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ZOZOのマーケティングトレース~受託販売モデルがすごい理由~

前澤社長の1億円お年玉でビジネス界隈だけでなく、一般人にも有名になった株式会社ZOZO。

そんな株式会社ZOZOのマーケティングトレースを行いました。

結論:この会社やべえ

題目はマーケティングトレースですが、ZOZOが1番すごいのは、マーケティングでなく、ビジネスモデル。

Amazon、楽天、UNIQLOはなしえなかった痒い所に手が届く秀逸なビジネスモデルを軸に、アパレル業界ではあり得ない高収益モデルを構築しているのが株式会社ZOZOの正体です。

このZOZOのビジネスモデルを紐解いていくことで、令和時代を制するビジネスモデルとは何かを考察したいと思います。

1.Who:ZOZOは何者なのか

まず前提として、ZOZOの収益はブランドショップから得ています。なので、ZOZOのお客さんの中心は服を買うユーザーではなく、服を売りたいブランドショップです。

Googleのお客さんが、ユーザーではなく、広告主なのと同じですね。なので、まずZOZOはブランドショップにとっての何者かである必要があります。

結論:アパレル×ECの差別化集中戦略

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ZOZOはEC市場において、アパレル業界への差別化集中戦略をとっています。(ポータの3つの基本戦略より)

ECサイトの中でも、手数料が安く便利なAmazon、手数料は高いものの手厚いサービスで差別化を図る楽天に対して、ZOZOはアパレル業界に特化することで競合が不可能なビジネスモデルを築いています。

このアパレル業界特化が、ZOZOが圧倒的に勝てる理由になります。(後述)

<まとめ>
ZOZOはアパレル業界特化のECサイトだ


2.What:何で儲けているのか

2019年の決算では、ZOZOの収益の9割はZOZOTOWN事業でした。(IR資料引用)

やばい受託販売モデル

そしてこのZOZOTOWN事業の「受託販売」というビジネスモデルが、とにかくすごいのです。

一言でまとめると、ZOZOTOWNがブランドの代わりにインターネット上で商品を売って、手数料をもらう仕組みです。図にしてみると普通なのですが、、、

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ZOZOTOWNがなかったら、ブランドは直営店や小売店で売るか、楽天市場などのECサイトで売ることになります。楽天やAmazonのモデルはこうです。

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つまり、在庫管理や発注、マーケティングまで自社で行わなくてはいけない楽天に対して、ZOZOTOWNは代わりに売ってくれる仕組みなのです。

楽天:楽天を使って自由に商品を売ってね
ZOZO:代わりにZOZOが売ってくるね

となるので、ZOZOの方がブランドショップに対する付加価値が大きくなります。

そのために倉庫を持たない楽天に対して、自社で倉庫を持ち、物流周りも代わりにZOZOTOWNが行っています。

そして販売のために、アパレル業界特化のECサイトでユーザーに服を販売しているのです。(ZOZOTOWNを使ったことない方はこちらを)

<まとめ>
受託販売モデルのECサイトで設けている


3.Why:なぜ儲かるのか

ZOZOが何者で、何をしているのかが分かったので、ここからは「なぜ」ZOZOが儲かるのかを紐解きます。ZOZOは受託販売モデルを軸に高収益のビジネスモデルを築いています。

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前提として「受託販売モデル」のすごさに迫る前に、高収益率を誇るビジネスの特徴を主に2つ挙げると、

①付加価値が大きいこと
②競合がマネできないこと

です。価値があって、替えが利かなかったら、誰でも大金を払うわけです。(本質的な議論は置いておいて)大学の環境と、卒業した証に価値があり、替えが利かないから、僕達は数百万の学費を納めます。

私立大学に年間100万払っても通いたい人がいるから、私立大学は学費を100万円に設定できるのです。

3-1.あって困らないZOZOTOWN

その点、ZOZOTOWNは圧倒的に付加価値が高いです。例えば、

<架空のアパレルショップA>
服の原価:1,000円
販売額:5,000円
手数料:1,500円

だとすると、アパレルショップAは普通に商売をすれば、原価1,000円の服を5,000円で売り、5,000円から販売費、物流費、人件費などを引いた額が利益になるとします。

この際、自分が架空アパレルショップAの経営者であると想像してみてください。

ZOZOTOWNの営業マン:

