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NewsPicksのマーケティングトレース~競争から共創へのシフト~

3.5→9.3→16.6→29.6(億)

2015年から2018年の3年で10倍に成長しているNewsPicksの躍進の理由を分析しました。社名はニューズピックスだよねってツッコミはナシです。馴染みやすそうなのでNewsPicksです。

1.NewsPicksのビジネスモデル

NewsPicksの収益源は、①広告掲載②会員課金の2点です。つまり、①広告が機能ほどの読者がいること②課金してまで見たいコンテンツが存在することが重要になります。

ちなみにNewsPicksの広告は記事広告という形式で、PRして欲しい企業のコンテンツを作成し、NewsPicksに投稿する形です。よく見られるバナー広告とは異なります。

魅力的なコンテンツを作成して、広めることがNewsPicksの利益に直結するということですね。


2.なぜ、儲かるのか(基礎編)

つまり、なぜ儲かるのか=①コンテンツの魅力度②集客戦略の2つの集約されることになります。2つの点において、競合と差別化ができているということです。

まずSTP分析によって、あまり競合がターゲットにしていなかった20代から30代の意識高めな若者がターゲットであることが分かります。

そんなターゲットに対して、総合的なビジネス情報というポジションでコンテンツを作っています。

そしてビジネス×総合ニュースメディアというポジションで、従来の常識を覆す破壊的な4Pを設計しています。

キュレーションでなく自社でコンテンツを内製することで差別化を図り(Product)その分の価格プレミアムでサブスクモデルを築き(Price)紙でなく若い人の多いアプリやSNSを主戦場とし(Place)コンテンツの質を武器に人から人へ広まる仕組みを設計しています(Promotion)

ここまでは、ほーん。って感じでしょう。

本題はこれからです。なぜこのモデルがすごいのか、3つの点から紐解いていきます。


3.若者の深層心理をキャッチ!

三浦さん「なんでWEEKLY OCHIAIを見るかって、人よりも社会のことを分かった気になって、会社で言いたいだけ」

天才かよ!!!!そう思わずにはいられない三浦さんの言葉に全て詰まっていると思います。

NewsPicksが満たしているのは、自分に最適なニュースが発見できるという機能的価値ではありません。機能的価値ならYahooやGunosyで充足されます。便利を追求するとレッドオーシャンなので、札束と技術の殴り合いに巻き込まれてしまいます。

そこでNewsPicksが満たしたのは2つの情緒的価値だと思っています。

①正解に導いてくれる感

人口動態の影響で大きな会社に入れば成功だという風潮を浴びていた40代以上の世代は異なり、インターネットと共に生きてきた30代以下の世代は情報の渦に揉まれ、答えが分からない正解を生きています。

そんな時代にキュレーションで集められたニュースを見ても、より迷走します。何を学べばよいのか分からなくなります。特に20代はこの傾向が顕著だと思います。

そんな答えが見えず孤独な若者に対してNewsPicksはインフルエンサーを活用した”答えもどき”を提案します。明らかに社会に詳しそうな落合さんやホリエモンを巻き込み、1つのメッセージを発します。

こんなコピーを発信するのはNewsPicksだけですよね。古い体質の企業の若手が1人薄々と孤独に感じている違和感に対して、「NewsPicksはこう言ってたよ」と”おっさん”に立ち向かう武器を与えるのです。

答えのない社会で、信頼できる人を登用して1つの方向性を示すNewsPicksは、悩める若者のヒーロー的存在として、心を掴んだのだと思います。

②NewsPicks使ってる俺すごい感

上記のように、最先端の情報を集めたNewsPicksは更に付加価値を付け加えます。承認欲求です。

答えがなく多様な価値観が認めれる時代になると、人は孤独になります。自信がなくなります。正解が分からず、何をしたら認められるのか分からないからです。だから、認められたくなります。

