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結婚式の思い出 ミュージカルソング編

8月末の『エビータ』以来、なんと10月の『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』まで観劇予定がない。劇場の民になって以来初めてと言って良いレベルの間の空き方だ。

というわけで、自分語りの記事(どこに需要があるのかはさておき)のアップが続いているのであるが、今日は結婚式、正確には結婚披露宴の思い出をミュージカルソングの側面から書き綴ってみたいと思う。

そもそも私は、結婚式否定派であった。だから初婚のときも結婚式を挙げないことを条件に結婚したし(子どもを持たないことと併せ、これまた上から目線の条件だった)、現在の愛妻との再婚に於いても必ずしも結婚式に乗り気だったわけではない。
彼女も私の意向を尊重してくれる人だったので、必ず挙式したいと言われたわけでは決してなかった。しかし私の、彼女を愛おしく思う気持ちが、彼女の心に添おうとしたのだと思う。改めてふたりで話し合った結果、結婚式(披露宴)を執り行うことにしたのだ。

そのときに私がどうしても譲れなかったことが、披露宴で使用する楽曲を一任してもらうことだった。彼女も立派なミュージカルファンであるのだが、ふたりで決めていくよりも、私のこだわりで決めさせてほしかったのだ。
彼女はそのことを快く了承してくれて、私も本気で楽曲、つまりミュージカルソングの選定に入ったのだ。

おかげで、と言うか何というか、世の中でよく言われるような、新郎が結婚式の準備に非協力的であるという事態はまったく起こらなかった。もともと顧客対応の業務が好きだったこともあり、式場との連絡もすべて私が窓口となって進めたほどだ。愛妻にも「頼りになるとは思っていたけど、今回の結婚式準備で改めてその思いを強くした」と褒めてもらうことができた。←

式場のテーブルには、食事のメニュー表と並んで「本日の曲目表」を置かせていただいた。それほどまでに楽曲の選定は私にとって重要事項であった。

さて、前置きが長くなったが、結婚披露宴の各シーンで、どんな楽曲を使ったのかを振り返ってみたい。

①. 新郎新婦入場までの待ち時間
・民衆の歌(『レ・ミゼラブル』/東宝)
・君の結婚式(『ウェディング・シンガー』/井上芳雄)
・ビー・アワ・ゲスト(『美女と野獣』/劇団四季・下村尊則)
レミゼからの一曲は、ワン・デイ・モアという選択肢もあったかと思うが、あまりにも盛り上がり感が強いため、敢えて民衆の歌を選択。歌詞の中に屍という単語があることが若干気にはなったが、そこはスルーで。
結婚式で如何にも結婚式という歌は避けた方がよいというのが定説ではあるが、ヨチヲファンの愛妻のためにも、井上さんの歌声をここで来賓の皆様にお聴きいただきたいと思い、ウェディング・シンガーから一曲。
そして定番のビー・アワ・ゲスト。
この3曲をリピートして、開場から開宴までのお時間はお楽しみいただいた。

②. 新郎新婦入場
・Seasons of Love(『RENT』/新妻聖子)
入場の一曲はいちばんに決まったと言ってもよい、迷う余地なき一曲。前奏を扉の前で聴き、歌の始まりと同時にドアオープン。高砂に到着して一礼するタイミングで、ハイトーン部分を被せるアレンジで。完璧だったと思う。
当初は入場の動きを計算して、高砂に到着したときにハイトーンの箇所になるようなコンピュータムーブも考えたが、リスクが高いと判断し、マニュアルでハイトーンを被せてもらった。
迷う余地なき、と書いたが、実は扉が開くまでの前奏に相当する時間は、この曲ではなく、ジーザス・クライスト=スーパースターのオープニングを使いたかったのが本音だった。ドアオープンと同時にSeasons of Loveに切り替える感じで。しかしいくら私であっても、それはさすがに躊躇われた。式場の音楽担当の人にもやめたほうがいいと言われたしね。。。これはいつの日か別の機会で使いたい。