代わりに服をインターネット売ってあげるよ。その代わり手数料1,500円ね。それでも2,500円は利益出るし、人件費とか除いても余裕でプラスだよ。

これなんです。使わない理由がないので、ZOZOは手数料をかなり高くとることができます。

ZOZOの手数料は売上の約28%と言われており、似たモデルのAmazonと比較しても2倍近くあります。代わりに売るだけで、商品代の28%を儲かる訳ですから、収益性はかなり高いです。

これは、在庫ビジネスのために、作りすぎた分はセール品として売ることを見越して商品の値段を高めに設定するなど、粗利率が高いアパレル業界であることも大きく寄与しています。

更に、これらを補強するメリットが2つあります。

①プラットフォームだから低コスト

ZOZOはアパレルショップAの商品もBの商品もまとめて仕入れ、まとめて販売しています。そのため、一ブランドが単独で商品を売るよりも圧倒的にコストが安くなります。手数料が高く、コストが安いので、利益率は高くなります。

在庫ビジネスとデータの親和性

アパレル業界では在庫ビジネスなので、どうしても売れ残りが生まれ、セールが必要になります。また、リアルな店舗だと売れ行きをコントロールしたり、予測するのはデータがないので難しいです。そのため、タイムセールなどを行い店員さんが声を枯らして売り切るよう努めるのです。

一方で、ここでZOZOTOWNがインターネット企業であることが生きます。データを用いて、誰が何をどれくらい買うか予測することができます。特定の顧客に対して、狙って商品を売ることもできます。

<まとめ>
ZOZOTOWNの1番のお客さんは、ブランド。ブランドへの付加価値の高さが高収益モデルの源泉

3-2.Amazonに真似させない

ZOZOTOWNのポジションによって、買い手であるブランドに大きな付加価値を出せることは分かりました。

しかし、プラットフォームビジネスを持続させるためには、競合に算入させない仕組み作りが必要になります。

そして、ZOZOTOWNにおいて1番強そうな競合はどこでしょうか。と、考えると真っ先に浮かんでくるのが

Amazonなのかなと。

「Amazonも倉庫作って、物流の強みを活かして同じことやればよくね。」

そんな仮説が経つわけです。一体なぜZOZOはAmazonに対して、他の企業に対して、競争優位を築くことができたのか。考察します。

①倉庫への先行投資

ZOZOは自社の倉庫で、各ブランドの服を補完することで、ビジネスモデルを成り立たせています。それによって、上記のビジネスモデルが成立し、プラットフォームの先行者利益(後発で参入しても利益を食い合うだけで旨みが少ない)をいち早く築きました。

自社倉庫を持たない楽天とは、この時点で優位性を確立し、対Amazonに対しても、アパレルに特化したECサイトとして先に先行者利益を築きました。

②アパレル市場への集中戦略

本を売れるAmazonが、同じように洋服を売れないのは、アパレル市場の特異性にあります。

個人によって必要な商品が異なるアパレル業界だから、マーケティングができる優位性が生きます。例えば家電業界だと、ある程度良い製品は誰が買っても良いものなので、直営店で買うことが多いです。

一方で、アパレル業界だと個人によって趣向が異なるため、ZOZOTOWNのように色んな服をまとめて比較して検索できるサイトはかなり顧客にとってニーズが高くなります。顧客の引きがいいので、売れる。売れるチャネルだから、ブランドも頼りたくなるのです。

差別化できないし、旨みもない。

総合ECサイトのAmazonは、顧客に対してここまで差別化できないので、ZOZOの方が顧客にウケます。顧客にウケるから、ブランドショップも使いたくなる。

しかも倉庫を用いた先行投資がハマっているから、Amazon-wearのように子会社化しても利益を食い合うだけで旨みがない。

低利益率のコストリーダーシップ戦略を取るAmazonに対して、差別化集中戦略で上手く市場を確保したのがZOZOです。上手すぎる。

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4.How:どう売るのか

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こうして、高収益のビジネスモデルが成り立ち、初めてマーケティングへの投資ができます。こうして、マーケティングへの投資ができるから、圧倒的な付加価値が生み出せます。

対企業に対しては、差別化集中戦略でしたが、対顧客に対してはコストリーダーシップ戦略。安くイイものを、便利にたくさん売る力技で市場を獲得しています。

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Product

ZOZOの特徴は検索機能の細かさとサイズへの対応です。

ECサイトでありながら、ストライプ柄、白ニットなど、より細かな検索ニーズをガッツリと満たし、ZOZOスーツで得た個人情報を軸にして、サイズまで適応しています。

これで様々なブランドの商品を比較しながら購買できるので、顧客からしたら便利すぎますね。楽天で服を買う理由がありません。

Price

ZOZOTOWNの強みは、受託販売なので、ZOZO側の裁量で値段を変更することができます。安い服をお得に買いたいとき、通常であればいろんな店を見て回らなければいけないところを、ZOZOでは手軽に今安い服を探すことができるのです。

