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#6 ボカ論 ボイスいろいろ

ボカロ初心さんが脱落しないようにという思いで書いています。実際普通の人間でも2年間一生懸命にボカロをやったらこんな感じになるっていう参考にでもなればです。あと同時になんだかよくわからんことを考える気質があるので、そういう時は 題して ボーカロイド概論 略してボカ論 として記します。

とあるボカロPのボイス変遷

今回、自身の過去曲をsynthesizerVでリメイクしたのですが、この2年でVocaloid(V4x)・neutrino・cevio・synthesizerVと使って来て、偶然か必然かそれぞれのボイスでそれぞれの時期で作成していました。振り返りつつ、所感とそこから感じ取られる今後についてです。


①vocaloidv4x 初音ミク

②neutrino めろう

③cevio 可不

④synthesizerV 重音テト


①②は2年前で、ボカロを始めて2~3か月、③1年後、④はさらに1年後の最近の作成です。初期はほぼ付属プラグインや無料・お手頃価格プラグインのみ、またMIXに関しては何も知らない時期なので、①④では全体の音の違いがありすぎてボイスを評価しにくいと思います。ただMIDI自体は数か所の訂正以外ほとんどいじっていませんので、逆に初めて2~3か月の初心者が2年でMIXがどう変わっていったかの資料にもなるかと思います。当時はこれでOKテイクにしていたんだなぁと今となっては恥ずかしい限りではあります。


さて本題 ボイスに関して、


①初音ミク


https://www.nicovideo.jp/watch/sm39543955
こちらはたいして調整していない記憶ですが、一般の方でも、好き嫌いはあれど、こういう機械的なのも、こういう音楽だとして受け入れられると思います。中級ボカロPだったりしますと、個性を込める意味でも技術面を誇示するためにもそれぞれの方法論でもう少し人間らしくなるように「調声」しますね。一部ボカロマニアの方には有名ボカロPの各調整を誰の調整か聞き分けられるような方もいらっしゃいます。この曲も今の私が作り上げるのであれば、もう少し(いや、がっつり3~4時間かけて)調整はしますが、あくまで機械的なのは個性としても、技術的な限界としても残ってしまうと思います。

②めろう


https://www.youtube.com/watch?v=IzkCK_nLQ1A
使ったことのない人も多いと思いますが、AIでしかもフリーウェアの歌声合成。私が初めて使ったときには、あまりの出来の良さに驚きました。特に好きなのは、低音歌いだし時に「あ」が「あ“」になる、いわゆるエッジボイスがとてもいい。とてもいい出来なんですが、ボカロは現行キャラクタビジネスにもなっていて、ビジネスがなければキャラクターもあまり育たない。そのせいかどうも人気が出ていません。ボイスとしての評判は良くても、リスナーからもボカロPの間にも今一つ浸透しきれてない印象です。

③可不


無調整いわゆるベタ打ちでもそれなりに歌います。しかもいい感じに声に個性があって、現状初音ミクサウンドの唯一の対抗馬は可不だと思います。サウンドのキャラクターがいいだけでなく、実在するの花譜という存在もほかの神椿(星界、裏命)なども、すべてが可不という世界観構築を後押ししていて、今時の楽曲、もしくはセンスのいい人が使うイメージすらあります。可不に歌わせれば、もうそれだけでいい感じの世界が構築されると言っても過言ではないでしょう。(フォニイ、マーシャルマキシマイザーといった、ヒットも追い風になりました。)ただ可不は声質変更の幅が狭いため使う側からすると、調教の物足りなさは感じます。音質もあまり良くないので、実は使いにくい。(これが意図的なのではないかと思う理由があるんですが、それはもう少し後半。)

④重音テト

https://youtu.be/fsUOVcyOhAM
今回、重音テトを使ってみてまず最初の感想は無調整でも素晴らしく完成されているということ。ぱっと聞いたら普通の人間が歌っていると感じるでしょう。また、調整のやりがいもあって、特にビブラートは綺麗に自分の好みのものに仕上げることができ、個人的にはミク以上に調整のやりがいがあると思っています。synVはこれまでtokyo6の3人娘のようにちょっとアニメ声優さん感が強くて私はちょっと敬遠していましたがテトはいい感じにロックなサウンドにもよく合うと思います。
しいて上げる弱点としては、うますぎる。初期ミクでも高速で絶対音感で歌うと揶揄されていましたが、synVはそこにリアリティーが加わりましたが、リアル歌唱で上手いなら文句はないはずなのですが、あまりにも完璧で違和感すら感じます。
私も今回、あいうえお を はひふへほ にしたり、グロウルのような効果を入れてみたり、音程や子音のタイミングをあえていくつかずらして人間味をいれてみたのですが、それもちゃんといい感じにして表現してくれる。とにかく、やればやるほど うまくなるんだけど どこかリアルから遠のく感じを覚えます。

今後の歌声ボイスの世界線

某所に面白いやり取りを見かけました。synVに往年の名ボーカリストが出たら欲しいという内容です、確かに今だとAdo(人気的にも個性的にも)なんかのsynVがでたら大ヒットすると思います。作る側からすれば、あのアーティストが歌ってくれるというのはめちゃ楽しいと思います。

ただですよ、それは同時に、そのアーティストが実際は本当は歌わないのにそのアーティストの楽曲を地下で再現して、作って、それで終わりってことにならないでしょうか?聞く側はそのボーカルの楽曲としてしか聞かない状況に。つまりはそこにボカロPとしての個は存在しない。

*4/12追記 予想はしていましたが synVの可不が中の人花譜さんの余りに似ているという畏怖から延期が正式に発表されました。私も発売を楽しみにはしては居ましたが、当然の判断だと思います。

僕ら中二病系ボカロPはそれでは満足しないんじゃないかと思います。

ピノキオピーさんの「匿名M」、この中で「命の無い私にどんなイメージを着せる?」と初音ミクが歌いましたが、初音ミクは超アイドル的存在でありながら機械音声的という非リアリティーの中に「匿名性」を持ち、ボカロPに「記名性」を与えてくれる。これは初音ミクにおいて有名ボカロPがいまだに使い続ける理由だと思います。

現状重音テトもネットから生まれたという背景が、(髪型も含め面白い個性は持っていますが)イメージを聞き手が比較的自由に着せられる、着せていいという強みを持っています。昨今のめろうが再評価されたり、ずっとUTAUを使う猛者がいたり、私自身も今は中国のブランド作成のstardust infinityに惚れ込んで作曲を始めていますが、これはボイスに匿名性を求めているからでしょう。

ただ匿名性しかないのもそれはそれで面白味はかけて、ボイスの中にも記名性はあってそれがボカロPの記名性といいバランスで融合する面白さがあるぐらいが欲しい。(…synVでもあのイラストのないボイス群maiとかayameとか、すごくいいのに…あんまり使う人いないですよね。)


まとめ

なんか、後半論文っぽくなってしまいましたが、ま、最初は何も考えず、楽しんでいいと思います。その楽しさの一つとしての調整具合、人の声をリアルに再現する度合いについては、ミクが40点始まりで~70点まで調整できる(調整次第でまだUPします)。可不が70点始まりだが~80点までしか調整できない。重音テトは、80点で出来上がって、95点にもなりうる可能性。個人的には初音ミクを操作する中で しゃくり、ビブラートなどのボーカルの音楽的特性を、学び、それを手動かつ試行錯誤で技術を磨きsynVでAIだけに頼らず自分の好きな歌声を作るというのが理想形なのかなと思います。
ただ、その調整は実はsynVのほうが大変だったりするかもしれません。

長文お読みいただきありがとうございます。


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