そしてNewspicksは承認欲求を満たすために2つの武器を与えます。Pick制度と権威性(有名人が言ってるから正しい感)です。一言でいえば、「落合さんはこう言ってたよ」「それに対して僕はこう思う」を言える場を用意したということです。

Pickで自分の意見を発信し、
WEEKLYOCHIAIの感想をシェアし、
メモの魔力を読んでメモを取り、
会社の人に「これがキテル」と話します。

NewsPicksに関わっていると、何だか社会に詳しくなった感が味わえます。そんな自分を発信し、承認欲求を満たすことができます。そんな情緒的価値を満たすことのできるサービスは競合にはなく、これがまさにブルーオーシャン戦略の神髄だと思います。

この理論の①②がばっちりはまってます。


4.みんなで作るメディア

NewsPicksが満たす情緒的価値は考察出来ましたので、次はその価値をどう広めるかですが、この仕組みが秀逸です。

伝えるインセンティブが明確

NewsPicksのすごいところはここに尽きます。NewsPicksの記事を広めれば広めるほど、ユーザーが得する仕組みになっています。

①インフルエンサー
前田裕二さんや箕輪さんなどがこれに当たります。彼らは、NewsPicksで話題になることで認知を獲得することができ、叶えたいビジョンに近づくことができます。

②プロピッカー
社長や、取締役。採用広報などがこれに当たります。インフルエンサーではないものの、ビジネス界隈の実力者です。彼らもインフルエンサーと同様に、影響力を高めるために、NewsPicksを使います。

③アンバサダー
若手の俗にいう意識高い系(?)の方たちです。彼らはNewsPicksで得た知識を「NewsPicksの記事や書籍が言ってた」と現場に用いることで、業務を推進しようとします。また、アウトプット練習も兼ねて、SNSでよく投稿します。

アンバサダーは自信がありません。不安です。結果を出して認められたくてウズウズしてます。そんな彼らの不安を和らげるのがNewsPicksの活用だと思ってます。

隠すまでもなく、私はまさに当事者なので、こうしてnoteを書いたり、Twitterで発信しているのです(笑)そして、

①インフルエンサー
②プロピッカー
③アンバサダー

の3者が一体となって、

①良いコンテンツを制作
②みんなでコンテンツをアップデート
③マスに広がる

という仕組みが完成しているのです。ちゃっかりPickという付加価値で競合のコンテンツまでアップデートして再利用しているのも秀逸ですね!


5.ユーザベースな文化

仕組みがすごいのは分かりましたので、なんでこの仕組みを回せてんねん!といった疑問を考察します。

このモデルが成立させるために困難な壁が2つあります。

①優秀な編集者の参画
②インフルエンサーの参画

の2点です。

まず①についてですが、NewsPicksはプラットフォーマーでもあり、コンテンツ企業でもあります。コンテンツを自社で内製しています。

そしてコンテンツの質を高めるために1番重要なファクターは優秀な編集者の有無だと考えています。人脈、文章力、マーケ力を含めた総合力でしか競合に差を付けることはできません。

編集長の佐々木さん、金泉さんに加えて、サロンを運営している櫻田さんや野村さん。noteで2万フォロワーを抱える最所さん。この小さな規模の会社で一社員がここまでの影響力を持って活動している企業は稀有なように思います。

つまり、どれだけ優秀な編集者を巻き込めるか。優秀な編集者にとって良い環境であるかが、大切になってきます。

そんな中でユーザベースは最高の環境を提供します。まさに顧客だけでなく社員もUserと捉え、働きやすい環境を実現しているのです。

Vorkersのスコアではインターネット業界でGoogleに次ぐ2位。まさに圧倒的な職場環境です。(リンクが埋め込めず)

https://www.vorkers.com/company.php?m_id=a0C1000000Y0jZX

そして、②インフルエンサーを巻き込んでいます。これはすごいことだと思います。落合さん、ホリエモン、前田さん、箕輪さんなど、角界のインフルエンサーがNewsPicksのコンテンツに登場するのです。

