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猫が亡くなりました。

猫が亡くなった。10歳だった。

ソラは昔私が拾った野良猫だ。名前は本当は「ソラーレ」という。外国の言葉で「ひだまり」という意味らしい。母がソラの色がひだまりみたいだ!といって名付けた。

わたしは高校1年のときにいろいろあり、まいっていた。その時は台風が長く上陸していて、家の近くから2日ほど「ミャー」と声が響いていて心配していた。3日目になっても泣いているので「とりあえず外を見に行こう」と自転車置き場を見に行ったら、母猫と子猫6匹ほどが雨宿りをしていた。ソラはそこから1匹少し遠くに居て明らかに弱っている感じだった。私は家からバスタオルを持ってきて、ソラを包んで拾い上げ、母猫に「すいません、預からせていただきます。」と言った。その時ソラは風邪を引いていて、あのままの状態だったら危なかった、と次の日連れてった動物病院の獣医さんが言っていた。

あと、「おや、この子は男の子ですね。あと長毛ですね。」とも言われた。ソラはそのまま、うちの家族の1員になった。私が学校で辛いことがあって泣いていた時そばに来てくれたり、一緒にいるととにかく気持ちが安らいだ。やんちゃな男の子だった。

 7月の頭くらいから母が「ソラちゃんの具合が悪く、あんなに好きだったちゅーるも食べない。普通のご飯も食べないし、水もあんまり飲まないから心配だ。」と言っていて1回実家に帰宅し、その時はまだ元気のようだった。6キロあった体重は4キロにまで落ち、背中を触ると背骨がわかりとても痩せてしまったのがわかった。あんなに好きだったマグロも食べない。

毎年梅雨〜夏になると具合が悪くなり、あまり食欲もなかったので今回もそれかな?と。にしては長いし、体重が落ちるスピードも食欲のなさも異常すぎる。母は心配して近くの動物病院に何度もソラを連れて行ったが血液検査や尿などの数値は正常。私達は「夏バテなんじゃないか」と話していた。それから1度また家に帰った。中旬になり、母が「やっぱりソラの様子がおかしい。違う病院に連れて行ったらガンかもしれないと言われた。」と連絡が来て急いで実家へ戻った。30日に手術をしてもらうことになった。それまで私は実家に帰ることになり、しばらく数日間実家でソラとゴロゴロしていた。私は実家に1日くらいしか居れないのに今回数日居れたのはソラのおかげだと思う。その時は「手術すればよくなるだろう」という気持ちの甘えがあった。

手術の日になり、母が朝ソラを病院に連れて行った。私は「手術もするし、よくなるだろう」と1回その日帰宅してしまった。それを今でも後悔している。私は完全に油断していた。夜に兄から電話があり「手術は上手くいったけど、ソラが家に帰るのは難しいかもしれない。明日朝イチに面会に行ってあげて」という事だった。

次の日。7月31日。私は朝イチに母と病院へ行った。すぐさま獣医さんが来てくれ、「今朝、亡くなりました。」と私たちに言った。

手術をしたあとのソラは安定していて、獣医さんも安心していたようだった。でもソラの体はもうガンに蝕まられ、全身にガンが転移していたらしい。手術が成功しても「もって2週間」と言われていた。

しかし、朝方容態が急変し、ソラは亡くなってしまった。私たちは「ソラだったもの」に面会することになった。

私たちが最初に見た時、ソラは目を見開き 嘔吐したあともあり、歯を食いしばった姿のままだった。手術の跡から血と体液がにじみ出て、目があてられなかった。一生懸命私は見開いたソラの目を閉じようとしたけど、だめだった。母は声にならない言葉を出して泣き始め、私は「ごめんね」と何度も誤った。

後から兄が到着した。その間、ずっと私はソラをなでていた。ピンク色だった肉球や耳は真っ白になっていた。体はほんのり温かくて病院の人が気を使って温めていてくれたらしい。兄はショックを受けていたがしっかりと「これからどうするか」という話を獣医さんとしていた。ペットがなくなった場合、1度家に一緒に帰るか、そのまま火葬場に行くか、という選択があり夏場だったため悲しいがそのまま火葬場に行くことにした。

6キロあったソラの体重は最終的に3キロになっていた。長毛だったからわからなかったが体はガリガリに痩せていた。

火葬して、ソラの骨を母と兄と私で拾った。私は少しだけカプセルに骨を入れた。小さなツボに骨を入れ、それを丁寧に式場の人が包んでくれた。母ははそれを抱き上げ「こんなに小さくなっちゃって……あんなに大きかったのに。」とポツリと言った。いつもはしっかりとしている母の背中が少女のように見えた。

その日は熱くて朝からずっと泣いていたので私は帰り道に熱中症気味になってしまい、タクシーで帰宅した。

しばらくショックで私はなにをしても急に涙があふれて止まらなくなったりすることが増えた。今もたまにそうなってしまう。


生きたくても生きれない人や、動物がいるのにどうして私は自分の命を捨てようをしたんだろう。心の底から恥ずかしくなったし、申し訳なくなった。ソラは、夏の終わりにうちに来て、夏のはじまりに去っていった。

夏は、私からいろんなものを奪いすぎる。去年は友人を、今年は猫を。来年は何を?怖い。

私が実家に帰って寝てるときにスッと布団に入ってきて、うずくまるあの小さくて温かい命にはもうふれられないのだと思った。

ごめんね、ありがとう。天国でたくさん美味しいものを食べて遊んで、おひるねしてね。ひだまりの中で私たちを見守っていてね。


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