スト6雑記:「とりあえずリュウ」はやめておけ

早速だが、ストリートファイター初心者、未体験者の君に問おう。

「君は何処まで知っている?」

恐らく殆どの場合の答えはこうだろう。
「波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚」だとか、「なんか頭がモップの男がしゃがんで待ってる」だとか、「ヨガは火を噴き四肢を伸ばす技」だとか。「丸太より太い脚の女がいる」かもしれない。

中でも特にリュウ。波動拳で飛ばせて昇龍拳で落とすイメージは誰もが知るところだろう。ターボ世代なら竜巻旋風脚も強いイメージを持っているかもしれない。
ましてや永遠の主人公である。誰もが知るスタンダード、きっと難しい事も言ってこないだろう。そう思い、リュウから始めようとする初心者も少なくない筈だ。

はっきり言おう。リュウは君が思っているような素直な男ではない

喩え話をしよう。
自分がどうやって自転車に乗れるようになったか、それを思い出してみてほしい。
きっと、君が初めて漕いだ自転車には補助輪があった筈だ。今となってはそれは必要ないと感じていても、補助輪があって初めて「落ち着いてペダルを踏む事」や「ハンドルを切って曲がる事」、「身体に掛かる加速度」を覚える事が出来たのではなかろうか?

そう、新しい事を身体に覚えさせる為にはある程度の補助が必要だ。
マニュアル片手に頑張る新人バイトも、画面の右側に操作tipsを表示しながらMMORPGやなんやを遊ぶ初心者も、まず時速20km程度から始める自動車学校も、最初にクリエイティブモードで操作を知る初心者クラフターも、全てその摂理に基づいた存在である。
では格闘ゲームにおける、ストリートファイター6における「補助輪」とは何だろうか?

それは恐らく、「アシスト必殺技」であり「アシストコンボ」であり……そして上級者も使う仕様である、「ターゲットコンボ」にもその役割があるだろう。
これら三輪の補助輪が組み合わさる事で初心者のプレイにおいて不必要な障害が一時的に取り除かれ、「格闘ゲームの運転」に身体を慣らしつつ「本質的な楽しみ」を知るに至る。
では、補助輪の折れた自転車で始めたら君はどうなってしまうのだろうか?想像に難くないだろう。

永遠の主人公、我らが孤高の求道者リュウは、実を言うとそんな奴だ。
アシスト必殺技はどれも立ち回りのパーツかコンボの締め専用で、それ故に極めて早期の段階でコマンド入力の習得を要求される。ルークにおけるODフラッシュナックルのような技が一つでもあれば話は違った筈だ。その上、竜巻旋風脚の暴発時は死に等しいリスクまで背負うことになる。
アシストコンボははっきり言って破滅的な性能で、特にアシストコンボ3は悪意を持ってダメージ効率の悪いコンボを作ったとしか思えない性能をしている。エドなどと比較してしまうと2割以上火力が劣り、それでいて消費もこちらの方が多い。
まあ、この辺の話はやり尽くされているだろう。

個人的に最も重要だと思うのが、ターゲットコンボだ。
初心者が「そろそろ手動でコンボをしてみたい!」と思った時、ターゲットコンボから必殺技に繋げるコンボは確認しやすく非常に有用な助けになる。
例えばモダンルークの弱3回のターゲットコンボなんかは最終段を必殺技でキャンセルできる上、初段のリーチもそれなりに優秀で当てやすく、初心者が気楽にコンボに挑戦する機会を簡単に作ってくれる素晴らしい技だ。

ではそれに対してリュウのターゲットコンボはどういう性能をしているのだろうか?
一つは中攻撃、クラシックにおける立ち中Pに相当する攻撃からのターゲットコンボだ。このターゲットコンボの初段は非常にリーチが短く、凄まじく相手に当てづらい。立ち回りで狙いに行くのは本当に不可能と言って差し支えないだろう。尚、必殺技キャンセルは不可能である。使いこなせば悪くない技とはいえ、あくまで上級者向けの話になる。
もう一つは強攻撃、クラシックにおける立ち強Pに相当する攻撃からのターゲットコンボだ。このターゲットコンボはそこそこ当てやすいが、やはり必殺技キャンセルが不可能である。

そう、このリュウというキャラは「コンボに挑戦したいなぁ」と思った初心者をいきなり千尋の谷より突き落とす。
そもそもこのキャラクターが実力帯を問わず抱える問題として「ラッシュキャンセルを組み込まないとマシなコンボが本当に全然ない」という致命的な問題もあり、このキャラクターでコンボに挑戦しようと思ったらその瞬間にガチ勢同様の実戦コンボを練習するほかない仕様になっている。
その上有用なコンボパーツは基本的にコマンドでしか出せない技であり、必殺技ボタンで操作を簡略化した意義もコンボ面においては殆ど無くなってしまっている。

なぜ初心者が最も集中するであろうリュウというキャラクターをこんな仕様にしてしまったのか、私にはまるでCAPCOMの考えが理解できない。
ダメ押しのようにモダンでは中間距離で安心して押せる技自体も存在しない。これも初心者向け要素として非常に重要な部分だ。
初心者帯の最初の段階では純粋なアシストコンボの性能差に悩まされ、上達してきたと思ったら唐突に難題に挑まさせられる。
こんなキャラクターが初心者向けな筈もなく、ましてや「とりあえず」「見たことあるから」で選んで良いキャラクターな訳がない。
初心者のうちは大人しくルークやエドを選び、しっかりした補助輪に身を委ね、安心してペダルの漕ぎ方やカーブの曲がり方を学んでほしい。そう強く願うのであった。

とはいえ、コマンド入力の概念に慣れている旧作プレイヤーが始める場合に限れば、リュウから入るというのも中々悪くないだろう。
補助輪こそ全て壊れてしまっているが、しかしリュウというキャラクターは非常に素直に走る自転車でもあるのだ。
実戦向けコンボ同士で比較すればコンボ難度も低く、中足の破滅的な判定の弱さを除けば癖のある技も少ない。コマンド慣れした格闘ゲーマーが6を始めるという場合に限れば、まあ、「とりあえずリュウ」も中々良いのかもしれない。

みんな使いたいからね、リュウ。格好いいし、夢がある。

追記:リュウへの愛があるならそれが一番だよ。好きなキャラを使うのが、結局一番楽しくずっとやってられるからね。

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