「保毛尾田保毛男」問題


ミッツ・マングローブ「保毛尾田保毛男を狩る、分別できない人たち」(https://dot.asahi.com/amp/wa/2017101300080.html)

を読んでモヤモヤした気持ちを書き綴ります。
ミッツさんのコラムに対する反論ではないです。そもそもエクスキューズが散りばめられていてはっきり反論できるようなものでもないし。


当時これによって心を傷つけられた当事者も多い「とんねるずのみなさんのおかげでした」のキャラ「保毛尾田保毛男」。
ちなみに当時幼い私がもっとも傷ついたのは綺麗なニューハーフが出演しているテレビ番組を観た時でした。完全に女性の格好をして、「私は女です」と主張しているのに男扱いされ、笑われる。ここまでしてもこんな扱いしかされないんだ、という絶望。
それでも、女性として生きている人たちの情報が欲しくてミスターレディ(ニューハーフ)の出演している番組を食い入るように見ていた。そして、いちいち傷つかないよう少しずつ心の感度を下げていった。
そうやってセンサーをオフにした私の前に登場した保毛尾田保毛男に強く心を傷つけられることはなく、「男が男に恋愛感情をもつことはこういう風に笑われるんだな」と、テレビで見るニューハーフと同様に、自分の生き方を決める上での判断材料だった。
ということで、私は保毛尾田保毛男に対して何とも思わなかったわけだけど、「自分は何とも思わなかった。」って別に言わなくていいことだと思う。特に「そうやって過剰に反応するから煙たがられる」みたいなことは本当に、言わなくていいことだと思う。声をあげている人たちを疎ましく思う気持ちはあなたや私が散々晒されてきたマジョリティ側の傲慢さと、そう違いはないのではないか。されていやだったことをしない、ということも道徳だと思うし。そういえば昔参加したLGBTの自助グループで「これは差別なんだよ。あれも実は差別なんだよ。」と説いていることに「助けを求めてここに来た人たちをさらに生き辛くさせてどうするんだよ、」と思ったりしていたけど、差別に対して敏感でいることもいつのまにかLGBT当事者の私にとっての道徳になっている。もちろん義務ではないけど。

話を戻します。『裏切り者』にならないように気を遣うのは窮屈かもしれないけど、言ってモヤモヤした気持ちをスッキリさせたかったりするのかもしれないけど、それは我慢できませんか?と思う。
それを表明しても、マジョリティの特権に無自覚な、卑怯で傲慢な人たちが嬉々として引用するだけなのだ。「ゲイの方もこう言っておられるのに」とかって、この敬語が気持ち悪い。パク・チソン選手が日本に対して敬意をもったコメントをしたニュース記事に、「他の韓国人は見習うべき」などと本当に余計な言葉を投げるような人たち。

デリカシーのない言葉やアウティングなどを悠然とかわせる優雅さや、笑い飛ばせる強さは尊いものだと私も思う。
でも、そうあらねばならないわけでは決してないし、そうあれと他人から言われるのは絶対に違う。

そういったものと同じではないのかもしれないけど、ミッツさんの今回のコラムを「まさに正論!」「思ってたことを言ってくれた!」といったコメントとともに共有している人たちに不安な気持ちになる。ずいぶんよくなった今の社会だけど、居心地の悪さを感じてしまう。
ミッツさんのコラムを読んで「まさに正論!」「全部言ってくれた!」と保毛尾田保毛男問題も結論付けてしまうような人たちが「無数のグラデーションの中で、その都度その都度『判断』をする、それを続けていく、そうやって生きていく」とは思えなくて。というかミッツさんの言う『分別』、私はまだわからないし、日本人みんながこの『分別」があるようには思えなくて。放り投げられた偉大な教えの前に私は為す術もなくて。これ都合のいい部分だけさらっていかれやすい文章なんじゃないかって思ってしまって、読んでモヤモヤしました。

ミッツさんのコラムの後半にある「『差別的なものに蓋をする』だけでは、何の意味もないことにそろそろ気付かないと。」という部分。私はその主張にそれほど重要な意味があるとは思えないし、「『差別的なものに蓋をする』だけでは何の意味もない」とも思わない。
『差別的なものに蓋をする』建前としてのポリティカル・コレクトネスが崩壊した、『蓋が外れた』トランプ大統領誕生以後のアメリカで、実際に暴力が起きている。(ポリティカル・コレクトネスによる抑圧によって爆発した、という意見もあるけど、犯罪を正当化するような論理を持ち出す前に(彼らと対等に向き合ってこなかったことなど)他の原因を考えてほしい。))
納得・得心させることがまだできていなくても、差別的なものに蓋をして目の前の暴力から守りながら多様性を理解していくしかないのだと私は思います。


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