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痛いもんは、痛い!

指を深く切ってしまった。
爪の手前まで深く、
左手の薬指を深く、
切ってしまった。

切れない包丁が悪いのか、
切り方が悪かったのか、
なんて、考えても血は止まらない。

仕事を放り出し、
日曜日の病院へ駆け込んだ。
タオルに染みる赤い血が
熱を出している患者さん達の
目を覚ます。

看護師さんの問診で
赤く染まったタオルは捨てられ、
ガーゼを巻いてくれた。
血は少し落ちついたが、思い出したかのように
痛みと共にまた、じわりとガーゼを赤くした。

「指は上にして下さいね」

素直に、大袈裟に、
私は胸より高く、指を掲げて待つ。
妙な姿だろう…

ジンジンする指を感じながら
携帯を片手で握り締め、
動画を見たり、ゲームをしてみたり、
本を読んで見たり…。
待っても、待っても、
呼ばれない。
トイレに行きたい…けど呼ばれるかも。
いや、大丈夫だろう、行ってしまえと
トイレに行く、定位置に帰って座り、
呼ばれたくて待っているのに、
呼ばれなかったことに安堵する。
そんな訳の分からない気持ちにもなりながら、
一連の、動画、ゲーム、本、トイレを繰り返し、
また血が滲むガーゼを新しくしてもらい、
病院に来て2時間…
やっとのこと診察室へ。

軽快な雰囲気のお医者さんだ。
指を見てもらう。

「私は見たくないので…」
と伝えて、身体をねじって目をそらす。
先生は、指を前から、横から、裏から見て
「あぁーホコリが入ってないかレントゲンします」
と言った。

え?レントゲン?
こりゃ高くつくな…。
まだ、待たされるのか…。
心の声が漏れそうなのを押し殺し、
レントゲンへ。
直ぐに終わり、また定位置に戻る。
縫って、終わりだと思ってたな…

診察室へ再び。
「血を見て倒れないようにベッドに横になってくださいね」
私は指だけを先生に差し上げ、
また身体を捻って視線を壁に向けた。

消毒をされる。
悶絶。
もう、心の声もダダ漏れ。
痛い…
おー!!!
いま、何をした?
オーマイ!!ガ!

「テープだけで保護しようかと
思ったんだけど…血が止まらないので
縫いますねー麻酔しまーす」

「麻酔してくれるの?」

「野蛮なことはしませんよ、はい、チクっとしまーす、もういっかい…」

合計、麻酔5箇所。
あまり、効かない私の指。
都度、うるさい悶絶。

先生もいちいち私の反応に答えるから
診察室がうるさい状況に…。

私 「OH…uu…」
D'R「痛みを英語で表現しちゃう方ね」
私 「は、はいぃ〜イタイデス」

D'R 「指、ぴしゃりとして!」
私 「ピシャリ!こう?はい、はい〜」

D'R「痛くない!楽しいこと考えてみて」
私 「それピーターパンのやつ」
D'R「おもしろいねぇ〜」
私 「いや、おもしろくは、、ない!」

結果、3針を縫い終わる。

「手を洗いましょう」
もう、私はクタクタ…。
手を差し上げます。
先生が優しく手を洗ってくれる…
後ろの診察室でのやり取りが聞こえる。

「出産した時の痛みが10なら、今はどのくらいの痛みですか?」

え〜っと今の痛み?
なんて、私も一緒に考えてしまったが、
よくよく考えたら、
ふざけんなよ!となった。
出産の痛みと、
今の痛みは比べるもんじゃないだろ。
過去の痛みと比べて、今の痛みに耐えることはあるかもしれないが、
出産より痛いもんは無いだろ感覚で聞かれて、
で、答えが「えー今の痛みは…5くらいです」
「じゃあ耐えられるよね?」
…なんて流れを期待される。
そんな酷な…と私は残念な気持ちになる。

今の痛みは過去に代えられるもんじゃない。

でしょ?

痛みはいつだって、痛い。
だよね?

補足:
痛みの段階を聞いたのは
お医者さんの処置に関係するから
聞いたのだと分かっていても、
その日は、痛い!と全力で発したい
私としては残念だった。
なので、吐かさせてもらいました。


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