見出し画像

パニック! 幼稚園が休園。

新型コロナウィルスCOVID-19が日本中を、いや、世界中を賑わせている。

劇場の民としては、劇団四季を皮切りに相次ぐ公演中止の報に胸が締め付けられる思いであるが、今日のnoteはそのことについてではない。2月27日(木)夜に突如として安倍首相から発せられた小中高校への休校要請の影響についてだ。

首相の休校要請は小中高校に向けてのものであり、保育園は対象外であるとわざわざ明言されていた。ただ、幼稚園への言及がなかったため、そこはどうなんだろうと訝しみつつも、きっと大丈夫だろう、大丈夫であってほしいという思いで、翌日の金曜日を迎えた。
ところが、悪い予感というのは当たるものだ。要請されたわけでもないはずなのに、我が子グスタフが通う私立幼稚園も、週明けの3月2日(月)から休校、そのまま春休みに突入することが決定されてしまった。

金曜の日中、そのことを知った愛妻からパニックのメッセージが届いた。彼女は現在、0歳児アマデの育休中であり、基本的にはずっと在宅している。そのため、3歳児のグスタフの面倒を見ることは、物理的には可能だ。だが、現実的には愛妻のキャパを超えている。彼女自身もそのことを重々わかっているため、週明けからの日々が恐怖でしかなかったと思う。まだ年少組の年齢でもないグスタフを、満3歳児として幼稚園に通わせているのもそのためだ。
世の中では、「働きに出ているんだから、急に休校と言われても子どもを見られないよ!」という親御さんたちが、真剣に預け先のこと(あるいは休みを取ること)で頭を悩ませている。そんな状況下での私たちの悩みは、贅沢なものに見えるかもしれない。しかし、家庭の事情は本当にそれぞれ異なるものだ。愛妻は本気で、グスタフとともに丸一日を過ごしていたら虐待してしまうのではないかと心配していたように思う。

元気いっぱいの3歳児の面倒を一日中見ることの大変さ。それは子どもの個性や親との相性なども影響してくるので、他人の経験など参考にもならないのであるが、大なり小なり、それは本当に大変なことだ。体力のみならず、精神力が削られていく。さらに0歳児の面倒を優先して見る必要もある状況下なのだ。
グスタフはそれなりには物分かりの良い方だと思うが、それでもまだ3歳だ。大人がコントロールすることは不可能と言ってもよい。

わたし自身も、彼女のパニック、恐怖をじゅうぶんに理解することができる。これはすなわち、私の方でも子どもの預け先や休みのことで悩む親御さんと同じ覚悟を持つことが必要だと感じた。
ただ、愛妻も大人であるので、きっと数日であればひとりでも乗り切れるだろうという思いはあった。その点ではやはり恵まれていると言えた。

そして幸いなことに、職場でも在宅勤務の機運が高まっている時期であった。今回のCOVID-19発生前から計画されていた在宅勤務の試験導入期間がドンピシャ当たった。
ただ、私の仕事は研究開発だ。どんなにパソコンを叩いたところで実験結果が出てくるわけではない。知識労働の部分は在宅でも可能であるが、試行錯誤の実験や観察、試作など、設備のあるところでなければどうにもならないことが山ほどある。実験を若い人たちに任せることも不可能ではないが、現在の職場の環境から、まだまだ実地でやることも多い。

一方で、愛妻の状況を鑑みるに、週の平日5日のうち、できれば3日、最低でも2日は私が家にいなければ我が家は崩壊すると感じたのも事実だ。
そこで、週に2日は在宅勤務あるいは有給休暇を取得することを自分へのミッションとして課した。まだ就職して3ヶ月ちょっとの会社でやりたい放題やるのも気が引けたが、家庭の事情には替えられない。この3ヶ月で事業へもじゅうぶんに貢献しているという自負はあったので、わがままを言わせてもらうことを心に決めた。

結果として、「多少の無理があったとしても、積極的に在宅勤務や有給休暇を取得し、万一の感染発生による事業停止を免れる」という事業方針が出たことにより、会社と私はWin-Winの関係となった。
私が働いているのはまだまだ昭和が残る古風な会社であるため、どんなに言われても積極的に在宅や有休を取得する人は極めて少数なのだ。そこへ、私のように「自由に働くサラリーマン」が入ると、普通なら異分子として糾弾されたりもするが、私の場合はいろんなラッキーが重なって、違和感なく受け入れてもらうことができた。歓迎すらされていると感じる。本当に運がよかったと思う。

もっとも、在宅勤務は業務であるため、その間に子どもの面倒を見ることが認められているわけではない。実際、仕事と育児を同時に行うことは不可能と言ってよい。ただ、そうは言っても、私が家にいるというだけで愛妻の気持ちが違うのだ。万一虐待しそうになったらヘルプを求めることができる、という安心感が、心の余裕を生むことができるのだと思う。

最終的には、今週は水曜を有休、金曜を在宅勤務とした。来週は月曜に早退、水曜と金曜に在宅勤務の予定だ。その翌週は3月20日(金)が祝日であるため平日は4日しかないが、水曜と木曜を在宅あるいは休暇とするつもりだ。

3月に入り平日が2日過ぎたが、愛妻は「もう限界」と言っていた。昨日の初日は思いのほか順調だったとの報告を受けていたが、やはり波もあろうし、本当に神経をすり減らせた様子だった。それもあってか、明日の休暇を私が決めたことに関しては、本当に喜んでいたようだ。

もともと、COVID-19のおかげで幼稚園が休校になってしまったわけだが、職場へも同じように在宅する方向への追い風を吹かせてくれたのは本当に助かった。このような動きがなくても休むつもりではあったが、今回の措置は本当にありがたかった。
新型コロナウィルスには恨みしかないが、それを除けばすべての幸運に感謝したい。

ここから先は

413字
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?