インフルエンサーは一般的な人と比べて、金銭報酬では動かないと推測されるため、わざわざNewsPicksに参加する意義を提供する必要があります。

インフルエンサーもUserとすると、NewsPicksは「経済を面白くする」と利益でなく、日本社会の発展を目指して(正確にはユーザベースのミッションは世界志向ですが)活動するインフルエンサーのやり甲斐も満たすことができます。

落合さんのミッションの達成のために、WEEKLYOCHIAIが必要だからこそ豪華な参加者が集まってくるのだと思います。

競争じゃなく、共創文化

つまるところ、これに尽きます。NewsPicksは株式会社として利益の創出を目的の1つとしているものの、本当に目指す先は「経済を面白くする」ことです。

その目的の実現のために利益を巡って争うのでなく、インフルエンサーからサラリーマンまで日本中の知恵を集めて、盛り上げていこうという気概が感じられます。

だから多くの人が共感し、付いてくる。ここにこそNewsPicksの本質はあると思っています。


6.これからの戦略は

マーケティングトレースの訓練として、「もしニューズピックスのCMOなら」といった仮定の下、持論を展開させていただきます。

効果の実感は意外と難しい

一読者としての主観になりますが、NewsPicksのコンテンツを見てもすぐに行動するのは難しいと思っています。

確かに世の中のトレンドは分かるし、成功者の哲学も分かる。勉強している気もする。ただし、実際にそれらを実行するのは一般人にとってややハードルが高い。そして、情報が多すぎて結局正解が分からない。

(あくまで一般人にとって)NewsPicksでのアウトプット効果を現場で実感するのは意外と難しいし、メモの魔力の効果を実感するのも意外と難しいように思えます。

なんとなく頑張っている自己高揚間で一時の熱量は保てるものの、ブームが去ったら効果を実感できず、過ぎていく気がしなくもなりません。

NewsPicksは誰を変えるのか

そこで本来のNewsPicksの目的に立ち返る必要があります。それは、NewsPicksの目的がメディアとしてマス(一般人)の行動を変えることなのか、より意識が高い上流層に質の高い情報を届けるのかで戦略が変わるからです。

この観点は「NewsPicksは令和時代に天下をとれるか」といった議題で議論されています。

コミュニケーションのアップデート

よって顧客体験の向上のために、質の高い情報と一般人の媒介者がいると、より高いインプットをできるのではないでしょうか。

not コミュニティ but コミュニケーション

コミュニティを強化する路線を考えなかったのは、企業がコミュニティを持つのは相性が悪い気がするからです。コミュニティは共通言語ありきであり、共通言語は人に付随するからです。

箕輪編集室、ホリエモンイノベーション大学校のような人がメインのサロンが多いのは勿論のこと、朝渋のような活動メインのコンテンツもコミュニティオーナーがいてこそ成立しています。

そしてコミュニティが企業という十字架を背負う必要性は薄いからです。

それよりも、

・オンラインサロンの歩き方
・NewsPicksの歩き方
・1流マーケターになるための道のり
・本日のニュース解説
・メモの魔力活用方法

など、既存の発散されたコンテンツを収束させる媒介者がいて、LIVEやTwitterを通じて、アプリの外からNewsPicks経済圏の価値を最大化させる形が合致していると推測しました。

特に多くの人がたった1冊の書籍に1500円かけて、約1500円の有料会員にならないのは、

学ぶ手段で想起するもの:本>web記事

といった固定概念が存在するからだと思います。ここの壁さえことができれば、経済を面白くするための学びの中心がNewsPicks経済圏になり、よりコンテンツへの課金が伸ばせるのではないかと推測した次第です。


まとめ

自己実現欲求の充足が満たされる現代のマーケティングにおける本質は、①誰もが叶えたい未来像の提案、②そのビジョンを顧客に体験させるための実行力、の2点

に尽きるのではないかという結論です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

こちらもよろしければよろしくお願いいたします。


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