだろう、というところまで。

そこで「邪馬台国 近江」で検索すると、なんと地元の守山市が、
<もりやま卑弥呼コンテスト>というのを毎年開催している。
え、面白い。40歳の小説家が2019のくくりの年に第9回の卑弥呼のコンテストをガチで受けるの面白い。笑える。
そんなノリで、じゃあ来年それを受けようか、それでもし受かったら、滋賀と東京を行ったり来たり、これもまた”ホツマツタエ”などを追いかけ解読するにはちょうどいいじゃないなどと思って、そこでわたしはこの9月の古代調査を、一つのくくりとして東京に戻ってきたのだった。

ただ、その時から漠然と思っていた。
(いろいろのために必要なステップとして卑弥呼になるにしても、本当のところはわたしは女王じゃないんだけどな)
そう、わたしは女王ではない。女王の代理っちゅーか、書記っちゅーか、
そんなような存在であって、わたし自体は女王ではないんだけどな。

※以下有料です。明日続きを書くのですがそれは全面的に有料になってしまいます。そちらも合わせてご了承の上、お進みください。

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