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イスラエルへ行く。ただの旅行で【4】

イスラエルへバカンスしに行った話。前回までの話はこちら→【1】【2】【3】

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エルサレム。イスラエルと聞くと、首都のテルアビブよりこちらを思い浮かべるのではないだろうか。英語ではJuerusalemと書き、発音はジューレーサレムみたいな感じで、全く日本語の音とは違い、私はいつまでたってもこの綴りを覚えられない。

エルサレムはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教、三つの宗教の聖地。普段宗教に関心の薄い私でも、滞在中はその独特な空気に包まれているのを感じ取った。静かで、厳かで、圧倒的な何かを感じる空気を。

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実は私たちが到着する3日前、アラブ人がイスラエル警察を襲撃する事件が起こって死者が出た。

「安かったから」そんな理由でアラブ人側の地区に宿を取った私たちは、各宗教の建物が集結する旧市街地へ行く途中、襲撃の影響で実施されているであろう検問に遭遇した。私たちが明らかに外国人だったからか、私たちに対してはセキュリティーチェックは実施されず、そのまま通り抜けることができた。

旧市街地に入ると、その日が日曜だったこともあり、街は静かだった。その静けさと、漂う独特な厳かな雰囲気と、マシンガンを抱えたイスラエル兵の治安統治の緊張感で、心臓がキュッとして体がこわばる。

笑うことが許される場所なのかもわからず、どんな表情をしていいのかわからない。自然と相方との会話も小声になる。ここに入るのは許されているのに、来てはいけない場所に来てしまったような、息の詰まる空気感。

その静けさは、月曜が始まって市場や露天が開くことで少し緩和されたけど、緊張感は変わらず、相変わらずうまく笑えなかった。写真も素早くサッとだけ撮る。

そんな中、唯一心が和やかになったというか、この街の違う側面を垣間見たのと感じたのがこのTシャツ。

PikaJew。一瞬目を疑った。この冗談は許されるのだろうか。でもこんな堂々と売っているんだからきっと大丈夫に違いない。

Jewとはユダヤ人のことで、このピカチューが纏っているのはユダヤ教の中でも超正統派と呼ばれる人々の衣装だ。正直、エルサレムの街中ですれ違うと決していじってはいけない雰囲気が醸し出されている。

誰の考案でこれが商品化されたか知らないが、ターゲットと購買顧客のデータが気になった。

ちなみにこうやって街中を歩いていると、もう何度も言っているが、エルサレムも多分に漏れず、暑い。少し歩いては木陰で休憩しを繰り返し、他にも足を伸ばすべき場所はあったのだが、旧市街地を訪れた二日は割とすぐ限界を迎えて「また今度、暑くない時に来よう…」ということにして、ホテルで涼をとった。

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最終日、チェックアウトした後は、バスでテルアビブにある空港まで向かった。ホテルを去る際、レセプションのおねえさんが私に向かってばっちーんとウィンクしてくれたのにかなりときめいた。

そういえば、この旅の間悪い人には会ってない。テルアビブの某ファストフード店の件はあったけど、本気で気分を害するような出来事はなかった気がする。

帰りの飛行機に乗る手続きも、来る時ほどではないが、検査官に質問されて、荷物も厳し目にチェックされた。無事に搭乗できることになると、残ったイスラエル通貨のシェケルを使い果たすため、空港のカフェでいいお値段のフローズンドリンクを買う。

暑さを癒す飲み物を飲みながら、この旅を振り返る。イスラエルという国を観光してまわったというのが、未だ信じられないというか、夢の中にいるようだった。

書きそびれたけれど、イスラエルはITベンチャー先進国でたくさんのスタートアップ企業が世界から注目を浴びている。正直、1dayツアーのガイドさんが解説してくれるまでは知らなかった情報だ。

それでもってエルサレムという宗教にとって非常に重要な場所があり、歴史の背景から各地で衝突が起こる。

イスラエルは訪れるべき国か、と聞かれたら答えはイエスなのだけど、私たちが運よく襲撃の日を免れたように、予測不可能な自体が起こりうるという意味で、100%イエスとは言えない。

でも、この一言だけでは決して済ませられないけれど「興味深い」国であるのは間違いない。

今回のバカンスは、老後に相方が写真に納めまくった各所の説明書きを改めて読みながら、その時いる家族たちに語る、一生忘れられない旅の一つになるはずだ。

ー終



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