今の家の洗面所は広い。内見に来た時に、不動産屋さんがこの家の規模でこの洗面所の広さは凄いですねと言っていたんだから間違いない。大人ふたりで、ごそごそ支度をしてもぶつからないくらい。そんでもって、鏡も大きい。自分の頭はるか上まで鏡がある感じ。なんとなくホテルっぽい。

だから化粧をするのも、髪の毛をとかすのも巻くのも楽しくなった。鏡が大きいっていい。そんなこんなで、鏡を見ていると触角が育ってきてことに気づいた。触角と言っても、横の髪の毛のこと。触角が生えるなら、可愛い丸いのがいいななんて。

高校生の頃から、触角のある髪型に憧れていた。ポニーテールやサイドポニー、ツインテール、お団子、何をしても触角だけ綺麗に出せれば決まった髪形に見える。無理やり引っ張り出した髪の毛を触角扱いにしてたっけ。

高校に入って初めてできた友達は、いつも綺麗な触角がある子だった。それを見ていつも憧れていたけれど、髪型でできる出来ないが決まっているのかと思っていた。その子はまめに櫛でとかしていたし、そこからなのかと。

2年前から通い続けている美容師さんが、そんな私に触角を作ってくれた。前髪を自分で切る時は、この端っこだけ切らないで伸ばしていこうねと。歓喜。いよいよ憧れ続けた触角が手に入る。慣れない前髪切りの時も、しっかり触角を守り続けた。美容院に行くたびに、つい切っちゃう人もいるんだよね偉いねと褒められることも励みになった。

そして、触角ですよと言えるくらいの長さになった。10年越しに手に入れた触角、これからもよろしく。