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朝渋のマーケティングトレース~勝ち残る新規事業とは~

最近、マーケティングについて語る際によく用いる事例がある。朝渋というイベントだ。

僕自身、コミュニティにこそ属していないが、朝渋のイベントに年10回ほど通うファンでもある。(渋谷勤務×朝型×読書好きなので行かない理由がない)

割と財布の紐は固い方だと自負しているが、1時間半のイベントに2,000円ほどを払ってしまう。ついでに本も買うので、計4,000円ほどの出費になる。そして満足して帰るから、また訪れる。

この通り、朝渋は顧客体験が非常によく、更にビジネスモデルまで秀逸である。令和時代に求められるビジネスを先取りしている事例だと思っている。

1.朝渋について

朝渋とは、株式会社Morning Laboが運営する朝活コミュニティである。

主な収益源は、著者イベントとコミュニティ運営で成り立っている。(と推測されます。IRがないのであくまで推測)

<著者イベント>
朝の渋谷で、第一線で活躍する本の著者がトークイベントを行う。収益源は、参加者の参加費(1回2,000円前後×100人前後)
<コミュニティ運営>
朝活したい人が集まり、朝に自己実現に向けた活動をみんなで行うコミュニティ。
・集中プログラム(3か月40,000円)
・コミュニティ(月額5,000円)
・オンラインイベント視聴(月額1,500円)

そして、1番多くの人が参加するのが、この著者イベントである。収益性や財務状況は分からないが、これだけの規模の人数を、無形商材の有料イベントで集客できることは並大抵のことではないと思っている。

また、この著者イベントへの参加をきっかけにして、朝渋のコミュニティに興味を持つ人がコミュニティに参加する。

そして、朝渋の目的は、

早起きをきっかけに、人生を自分で選択できる人を増やす。

ことである。今後は、その目的を達成するための手段として、朝渋を考察する。

<まとめ>
1回の有料イベントで100人を集客するのが朝渋の特徴。その集客力をコミュニティ作りにも活かしている。


2.秀逸すぎるSTPの切り方

まずはSTPからです。朝渋の目的は、

早起きをきっかけに、人生を自分で選択できる人を増やす。

なので、この体験を1番で来そうな人がどんな人かを考える訳ですが、この2軸で切ってみました。

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まずは、ビジネスやキャリアへの関心が高く、行動を起こしたいけれど、起こせないニーズ顕在層をターゲットに設定していると考えられます。

もう1つの軸はSNSをよく使うかだと仮定しました。集客チャネルと、その後の拡散性を考えたときに、1番アプローチしやすい層であり、かつ周りに広めてくれるのがSNSを使っているそうだからです。

ここでポイントなのが、「朝型」の人をターゲットに設定しないことで、朝型の人だとパイが限られるため、あえて市場の大きいビジネス×SNSへの関心が高い層をターゲットに設定した方が、広く集客することができます。

<セグメンテーション>
ビジネスやキャリアに関心が高く、SNSをよく使う人。

続いてポジショニングです。

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ここで初めて朝が出てきます。ビジネスやキャリアに関心が高く、SNSをよく使う人にとっては、夜のイベントは山ほどありますが、朝のイベントは朝渋以外にほとんどありません。

更に企業の講演ではなく、著名人が登壇するイベントも中々ありません。前田裕二さん、北野唯我さん、田端慎太郎さんなど、メディアでの有名人に会えるのです。

このポジションの取り方が秀逸で、朝に著名人の話を聞けるイベントは他に存在しないのです。つまり、

イベントには行きたいけれど、仕事終わりだと大変だから朝なら行けるかも。
夜型で早起きはつらいけど、この人に会えるなら早起きしてでも行きたい!

などと、ポジションが特異なため、ターゲットにとっては非常に分かりやすく差別化することができているのです。

この朝でも行けるをターゲットではなく、ポジションに据えていることが戦略の妙であり、いい差別化ができています。

<ポジショニング>
朝から豪華な著名人の話が聞ける


3.オフラインだからこその体験

このSTPによって、独自のポジションを確立し、集客することができているが、実際の体験がよくないと、リピートは生まれないし、口コミによって周りに広まることもない。

が、この朝渋、非常に体験がいい。

一言で説明することはできないが、朝から第一線で活躍されている方の話を実際に生の場で聞くのは、本を読むだけでは感じられない高揚感がある。

この朝渋の価値は情報以上に、この高揚感だと思っていて、効率化が叫ばれる時代で、オフラインだからこそ成り立つ価値を磨き上げているところがまた絶妙なポジションの取り方だと思う。

全て僕が参加した会の感想を抜粋したのもだが、高揚感のある様子が伝わるのではないかと思う。

(エゴサしてみたら1年くらい前の僕がポエムツイートをしていた恥ずかしくなった)

