見出し画像

午前2時、バングラデシュのハイウェイ

2018年9月 バングラデシュ・ダッカ



 とにかく、この国の人たちは生き急いでいる。


 午前1時すぎ、バングラデシュの首都・ダッカに到着。アライバルビザを発行して入国し、出口でタクシーを手配してもらい、ホテルへ。空港からホテルまでは1,200タカ(約1,600円)。この国の物価からすると相当高いが、定額のようなので、渋々了承し、お金を支払い、車が手配されるのを待つ。5分ほどしてやってきた車は、エアコンが故障したままのボロボロのセダン。僕の、初めてのバングラデシュの旅は、ここから始まる。

 この時間でも気温は28度もあり、蒸し暑いバングラデシュ。僕らはボロボロのセダンの窓を全開にして、オールドダッカにあるホテルへと向かう。間もなくして、タクシーはハイウェイに乗った。

▼僕を乗せたタクシーの運転手


 午前2時、バングラデシュのハイウェイ。

 この時間でもたくさんの車が走っていて、なかなかスムーズには進まない。道路にはしっかり白線が引かれていて、片側2車線なのだが、多いときは4台が横並びで走っていて、白線は全く意味をなしていない。窓の外からは、常にどこからかクラクションの音が聞こえてくる。運転手たちは、事あるごとにクラクションを鳴らさないと気が済まないようだ。かく言う、僕を乗せたタクシーも、もはやウインカー代わりに、クラクションを鳴らしている。

 僕を乗せたタクシーは、まるで誰かと障害物競争してるかのように、縦横無尽にハイウェイを駆け抜け、物凄いスピードで前の車を追い抜いてゆく。早く着くのは嬉しいけれど、もはやリアルカーチェイス。

 物凄いスピードと言ったが、スピードメーターは止まったままで、時速何キロで走っているのかは、誰も分からない。神様、お願い。なんとか僕を生きてホテルまで届けてください。


 無事生きて、一般道へ。すると、街がさらに騒がしくなる。車の隙間を一刻も早く抜けていこうとするバイクに、たくさんの荷物を引っ張るボロボロの自転車、人を乗せたままなかなか前に進めないオートリキシャー(三輪タクシー)、そして、全てのものを飲み込むかのように突っ込んでくる大型のトラック。一般道では、車のクラクションに加えて、バイクとオートリキシャーのクラクション、自転車のベル、さらにはたくさんの人の罵声が加わる。もちろん道は大渋滞。弱肉強食。午前2時の異種格闘技戦。


 なんとか事故ることなく、ホテルに到着。Google Map上だと40分弱で着くはずなのに、気がつけば、時計の針は午前3時を優に回っていた。チェックインして部屋に入ると、もちろんホテルの部屋の中でも、窓を開ければ、さまざまなクラクションの音が一斉に入ってくるし、窓を閉めても、クラクションの音が漏れ聞こえてくる。


 僕は眠るが、バングラデシュは眠らない。


▼路上で眠る人はいます。

▼リキシャーで眠る人もいます。



編集後記

 翌朝、明るくなって、その全容が見えてきました。

 南アジアにあるバングラデシュ。人口はおよそ1億6000万人(日本よりも多い!)で、世界第8位。しかし面積は、日本の北海道と東北地方を合わせた程度のため、シンガポールなどの都市国家を除くと人口密度は世界一です。そのため、街は人で溢れています。

▼昼間の街の様子。常に大渋滞。

 それ故、昼間になると、道路の交通量はさらに増します。走っている乗り物も多種多様で、車やバイクだけでなく、自転車タクシーのリキシャー(座席は2人乗り3人で乗っているツワモノもしばしば見かけます!)、三輪タクシーのオートリキシャー(落ちないようになのか窓が柵みたいになっていて、監獄に閉じ込められているかのよう!)、大型のバス(みんな走っているバスに飛び乗ります!)、さらには、なんと馬車まで。(それなのに、自転車を自転車として乗っている人は見かけませんでした。)

▼リキシャー

▼オートリキシャー

 加えて、道に信号はありません。大きな交差点では、それぞれの道に警察官が立ち、信号の役割を果たしており、みんなそれに従います。しかし、歩行者には警察の力すら及びません。

 歩行者用の信号ももちろん無いため、歩行者のルールは「いつ渡ってもいいが、気をつけて渡れ」。

▼交通整理をする警察官。

 もしも、この国に歩行者用の信号があったとしたら、歩行者用信号はどれも常に「青」。赤になることはありません。


 歩行者は、車が止まっていようが、走っていようがお構いなしに、みんな気をつけて渡ります。大きな交差点であるのに、堂々と斜め横断する人も多数。車も人も、我れ先に行こうとするため、車のクラクションは鳴り止まず、常にブレーキを踏んでいないと、車も安全には進めません。そのため、どこの道路も大渋滞が発生していたのでした。

▼交差点の様子(動画でどうぞ)。

 そんな状況なので、これに慣れていない観光客にとっては、道路の横断は死と隣り合わせ(決して言い過ぎではない!)。どれだけ集中して道路を横断しても、いつ、どこから、何が、飛び出してくるのか、本当に分かりません。


 僕も細心の注意を払って横断したものの、一度リキシャーと接触事故を起こしました。道路を渡る僕に、人を乗せたリキシャーが普通に突っ込んできたのです。慌てて避けて、足が軽くリキシャーとぶつかる程度で済んだのですが、それが当然かのように、周りのみんなが振舞っていたので、僕も笑顔でその場を立ち去るしかありませんでした。少し足を引きずりながら。


 車も人も、相手に道を譲ることは一切しないバングラデシュ。とにかく交差点を誰よりも早く越えたいバングラデシュ。そんな調子ですから、今日もどこかで、何かしらの事故が起こっているでしょう。


 とにかく、この国の人たちは生き急いでいる。


▼電車は常に満員で、屋根の上にもたくさんの乗客が。

▼車両の一番前と一番後ろは、子供たちの特等席。



こんにちは、リーマントラベラーの東松です。サポートいただいたお気持ちは、次の旅行の費用にさせていただきます。現地での新しい発見を、また皆様にお届けできればなぁと思っております!