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ググれる時代に本を書くということ

昨日(9月9日)、本を出しました。『SDGsがひらくビジネス新時代』という本です。Amazonのビジネス企画部門でも1位になり、心に響く感想を頂いています。

本を書いているときに、ずっと頭から離れなかったのは、ググれる時代に、何故わざわざ本を出すのかという自分への問いです。本を出せば紙を使います。つまらなければ捨てられてゴミになりますSDGsの本なのに、環境に悪い。自分が本を出すことに意味はあるのか?

環境問題、ジェンダー不平等、貧困、消費のあり方など様々な世界的な課題の解決をめざすSDGs。このことに関する優れたコンテンツは、ググれば、たくさん出てきます。

それぞれ切り口が違う。SDGsは17の目標があるので、どれにフォーカスをして書くかどうかで、コンテンツの内容も変わってくる。

SDGsを受け止める

SDGsは学ぶより、受け止めるほうが難しいテーマだと私は思います。たとえば「SDGsは、経済を大事にするのではなく、社会課題の解決することを重視するんですよね。素晴らしいです」ということ言われることもありますが、SDGs目標8には「経済成長も」と書かれています。「社会課題or経済」という二者択一ではない。受け止め方がズレると、学びも変わってきます。

気候危機などへの対策を考慮するからこそビジネスチャンスが生まれたり、ビジネスを回すことで、社会課題を解決したりするのがSDGsだと私は解釈しています。もちろんこの考えへの批判もあります。

また、金融業界や投資家から「きちんと気候危機対策をしっかりやってほしい」とプレッシャーを受けて、「経済のロジック」で環境問題に取り組む経営者もいます。

異常気象は金融リスクって…どういうこと?

たとえばハリケーンなど異常気象によって多数の死者が出たり、工場や店舗などが破壊されたりすれば、経済活動にとって大ダメージです。

日本でも、2018年〜2019年度の集中豪雨や台風の影響で、風水害などによる損害保険金支払額が年間1兆円を超えました。

リーマンショックのときは、世界中の経済が打撃を受けましたが、それと同じぐらい、環境問題の対策を進めないと、そもそもビジネスが成り立たなくなる危険性があるのです。

イングランド銀行の総裁だったマーク・カーニー氏は退任後、国連の気候変動対策・ファイナンス担当事務総長特使をつとめていますが、以上のようなさまざまな影響がある気候変動を放っておくと、金融システム全体への悪影響が心配されることから、金融業界が気候危機対策に本気になっています。

一方、環境問題も、金融の話も、手触り感がない話だと感じるときがあります。

私はメディアやコンテンツ業界にいる人間として、消費者というより、「読者」と向き合っている時間が長いですが、SDGsに関するコンテンツは、どこか「お勉強」になりがちのは、非常によく分かります。

土壌をつくる共同作業

そうしたなか、Googleさまが存在する時代に本を書く理由は、つまりわざわざ900円ちょっとの新書を買っていただくためには、何かを単に伝える本より、筆者である私と読者がいっしょになって、SDGsを「受け止める」ためのコンテンツが必要なのではないか、と考えるようになりました。

本だと章ごとに論点を変えて、自分の迷いも書き込めるし、読者と筆者の関係が深まります。本を起点としたコミュニケーションも生まれる。ありがたいことに、SNSを通して、感想を寄せてくれる読者の方もいらっしゃいます(Facebook、Twitter、Linkedin、YOUTRUST)。そうやってSDGsを耕す「土壌」を、本によって作っていく。私も学びながら。

この本では、自分の内面的な心のうごきやライフヒストリーも織り交ぜながら、いままでのビジネス記事の常識を一度とっぱらって、新たな文体で書くことにしました。もちろん「お得感」が出るように情報もふんだんに織り込んだつもりです。

本を読むことは、情報を仕入れるためではなく、筆者と読者が一緒になって自分たちの「時代のOS」をつくっていく作業です。

情報はググる。読書は受け止める。OSをつくる。そういえば、自分はこんなふうに本を読んできたな、と考え始めてから筆が進み始めました。




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