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パソコンします

「パソコンにしましょうか」

という言葉が一時期社内で流行ったことがある。

今まで数十年間ずっと請求書や見積もり書など、
すべて記入してファックスで送ってくれていた地方の取引会社の人たちに、デジタル化を促す言葉である。

普段あまりにもネットに「ネットり」浸かっているせいで見逃しがちだが
(うまいこと言いました)

世の中にはまだまだネットを使わない人たちがいる。

うちの父親も最近やっとネットを閲覧(?)できるようになったらしいが、
まだまだ使い慣れていなかったりする。

そんな中、やはり企業としては社会的傾向だったり(資源的な話)
情報共有の早さや正確性の面からも
ネットを使ったやりとりを推進せざるを得ないのである。

長年やってきた方法を変えるのは、勇気がいる。

「こっちはね、親の代からのやり方があるんだよ。」

そう言われることもあった。確かにそうだ。待って言われてないかも

正直個人的にはどっちでもいいのだが(すいませんなんだが、どんな時も「洋画見てえな」とかしか考えてないから)、

やはりスピード感の違いは不公平を生んでしまうようで、
こちらとしてはお願いするしかないのである。

そんな中、ずっとデジタル化をお願いしてきた取引会社から一本の電話が。

相手のおばちゃんが一言。

 

「パソコンします―――――――――――」

 

「パソコン」が動詞になってるのは置いといて、
こちらの希望に寄り添ってくれたのである。

「ありがとうございます、精一杯サポートしますので」

そう返した。

誠意には誠意で、歯には歯を、オリコンには三木道山を―――――――

マウス握る手にも力が入った、ほぼ粉々である。

そしてパソコンが向こうに届いた日に、立ち上げ方や初期設定、
ワードの使い方など丁寧にレクチャーした。

「こんなに丁寧に教えてくれるなんて、パソコンした甲斐があるわ」

「なんて?」

「若者はすごいね」

「なんて?」

「この年になって新しいことやるなんて、わくわくするね」

嬉しい言葉が飛び交い、良い仕事をしたと先祖代々思った。



後日、パソコンで打った文章が印刷された紙がファックスで送られてきて、その数秒後「届いてますか?」と電話がきた。

なぜか手間が倍以上に増えたが、
私は爽やかに上司にこう言った。

「しばらくこの方法でいきます」

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