③. 新郎新婦紹介
・オケピ!(『オケピ!』/Instrumental)
司会者の方が私たち二人の紹介をしてくださるこの時間のBGM。私たちの出会いがチケット譲渡サイトのおけぴであることを鑑み、三谷幸喜さんの初ミュージカル作品『オケピ!』のテーマ曲を使わせていただいた。もちろんほとんどの人はわからないと思うので(歌詞もないしね)、司会者の人に「この流れている曲は…」という説明も入れてもらった。
というか、ここだけの話であるが、私たちの身上書?から作られた紹介原稿があまりピンと来なかったので、司会者の方が読まれる原稿は、全部私が書いたのであった。

④. 乾杯
・マリウスとコゼットの結婚式(『レ・ミゼラブル』/東宝)
主賓のご挨拶に続き、乾杯の音頭に合わせて流れる一曲。「かんぱ〜い!」の一声の直後に「良き日にベルを鳴らそう〜」と流れるこの演出も、自画自賛ながら最高だったと思う。

⑤. ケーキ入刀
・時が来た(『ジキル&ハイド』/石丸幹二)
この時点ではまだ舞台版の歌詞の石丸さん音源はなかったため、別歌詞バージョンで。入刀の瞬間に「This is the moment〜♪」とサビの部分が被さる演出。
入刀前の楽曲紹介では司会の方から「最高の伴侶に出会えて”時が来た!”と叫ばずにはいられない新郎の気持ちを表しているのでしょうか」とのコメントを入れてもらった。

⑥. 新婦お色直し退場
・Beauty and the Beast(『美女と野獣』/今井清隆&シルビア・グラブ)
今井さんの素晴らしい歌声はどこかで使わなければ、と思い、ここで。ロミジュリの「エメ」という案もあったが、無難にB&Bで。
愛妻はお父様と手を取って退場。

⑦. 新郎お色直し退場
・ミストフェリーズ/マジック猫(『キャッツ』/沢木順&加藤敬二)
劇団四季キャッツオリジナルキャスト版CDをこよなく愛する某友人から、なぜ山口祐一郎タガーの方じゃないんですか!!、と怒られそうだが、特に深い意味もなくロングランキャストCDから選曲してしまった。
私の退場時は、各テーブルを回って、それぞれのテーブルで30秒〜1分程度の短い手品をご覧いただくという趣向だ。そうとくれば、BGMはこれしかなかった。9テーブルすべてに於いて異なるマジックを披露した。

⑧. プロフィールビデオ
・Sisters(オリジナル楽曲/新妻聖子)
・僕こそミュージック(『モーツァルト!』/井上芳雄)
・I'll Cover You(『RENT』/オリジナルBWキャスト)
お色直しの間、二人のプロフィールビデオを流したが、そのBGMにももちろんこだわった。プロフィールは新婦が先としたが、ここはミュージカルソングではなく、私が大ファンである新妻聖子さんのオリジナル楽曲であるSistersを使用した。新妻姉妹に劣らず仲の良い愛妻とお義姉様。愛妻のBGMとしてこれ以上のものはなかったと思う。
そして私のBGMは、逆に愛妻がファンである井上芳雄さんの歌う「僕こそ音楽」だ。特に、ハイライト録音盤CDでの彼の歌唱は神懸っており、ご出席された皆様にも堪能していただけたと思う。
二人の思い出のパートでは、RENTからI'll Cover Youを使用した。作品中のシチュエーションとしてはまぁちょっと異なるところもあるが、歌詞としては私たちの気持ちにピッタリだったと思う。愛妻も賛成してくれた。

⑨. お色直し入場
・オール・アイ・アスク・オブ・ユー(『オペラ座の怪人』/山口祐一郎&野村玲子)
・汽車の中(『アスペクツ・オブ・ラブ』/保坂知寿&石丸幹二)
・Tonight(『West Side Story』/井上芳雄&新妻聖子)
お色直し入場では各テーブルを回ってキャンドルを点けるため、念のため4曲を準備したが、希望通り3曲で間に合った。それぞれ時代を代表するミュージカル俳優たちの歌う、最高のデュエットだと思う。

