見出し画像

「お願い」ではなく「一緒にやる」ツーオペ育児へ

「ワンオペ育児」という言葉がすっかり定着して、私も夫が4ヶ月間出張続きで忙しかったので、当たり前のようにその言葉を使っていたけれど、ふと、そうではなかったかもしれない、と思う。

娘が0歳から1歳になる頃、夫は確かに家にはいなかった。でも、私が完全にひとりで育児をしていたかというとそうではない。

私はほぼ毎日LINEで娘の写真を添えて成長ぶりを伝え、夫はその度に反応した。夫と同じ現場で働く同僚から、夫が娘の動画を何度も見ているという写真付きの報告もあった。娘の1歳の誕生日は一緒にお祝いできなかったけれど、プレゼントが届いたし、娘の初めての運動会には参加できなかったけれど、会場に飾られる(レベルの高い)娘の似顔絵を描いて送ってくれた。

夫は育児に「不参加」だったわけではなく、瀧波和賀さんのいう「リモート育児」をしていたのだ。だから私は心が折れずに、なんとか乗り切れたのかもしれない。
(瀧波さんのnoteおよびcakes連載は、面白いかつ新たな視点に気づかせてくれるので、育児をする人もそうでない人にも読んでほしい)

とはいえ、夫は家にはいなかったわけで、離れた場所から「リモート育児」をしていたと言っても、限りなく「ワンオペ育児」に近い状態ではあった。今年は仕事にもアクセルを踏みたいと思っている私にとって、そこを脱することはマストなので、年末年始付近に、夫にふいに訪れた強制休暇=育休期間、話し合いを重ねた。お互いに自分の仕事と家族との時間を手放さないために何ができるのか、と。

その甲斐あってか、年が明けて、夫は変わった気がする。今のところ出張がなく昨年より仕事が落ち着いているだけなのかもしれない。毎朝保育園の送りは夫が担当するようになり、毎晩娘と私が散らかしたまま眠ってしまうリビングを掃除してくれている(朝目覚めると部屋がきれいになっていて嬉しい)。出張の予定、つまり保育園の送りができない日は事前に共有してくれるし、呼び出しがあった際の対応も一緒に考えてくれる。とても些細なことだけれど、私が家のこと、たとえば「○○買ったよ」とLINEで報告した時、それまでは「はいよ」だった返事が「最高じゃん」になった。そんな小さな変化が私は嬉しい。育休期間に娘とべったり一緒に過ごしたからなのか、私の思いが伝わったのか、物理的かつ心理的な距離が縮まって、より「ひとりじゃない」と思えるように。

夫じゃなくても、育児にはこの「ひとりじゃない」という感覚を得ることが大事だと思う。

先日、家族で友人宅にお邪魔した時、娘が眠そうにしていたので隣にいた夫に「(娘)が眠たいって」と言って、夫が立ち上がり抱っこ紐に娘を入れて寝かせようとしたことに、友人が驚いていた。

「お願い、とかじゃないんだね!」

うん、だって、娘は私たちふたりの子どもだから、私からの「お願い」じゃない。夫の方が相対的に娘と関わる時間が少ないので、一緒にいる時、外出先での抱っこ紐での移動や寝かしつけは夫が担当することに相場が決まっている。

家事も育児も私から夫に「お願い」するものではなく、ふたりで「一緒にやる」ものだ。うちは、共働きだし、ふたりで親だし。

でも、私も素直にそう思えるまで、葛藤もあったし時間もかかった。今でもまだ無意識うちに、「お願い」していることもあるかもしれない。

私も以前は、自分が育ってきた家庭や周りの常識から、なんとなく家事育児は女性がやるものだという意識が潜在的にあった。昔、結婚を考えていた相手と同棲をしていて、共働きで家賃や生活費も折半なのに、家事はひとりで全部背追い込んで、お弁当も含めた3食作り、掃除洗濯もして、その結果パンクして(その他の理由も相まって)、逃げ出したことがある(笑)。

その経験から、家事育児は「絶対に一人で抱え込まないぞ」という強い意志が生まれ、それができる人を結婚相手として選んだのもあるかもしれないけれど、常に「意識」し続けてきた。

夫も初めから家事育児をしたわけではなく、たとえば料理は、夫がバイトしていたイタリアンを訪れてパスタを作っていたことを知り、試しに家でも作ってもらったらものすごく美味しかったので、褒めまくったら、よく作ってくれるようになった。子どもが生まれてからも、その瞬間から病室で夫に「オムツ替えて」と言っていたし、土日に夫がひとりジムに出かけようとした時には「なんで、私はひとりで行動できないのに、あなたは行けるの?」と突っ込んだ。最近は私がひとりで出かけて夫と娘がふたりで過ごす時間もつくって、「(娘)はお父さんのことが好きなんだねえ」と連呼している。

そんなふうに、おかしいと思うことにはツッコミを入れ、「褒める!」「任せる!」を繰り返していたら、夫は自主性を持って当たり前に、家事育児をするようになり、時期によっては、私よりやっているような気もする。

最近、Amazonから夫宛の荷物がやたら届くので、何かと思えば、水切りかごだったり、突っ張り棒だったりする。毎朝皿洗いをし、毎晩部屋を片ずけている夫は、より快適に早くできるように、新しい道具を導入して、暮らしを改善している。いいぞ、その調子、どんどんやってくれ!

夫はそもそも「男だから、女だから」という概念が薄く、じっとしていられず任せられるのが好きな(やることがあると落ち着く)タイプで、もともとのポテンシャルが高いといういうこともある。夫の力を信じてしかいないので、どんどん開花させてほしい。


夫の4ヶ月の出張期間、綱渡り状態ではあったけれど、正直夫がいなくても、自分と娘のペースで、なんとかやってはいけたので、仕方ないとあきらめかけた(開き直っていた)こともあった。でも、そんな時、母の教えが頭をよぎった。

「夫婦にも親子にも以心伝心はないから、ちゃんと言葉で伝えて、あきらめないこと。特に育児は、あきらめると、お父さんが家に居場所をなくしちゃうよ」

そうだそうだ、「いかにワンオペ育児を乗り切るか」ではなく、「どうやってツーオペ育児(さらにみんなで育てる)にするか」という視点で考えなくちゃ。夫は朝から夜中まで、土日も働く「仕事大好き人間」だけれど、家庭を顧みないわけではない。今回、年末年始に、夫に改めてちゃんと言葉で伝えたことで、私の意識も、夫の行動も少しずつ変わってきているように思う。小さな違和感や不満を飲み込んで「仕方ない」と流して、あきらめなくてよかった。

もちろん家族によって、それぞれのポテンシャルも意識も価値観も違うので、あくまで私たちの場合、我が家のケースだけれど。

これからもお互いに大事にしたいことやできることとできないことを言葉と行動を重ねてすり合わせながら、あきらめずに、心地よい家族のかたちを一緒に築いていきたい。

「お願い」ではなく、生活をともににする人として、親として、同じ目線で、ひとりではなくふたりで「一緒にやる」。私たちは、そんな日々を重ねていきたいと思う。


読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。