2023年鞍馬の火祭①

2023年(令和5年)の鞍馬の火祭は、10月22日の日曜日に催行予定です。

火祭は当日までの約半年間、古来から伝えられてきた方法で松明等を準備しますが、鞍馬地域の人口減等の影響からその手順や材料等を知っている人が少なくなっており、掲げる大松明の数も減ってきております。市会議員として人口減を食い止めることが当然一番の目標でありますが、並行して体験したことを少しでも多くの方に知っていただきたいと記録を残すものです。

初参加が2022年でまだまだ日が浅い僕が聞いたこと・経験したことがメインとなっており、主観も多分に含まれますので、あくまでご参考とお考え下さいませ。


「じん」取り(2023年5月4日)

【作業概要】
・「じん」採り
・「じん」は松脂を多く含んだマツのこと。手に持つ手松明や、大松明等の上部に挿し火の勢いを調整する。
・松脂を多く含むマツは「肥えている」、逆は「痩せている」と表現する。標高が高く山深い場所に多い。
・若いマツは松脂が少なく、枯れていても抜けていることが多い。落ち葉が多く湿気た場所に、黒く少し湿った皮のマツがあれば、肥えていることが多い。独特な香りがする。
・鞍馬の人々はよく肥えたじんの香りを「火祭の匂い」と表現する。

●岩倉の山奥へ…

 5月4日、僕がお世話になっている組の一行は岩倉の山奥某所にいました。意外、鞍馬から20分も離れていない場所です。地権者様からの了解を得て入山、山肌を削っただけのような急こう配の林道をマニュアルトランスミッションの四駆で駆け上がっていきます。このトラック登山ひとつにしても山と生きる男たちのテクニックが光りますね。なぜノンストップで走り抜けられるのか?雨でえぐれた路面と尖った石で富●急もびっくりな乱高下な車中を楽しみつつ目的の場所へ。喋っていると舌を噛みそうでした。

岩倉地域を一望できます。これだけでも来る価値あります。


●「じん」とは?

 この日来た目的は「じん」をとること。松脂を多く含んだマツのことで、手に持つ手松明の材料や、大松明等の上部に挿し火の勢いを調整する際に使います。松脂が多ければ多いほどズッシリと重く(肥えている、と表現するそうです)、宝石のように赤い断面をしていて、一般的なマツの木材を濃くしたような独特の良い香りがします。若い葉のついた木ではなく、少し腰を下ろしたような、黒くしっとりした老木がよく肥えています。

赤い部分が「肥えている」ところ。松脂が固体になって宝石みたいになっていることもあります。

●いざ、じん採り

 肥えているマツを探すのは至難の業です。まず、マツがどれか分かりません。香川の田舎出身で、関西のアーバニックな方々に比べれば野山を駆け巡って育った僕ですが、葉が生えていれば判別がつくものの、幹の形と皮だけではほかの木と区別がつかないのです。 

 しかし鞍馬の山男達は一味違う。一目で品種どころか肥え具合まですべて当てて見せます。僕を含め新入り一同必死で肥えたじんを探しますが、マツを探し当てたとしても肥えていない、古すぎて中身が崩れているなど、なかなか上手くいきませんでした。目的の資材を見つけるだけでも修業が必要なのです。

 見つけたマツは小型チェンソーを使って伐採、60~70cmの長さに切り揃えてトラックの荷台に運びます。松脂をたっぷり蓄えたじんは見かけに反してずっしりと重い!急斜面ゆえ、リレー方式で一本ずつ降ろしましたが、すべて降ろし終わるころには汗びっしょりになりました。ふもとに降りる前に、景色を見ながら皆様と一緒にお昼。様々な世代の方がいらっしゃいますが、こうして祭りの準備をしてお昼を囲むと、何か絆のようなものを感じますね。

先人に教わる…

●来るべき時まで保管

 採ってきたじんは一旦鞍馬某所でお借りしている資材置き場に保管し、後日薪割の要領でバラします。多少濡れるのは平気ですが、中までしっかり湿ると腐るそうなので、その辺の石で足場を作り、じんを組んでトタン片を載せます。何気ない対策ですが、こうした動作ひとつひとつにもこれまでの経験が生きているのですね。

●その後

 5月22日、僕は所用で参加が叶いませんでしたが、じんを割る作業がありました。
 丸太を枕にして、ナタで一本ずつ割っていきます。通常の木材と異なり、松脂の詰まったじんは重く、握力がすぐになくなってしまうそう。単純に割るのではなく、縦の長さは変えず、3cm幅のものから、尖ったものまで、割りながら様々なサイズを揃えます。

 割りたてのじんからは松脂の良い香りが広がります。この香りを嗅いだ鞍馬の方々は「火祭の匂いや」と顔をほころばせておりました。参加歴一回の僕でも、あの熱い秋の夜を鮮明に思い出す香り。参加できなかったのが悔やまれますね。

単純に割ればいいってものでもないそうです。難しい。

今回はここまで。
次回は手に持つ松明づくりです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?