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一橋大学ジョン・マンキューソ准教授によるハラスメント(8)米国で同レベルの差別を行った教員は即解雇に

 前回(下記リンク)は一橋大のジョン・マンキューソ准教授の唯一の著作が、(誤った)「遺伝学」で性差別を正当化していたことを指摘しました。
 何度もハラスメントを繰り返し、ツイッターとフェイスブックでも私とARICの実名を出して嫌がらせを行い、そのうえ本で生物学を使ってセクハラを全面肯定する――もはやマンキューソ准教授は一橋大学が即刻解雇すべきことに議論の余地はありません。
 しかし、一橋大学は私たちの再三の要請に対しても全く誠実に応答せず、マンキューソ准教授を擁護し続けています。
 ※前回記事は下記です。

 さて今回もその続きを書こうと思いましたが、米国からとても重要なニュースがバズフィードによって翻訳されました。
 マンキューソ准教授と同じように、移民排斥のヘイトスピーチを繰り返すトランプ大統領による差別煽動に煽られて、テキサス州の教員が学生を差別したのです。自分が教える学生を「不法移民」だからと排除するようトランプ大統領にツイートしたというのです。この差別した教員はすぐにクビになりました。

 英語版の元記事はこちらです。

 今回はこの記事から、一橋大学がマンキューソ准教授を当然解雇すべきことについて書こうと思います。

 さて、事件は次のようでした。

テキサス州フォートワースの教員ジョージア・クラーク教諭は、トランプ大統領に宛てて、勤務先の学校での「不法移民の捜査と排除」への支援を求めるツイートを複数したことで、解雇された。
クラーク元教諭は1998年から英語教師を務めていた。先月大統領に宛てたツイートは「私信」だと思い、投稿したコメントを誰もが閲覧できることを知らなかったという。
5月17日、「大統領、フォートワース独立学区はメキシコからの不法移民の生徒で溢れています」とクラーク元教諭はツイートした。アカウントは後日、削除された。
また、「メキシコ人は米国国旗を敬うことを拒否する」と告げ、生徒を捜査して排除することができる現地入国管理官の追跡調査に対する支援を求めた。
「フォートワースの不法移民排除につながるなら、どんなことでも大いに感謝します」と彼女は付け加えた。

 この教員の差別は、マンキューソ准教授の差別と非常に似ています。
 第一に、トランプ大統領という権力者による差別煽動効果によって促されて、あるいはトランプ大統領の差別を利用して、堂々と差別している点です。
 じっさいトランプ大統領が当選した直後から差別・ヘイトクライムが急増しています。今回のテキサス州での高校教員の差別も、トランプ大統領の差別煽動によるものでしょう(引き金を引いたかあるいは本人の義憤を焚きつけて差別を過激な行動へと実行させる)。

 このように政治による差別煽動効果は、庶民の差別よりも、比べものにならないほど強いのです。拙著『日本型ヘイトスピーチとは何か』(影書房)ではこのことを「政治空間からの差別煽動」あるいは「上からの差別煽動」と定式化しました。
 しかし米国の人々も、まさかトランプ大統領の差別煽動効果が太平洋を超えて日本の一橋大学に及んでいるとは思いもよらないのではないでしょうか?
 しかしマンキューソ准教授も、トランプ大統領の差別煽動に喝さいをおくり、差別を激化させています。私たちが最初にマンキューソ准教授から襲撃された2016年12月ARIC研究会襲撃事件は、トランプ大統領の当選直後だったのです(第二回目第三回目の記事に書きました)。

 第二の共通点は、加害教員が2016年のトランプ大統領当選以前から差別を繰り返していた、というものです。記事にはこうあります。

クラーク元教諭が懲戒処分になったのは、今回が初めてではない。
2013年に、ラテン系生徒のグループを「リトルメキシコ」、ある白人の生徒を「ホワイトブレッド」と呼んでいたことが判明している。

 学生をハッキリと人種で分けています。レイシズム以外の何物でもありません。
 加害教員は差別・ハラスメントを繰り返してきたところに、移民排斥とヘイトスピーチを堂々と繰り返すトランプ氏が大統領に就任することで、差別をより大っぴらに、より堂々と、よりオフィシャルにやり抜こうと思わせたのではないでしょうか。
 これはマンキューソ准教授と全く同じなのです。じつはARICに寄せられた匿名の通報によると、マンキューソ准教授も授業中になんと学生を名前で呼ばず、「おい、そこのロシア人」とか「韓国人」などと国籍や人種で呼んでいたという告発が届いています。
 前回までの記事でかれが昔から差別とハラスメントを繰り返してきたことを書きました。それがトランプ大統領当選で、より堂々と、より過激に、よりオフィシャルになりつつあるのです。