この高揚感はやはり、話しの上手い豪華なゲストが毎回参加すること(と朝)に尽きると思っていて、他のイベントにはない体験ができると感じている。

<まとめ>
オフラインならではの高揚感があり、その肝は豪華なゲストが登壇すること


4.バリューチェーンもすごすぎる件

で、ここからが本題で、朝渋の1番の凄みであると考えているバリューチェーンについてである。

言い換えると、価値作りの肝である豪華なゲストをなぜ呼び続けられるのか?という問いに集約される。

朝渋が成り立っているのは、この豪華なゲストを呼び続けられる仕組みが整っているからに他ならず、この仕組みが模倣困難であることが独自性の確立に繋がることになる。

バリューチェーンでいうと、豪華なゲストという、価値の高い商材を安価に調達し続けられれば、儲かることになる。この仕組みが非常に美しい。

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①win-winを気づきコストを抑える

普通、著名人をイベントに呼ぶのであれば、数十万単位での報酬が必要になる。しかし、著名人に数十万単位の報酬と釣り合う対価を他の方法で支払うことができれば、その必要はない。

そこで、朝渋が掲げた戦略が「著者イベント」であり、本を売りたい著名人が本をPRできる場を提供することである。

<著者イベントのPR>
・会場がBOOKLABTOKYO
・その場で本を買うことができる
・参加者がTwitterで本を広めてくれる
・登壇内容を記事として発信してくれる
・朝だから予定が被らず参加しやすい

著者は本を売りたい以上に、本で書いた内容を伝えたい気持ちが強いので、金銭的報酬以上に、本の内容をPRできる場があることは大きな報酬となる。

一方で参加者にとってのメリットも大きく、

<参加者メリット>
・著名人の話を聞き高揚感を得られる
・本を読む以上の情報が得られる
・Twitterで言語化することで学びが深まる
・Twitterで呟くことで承認欲求を満たせる
・本を読む手間を省き学びを得られる

普通ならばPR活動にはお金を払う必要がある。メディアやプラットフォームに掲載用を支払って広告を出すのが一般的だ。

しかし、朝渋は逆だ。お金をもらいながらも、本を広めてくれる参加者がたくさんいるのである。しかも参加者はそれを進んで行う。

この価値の転換によって生まれるPR方法によって、豪華なゲストを呼ぶことができるシステムが整っている。

<広告と朝渋を通したPR>
お金を払う→お金をもらう
企業の広告を嫌々見る→友人だから信頼できる

と、コストが安いどころが、お金をもらいながら、広告以上に説得力のある口コミを生み出す仕組みが確立されている。

②5時こーじさんの存在

いくらシステムがいいとしても、著名人を呼ぶためにはそれ以上の信頼が必要になる。この信頼得るために、朝渋代表のこーじさんが努力と創意工夫を重ねている。

(詳しくはここに全て書いてあります)

ここは人と人の信頼なので、逆に個人としての信頼が高まるほど模倣困難性が高まる。忙しくたくさんのオファーが来る著名人が、複数の候補から1つを選ぶとすると、条件以上に信頼や関係性が大事になるものである。

信頼は積み上げ式で、過去の実績が増えるほど高まっていくので、win-winのモデルと共に模倣が困難であるのだ。


5.お金以外の価値交換を

このトレースからの学びを要約すると、

お金や条件以外での価値交換

だと思っている。

・朝開催の独自性で価格が上がる
・PRの場になることで高額の報酬が不要
・無形商材での顧客体験
・自ら喜んでPR活動に協力する参加者
・信頼関係で成り立つゲスト集め

ポジショニングや独自の価値によって価格が変わり、winwinを築くことで調達コストや広告コストを押さえ、人的魅力によって独自性を作っている。

これを日常生活に応用すると、

普通だったら話を聞いてもらうのは負担だと考えがちだと、愚痴を聞くのが好きな人だったらむしろプラスかもな。
noteを有料で売らなくても、noteによって信頼を構築して転職するか、仕事仲間を見つけられたら出来たら結局年収が上がるな。
出会いだけを目的にしたら、出会いに課金(マッチングアプリ)が必要だけど、他の目的を設定出来たら課金がいらなくなるかもな。

みたいなことを考えられるようになります。このお金や条件以外でのソフトな価値交換を設計する癖をつけると、マーケティング力が上がるのではと思います。


まとめ

シンプルに朝渋はおすすめです!何かのきっかけを探している人は行ってみたらいいと思います!

(マーケティングトレースも、書籍が出版されたので、朝渋の著者イベントで話が行われたら感慨深いなと、、、妄想中)

内容としては、新規事業やビジョンドリブンな事業を作る際に必要なのが、お金や条件以外の価値交換に集約されるのではないかといった分析でした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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