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強いチームは戦略のデメリットを理解している

僕はこの3年ぐらい自分たちの事業の事業戦略をつくって、それをチームで推進していくという仕事をやらせてもらっています。

そのなかで、うまくいったこともあれば失敗だったと感じることも少なくありませんでした。

4月から会社の組織体制が変わったり、部署を異動したりすることも多いと思われるこの時期、まだまだ浅い経験の中でしかないですが、自分なりに事業戦略をうまく推進していくために何が必要なのかということを少しだけまとめてみたいと思います。

まず、どこかの組織やチームに所属している限り、そのなかで個人がそれぞれ価値を出していくためには、組織が掲げている戦略への理解が何よりも重要だと痛感しています。自分が所属するチームが何を大切にしているのかを理解する力は、もはや仕事のなかのひとつのスキルだとすら思っています。(僕が大学時代に多くの時間を費やした『ウイイレ』でもたしか「戦術理解度」というパラメータがあった気がするんですがまさにそれです。)

特に今多くの職場で求められる仕事のやり方は、大半が自律的に仕事を見つけていくというやり方です。昔のように上司から決まった仕事を1~10まで命令されて遂行するというよりは、様々な環境変化のなかで数ある選択肢のなかから自分がベストだと思う行動をとっていくことが求められると思うのです。そのなかでもよりパフォーマンスを発揮するのは、自ら主体性をもちながら、自分たちの事業戦略を理解した行動をとっていく人たちです。

自分が自律的に仕事に取り組むということ自体は意識的に行えるかもしれませんが、事業戦略までを理解して行動に移すとなるとそれなりのスキルが伴ってないと難しそうです。場合によっては同じ行動をとっていても、自分が所属するチームの方針に合うか会わないかで、異なる評価をされるということもあるかもしれません。
でも一言で「戦略理解」と言われても、抽象的なことが書かれている事業戦略の資料を眺めているだけでは、何をすればいいのか判断がつかないこともあると思います。

ここ数年、チームのみんなが事業戦略を理解する(もしくはしてもらう)コツは何かあるのか、ということをずっと考えていて、実感値としてたどりついたことがあります。それは「戦略のデメリットを理解する」ということです。

戦略というのはトレードオフなので、「何かを優先させる代わりに何かを犠牲にすること」とも言い替えることができます。
戦略理解とはまさに自分たちが今何を犠牲にしようとしていて、その代わり得ようとしているメリットは何かということを理解しながら行動することだと思います。

それをシンプルな言葉で伝えようとしている企業もあります。そのうちのひとつで、サイバーエージェントさんの半期ごとのスローガンは素晴らしいものだと思います。 うちの会社の経営メンバーのあいだでも話題にのぼったのですが、ここに掲げられている半期ごとのスローガンは、目指す場所や得たいものを分かりやすく伝えることに加えて、そのために何を犠牲にしないといけないかを各スタッフが意識しやすくなっているという効果もあるのかなと想像してます。(実際どうなのかすごく気になっている)

この戦略のデメリットを実感しやすいもののひとつが、会社の組織構造だと思っています。なぜなら、この組織構造が会社のなかで最も多くのスタッフに影響を与えるものだと思うからです。誰と仕事をして、どんな役割を担い、 誰に評価されるのかというのが、まさにこの組織構造をどうつくるかによって変わっていきます。
会社の組織構造のなかにもいくつかの種類があると思いますが、対比として分かりやすいのは機能別組織事業部別組織のちがいです。このふたつの組織には、それぞれ以下のメリットとデメリットがあると言われています。

機能別組織・・・製造、販売、調達などのように、担当する機能ごとに分けた組織形態
<メリット>
・同じ職種の担当が部署内にいるため、知識の共有がされやすく専門性を高めたり業務効率を高めやすい。
<デメリット>
・専門職種で分断されているため、全社課題に対して取り組みを推進しづらい。また、権限や責任が限定的なため、責任の所在が不明確になりやすい。
事業部別組織・・・会社が担うそれぞれの事業ごとに組織を分けた組織形態
<メリット>
事業部ごとに責任の所在が明確で、かつ事業部単位での意思決定がなされるため、意思決定スピードを高めやすい。
<デメリット>
事業部間の垣根が高くなることで協業がしづらかったり、事業部間での短期利益志向が強くなることで長期的な施策がとりづらい。

会社の組織構造は実際もっと複雑になっているケースがほとんどだと思いますが、仮に上のふたつを対比すると、得られるメリットとデメリットが全く異なることが分かります。

いかなる組織構造にも何かしらのデメリットが存在すると言われます。「『組織』は、『戦略』に従う」のだとすると、今自分がいる組織は何かしらの意図があってそうなっているはず。その理解をするだけで、今自分が感じている組織のなかの課題が「起こるべくして起こっているもの」なのか、それとも「意図せず起こってしまっているものなのか」を判断することができます。つまり、自分たちのチームが決めた戦略しだいでは、今感じている問題は、もしかしたらさほど対処が必要なものではない可能性だってあるということです。戦略理解がなければ、目の前で起こっている問題のすべてを解決するような行動を取ってしまうかもしれません。しかし、戦略の内容しだいでそれは変わると言っていいと思います。

たとえば上の例でいうと、事業部別組織を選択している会社のスタッフが、「うちは部署間のサービス開発がなされないことが問題だ!」と嘆いていたとすると、それは上記の整理を見れば起こるべくして起こっている問題であることが理解できます。その問題が起こったときに、自分たちが選択しているフォーメーションのデメリットを理解せず、そこに疑いの目を向けることはあまり得策ではないといえます。

戦略理解度を上げるためには、まさにこのアンテナを働かせることが重要。
もし自分が組織やチームに対して課題だと思っていることがあったら、それが起こりうるものとして起こっているのか、そうでないかを見極めていくだけでもいいチームの第一歩になると思います。また、チーム全体の戦略理解度を上げておくことで、特定の問題が発生したときに、マネージャーが直接「これは戦略上しかたないものだ」と上意下達で伝えるのではなく、メンバーそれぞれが「これは起こってもしょうがないものだから気にせず前に進もう」と相互に問題解決ができるようになると思います。さらにメンバーが自浄作用としてその場で問題を解消することで、戦略への納得感も生まれるはずです。

このように、戦略の内容そのものもさることながら、戦略を絵に描いた餅に終わらせず、どうやって実りあるものにしていくかは、いくつかのコツがある気がしています。僕もまだまだできていないことだらけですが、戦略の実行力があがると、きっととてつもなくワクワクするチームができるんじゃないかと思ってます。何かにチャレンジするときっと多くの壁が待っているものですが、みんなでそれを乗り越えるためのヒントをひとつでも多くつくっていければと思います。

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