⑩. 高砂到着
・私だけに(『エリザベート』/オリジナルウィーンキャスト)
キャンドルサービスが終わって高砂に到着した瞬間に流れる楽曲は、エリザベートから「私だけに」。と言っても、歌詞があるとフィットしないため、一幕最後にフランツが「君を失うくらいなら信念を破ろう〜」と歌い上げた直後のところ(リプライズ)からの音源だ。
日本版のCDでは、どうしてもフランツの「破ろう〜」がロングトーン過ぎて次のメロディに掛かってしまうため、ウィーン版のCDから選曲した。
ここは、愛妻実家の皆様から絶賛されたシーンだ。(お義母様もお義姉様も愛妻も、雪組初演からエリザベートを観ているほどファンなのだ。)

⑪. ブーケプルズ
・スキンブルシャンクス/鉄道猫(『キャッツ』/芥川英司)
ブーケトスにしろブーケプルズにしろ、結婚式出席者の中では賛否両論あるのは重々承知だ。だが、愛妻は大好きなお姉さんの結婚式でブーケプルズに参加したのが本当に楽しかったらしい(その頃は私と出会っていない)。愛妻の気持ちを最優先すると決めていたので、ブーケプルズも実施した。
ただ、楽曲についてはもっと考え抜くべきだった。アスペクツの「パリの縁日」こそが相応しかったな〜、と、ほぼ後悔のない結婚披露宴に於いての数少ない反省点だ。

⑫. 新婦から両親への手紙
・The First Man You Remember(『アスペクツ・オブ・ラブ』/Julian Lloyd Webber)
この曲を知っている人であれば、この選曲には激しく首肯していただけると思う。しかも、Andrewの弟Julianが弾くチェロのInstrumentalなのだ。入場のSeasons of Loveと並んで、迷う余地なく決めた一曲だ。

⑬. 花束贈呈
・Thank you for the Music(『マンマ・ミーア!』/オリジナルBWキャスト)
この時点では劇団四季版のCDは発売されていなかったので選択肢はなかったのであるが、まぁここは英語歌詞の方でよかったと思う。

⑭. 新郎新婦退場
・ホサナ(『ジーザス・クライスト=スーパースター』/オリジナルロンドンキャスト)
JCS大好きな私としては、どこかで何かの曲を使いたいと思っていたものの、結婚式に相応しい曲と場面がなかなか見つからなかった。しかしホサナはよいではないか。カヤパ様たちのつぶやきシーンはスキップして、ホサナ色満載で退場させていただいた。

⑮. エンドロール
・Time to Say Goodbye(新妻聖子)
最近の流行りであるが、当日の様子を短時間でビデオにまとめて、エンディングにご覧いただくサービスを私たちも採用した。ちょうど5分を目処ということで、ちょうどよい曲があるではないか。やはりここは聖子さんの歌声で一日を振り返りたい。
ミュージカル曲ではないが、サラ・ブライトマンの持ち歌であることもあり、ミュージカル俳優さんで歌唱力に自信のある人はよく歌う曲だ。
私たちはお見送りの準備があり、リアルタイムではこのエンドロールを見ることはできないのであった。

⑯. 来賓退場
・愛をありがとう(『夢から醒めた夢』/樋口麻美)
ご来賓の皆様を送り出す、最後の一曲は「愛をありがとう」だ。歌詞として最高だと思ったし、あーちゃんこと樋口麻美さんの歌声はどうしても使っておきたかったというのも大きい。
私は新妻聖子さんのファンであるが、劇団四季で誰か一人と言われたら迷わず樋口麻美さんを挙げる。濱田めぐみさんとのダブルキャストを演ることの多かった彼女であるが、ほとんどの場合、私は樋口さんの方が好きであった。何と言っても浅利先生をして天然美声と言わしめたあの声、そして役を生きる力。彼女が出るというだけで、舞台の価値が跳ね上がるのをいつも感じたものだ。
旧版CDに収録されている保坂知寿さんはわたし的日本一のミュージカル女優なのであるが、それでもここは保坂さんバージョンではなく樋口さんバージョンを使わせてもらった。

今思い返しても、本当に楽しい結婚式であった。
このあとしばらくは、毎日のように愛妻と一緒にエンドロールの映像を見たし、今でも定期的に見返している。
結婚披露宴にお金を掛けるのは時代遅れなどと言われるが、価値観は人それぞれだ。私たちにとってはかけがえのない一日になった。

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