Place

これは特に説明不要でしょうか。今まで店舗で買うのが当たり前だった洋服がECサイトで買えるようになります。どちらかというと、ここは楽天ユーザーよりも、小売店ユーザーとの比較になりますね。

小売店でしか買えなかった服が、(高機能な)ECで簡単に買える便利さで、小売店ユーザーがZOZOユーザーに移行しているはずです。

Primotion

コストリーダーシップ戦略なので、お金を使って色んな人に知ってもらえさえすればよいのがプロモーション。球場の名前にまでZOZOを入れるほど、お金に余裕があるのですから、小細工する必要はありません。

高収益のビジネスモデルでないと、ここまで多額の投資はできないので、バリューチェーン全体での差別化ががっちりハマっています。

<まとめ>
マーケティングへの投資ができるので、価値を磨け上げて真っ向勝負できる。

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こうして、ユーザーが集まるから、アパレル業界特化のポジショニングが成立し、より対企業に対して強い地位を築ける。高収益構造だから、マーケティングに投資してユーザーを増やせる。

まさに正のサイクルが周り続けているわけです。派手に見える前澤さんですが、設計を見ると緻密さも兼ね備えています。すごい。

5.自分がCMOなら

ZOZOTOWNのビジネスモデルは成熟していて、5force的にもあまり穴はなさそう(説明省きます)なので、今後とも順調に伸び続けると思います。

それなので、今回は「ZOZO HEAT」に代表されるプライベートブランドとしての「ZOZO」をどう飛躍されるかについて考察してみます。

一言で言えば、ZOZOはプラットフォームでなく打倒ユニクロを掲げていて、そのためには何が必要なのかということです。

2019年度の売上でいうと、

ZOZOTOWN事業:826億
ZOZO事業:27億

ユニクロは大体国内だけで8,000億なので、桁が違います。(ZOZOTOWNの売上は商品の売上ではないため一律には比較できない)

ブランドのユニクロ vs 機能のZOZO

概して、ユニクロの強みはブランド力にあります。数年前の「ユニクロ=ダサい」イメージを払拭し、「ユニクロを着こなす=カッコイイ」風潮を確立させたブランディングが見事で、商品の質や安さも相まって、多くの人がユニクロの服を着ていると思います。

対抗馬としてのZOZOの強みは、テック機能です。機能といっても、洋服のデザインや着心地では優秀なデザイナーを抱え、商品開発力も充実しているユニクロには劣ります。

一方で、ZOZOSUITなどのITを用いた技術でZOZOは勝負しているように思います。ECとデータを活かして、より個人にfitした服を提案する。それによって、ユーザーの選択コストを極限まで減らすのがZOZOの狙いだと推測されます(NewsPicksの記事より)

続かなかったおまかせ定期便

しかし個人に合った服を届け、選択コストを減らす。そんなコンセプトのおまかせ定期便は、上手くいかず2019年3月にサービスを終了しています。「服は自分で選びたい」もので、機能だけでは突破できない壁が見えてきました。

これらを踏まえて、1つの打ち手を考えてみました。どん!

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一言で説明すると、ZOZOの資産であるWEARで見つけたお気に入りコーデを真似したいけれど、

そのままブランド物を買うと高いし、似たような服を探しても見つからないし、といった課題を。

・WEARで人気な服の類似商品を自社開発
・ZOZOSUITでサイズを豊富に用意
・ECでラクラク安心に買える

ことで、一気通貫で顧客課題を解決し、機能面での優位性を、「服は自分で選びたいけど探すのは面倒くさい」ユーザーに対して、「好きなコーデがクリック1つですぐ手に入る」ジョブを提案します。

お好みコーデを私も、安く、早く。

いかがでしょうか。財務面が何とかなれば、技術が追い付けば実装可能で、ニーズもあるような気がします。自惚れだろうか。


まとめ

ZOZOの強みは、マーケティング戦略でなくビジネスモデルにありました。そのビジネスモデルを考える上で重要だったエッセンスは今回だと、

バリューチェーン分析

でしょうか。ブランドショップが服を売るまでのバリューチェーンに対して、どこなら価値を最大化できるかを的確に射止めることで、このビジネスモデルが発想されたように思います。

感想

ZOZOすげえ!一流企業のトレースは学びが大きいなと思いました。最後まで読んでいただきありがとうございました!


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