 ここまではクビになった米国の高校教員とマンキューソ准教授は同じです。しかし決定的に違う点があります。それは学校による処分です。
 米国では高校教員は差別が発覚するや否やクビになっています。

火曜日夜に行われたフォートワース独立学区の特別会合では、十数名の一般市民が学区職員に対して、クラーク教諭の解雇を求めた。彼女を擁護する声が出なかったという。
「彼女のコメントは、本来保護をして教育する対象であるはずの生徒たちを傷つけ、冒涜し、無責任で、誤解を招くものでした」と、保護者のひとりペニー・クラントンさんは語った。
「ひとつはっきりさせておきましょう。違法な人間など存在しません」と、同学区の教員アーニー・モラン教諭は付け加えた。
最高裁は、不法滞在の子供でも、憲法の平等保護条項に基づき、公立学校に通学する権利があると、1982年に判決を出している。
クラーク元教諭の発言によって、「保護者たちが恐れて、子供を家から出さないようになることで、子供たちは合法的に教育を受ける権利があるにもかかわらず、彼らに対する教育が欠如してしまう脅威が生じた」と、中学生の子を持ち、アーリントンのテキサス大学で講師を務めるミンディア・ウィッティアーさんは話した。

 この記事からわかることは、

1)加害教員の差別ツイートに関して、フォートワース独立学区の特別会合が開かれた

2)十数名の一般市民が学区職員に対して、クラーク教諭の解雇を求めた。

3)市民や保護者や識者が加害教員の差別の問題点を的確に指摘した。
 特に、クラーク元教諭の発言によって、「保護者たちが恐れて、子供を家から出さないようになることで、子供たちは合法的に教育を受ける権利があるにもかかわらず、彼らに対する教育が欠如してしまう脅威が生じた」とのミンディア・ウィッティアーさん(大学講師)の指摘は大変重要です。

4)同僚の学校の教員も「ひとつはっきりさせておきましょう。違法な人間など存在しません」と「不法移民」の学生を擁護する意見表明している。

5)加害教員の差別を批判する論拠として、「不法滞在の子供でも、憲法の平等保護条項に基づき、公立学校に通学する権利がある」との1982年最高裁判決が使われている。

 そして、

その後、学区理事会のメンバー8人全員が、「正当な理由」があるとしてクラーク教諭の解雇に賛成票を投じた。
「私たちは、すべての子供、その両親あるいは保護者がフォートワース独立学区に歓迎されていることを生徒たちに保証することを望んでいます」と、学区のジャシント・ラモス・ジュニア理事長が語った。

 つまり、

6)処分に対して投票が行われ、全会一致で解雇が決まった。

7)理事長がはっきりと「すべての子供、その両親あるいは保護者」という表現で「不法移民」の学生の権利を擁護した。

 以上、やや長く米テキサス州の教員の差別ツイート事件をみてきました。
 日本に住む私たちが学ぶべき教訓にみちていると思います。

・差別する教員は即刻クビにしなければならないこと
・たとえ「不法移民」(本来は非正規滞在者と言うべきです)であろうと、法律違反を根拠にしてマイノリティの生存権・居住権やその子の学ぶ権利を奪うことは許されない、という正義の基準を学校が守ること
・それはたとえ移民排斥を訴えるトランプ政権の意向に反しようとも、だからこそ権利が擁護されるべきだということ

 一橋大学准教授のマンキューソ氏への対応はどうでしょうか?
 上の1)から4)にひきつけて書けば、次のように全く対照的です。

1)マンキューソ准教授がいくら差別・ハラスメントを起こしても、処分を決める特別会合など開かれない
(被害者は一橋大学のハラスメント委員会に相談するように言われますが、今度書く通り、そこでは何もしてくれないどころか、露骨にマンキューソ准教授の肩をもちます…)

2)一般市民が大学に対してマンキューソ准教授の解雇を求めるアクションもありません。

3)特別会合どころか、マンキューソ准教授の差別・ハラスメントがなぜおかしいのかを公的に訴える識者もジャーナリストもいません。

4)同僚の一橋大学の教職員も、マンキューソ准教授の差別・ハラスメント問題については、腰が重く、ほとんど何もしてくれません。

 以上です。
 レイシズムが深刻な米国でさえ、露骨な差別をすればクビになる状況があります。
 それと比べてみると、日本の大学の、特に一橋大学のマンキューソ准教授への対応は常軌を逸しているというほかありません。
 これで、どうやって一橋大学で学生が自由に研究しろ、というのでしょうか?


※この事件についてのニュース動画が下記で見れます。





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