2019年にコミュニティマーケティング領域で起こる変化の仮説

あけましておめでとうございます。

2018年は初めて書籍の執筆をさせていただき、これまで自分が見えていた景色が大きく変わってきた一年でした。同時に2018年は多くのコミュニティ関連の書籍が発売され、改めてコミュニティの力というものが実感として再認識された年でもあったように感じます。

これからコミュニティ関連のマーケティングの潮流がどのように変化していくのか、個人的に「こんな風に変わっていったらもっとワクワクするんじゃないか」という期待も込めて、2019年、ファンベースないしはコミュニティマーケティング領域で起こりそうなことを仮説としてまとめてみたいと思います。

僕がこの数年のコミュニティマーケティング関連の流れを見ていて、今年起こると思っている変化は以下の5つです。

・people mediaへの注目
・プロダクトからサービスへの転換におけるコミュニティの活用
・コミュニティマネージャーとPRマネージャーの統合
・ファン株主への注目
・コミュニティはownedからsharedへ

ひとつずつ説明してみたいと思います。

仮説その①:people mediaへの注目

昨年の12月に行われたDIGIDAY Hot Topicのセッションで語られた多摩美の佐藤達郎さんのトリプルメディア2.0という独自のメディアの定義のなかで、「people media」への注目ということが語られていました。

僕はファンの心を掴んでいく施策のなかで、いわゆる企業が発信するOrganisation owned mediaでの発信に加え、People owned mediaとして社員と顧客のコミュニケーションチャネルがよりいっそう重視されると思っています。
それは企業の公式のオウンドメディアで社員が顔出ししていくということにとどまらず、社員個人が情報発信のチャネルを持ち、それぞれが個別のアカウントで発信していくということがより組織的に行われていくのではないかと思います。
近年だとメルマガのなかで社員の名前を出してコミュニケーションをする企業も増えましたが、メールにとどまらず、blogや個人のSNSにおいても社員個人の発信を広げる動きが加速するのではないでしょうか。「企業の信頼性」が企業で働く「社員の信頼性」によってつくられていく時代において、社員が個々でつながり、ファンへ発信するというやり方は今後も増えると思っています。

仮説その②:プロダクトからサービスへの転換におけるコミュニティへの注目

メーカーを中心として、プロダクトを販売するだけでなく、それらをサービスとして捉え直すことがこれからのマーケティングのなかで欠かせない考え方になると思います。たとえばフェンダーはギターを販売するだけでなく、「FENDER PLAY」というプログラムによって、販売後にギターのレッスンコンテンツを提供し、ギター上達のためのハードルをユーザーに乗り越えてもらうための手助けをしています。これはフェンダーがギターというプロダクトを販売するだけにとどまっている限り生まれない発想で、フェンダーをひとつのサービスとして捉える考え方です。
このように、あらゆるプロダクトがサービス化するプロセスにおいて、企業と顧客が関係を持つ瞬間に着目し、コミュニティを活用する企業が増えていくと思います。

仮説その③:コミュニティマネージャーとPRマネージャーの統合

2018年多くの注目を浴びたコミュニティマネージャーという職種は引き続きコミュニティマーケティングが活況を呈していく流れにあわせて注目度が高まっていくと予測しています。ただ、コミュニティマネージャーという職種が社会に定着していくと同時に、コミュニティマネージャーの成果にも注目が寄せられることは間違いないと思います。
現状、コミュニティマーケティングはどうやってその成果を測るか、ひとつの正解があるわけではありません。企業はその活動に応じてさまざまなKPIを設定し、企業への貢献を可視化しようとしている段階です。
そのなかで、コミュニティとPR活動をセットで評価する企業が出始めています。コミュニティ単体を盛り上げることを成果とするのではなく、コミュニティの盛り上がりが、マーケティング上どのような成果を得たのかが問われるなかで、PR活動とセットで評価指標をつくり、統合的にこれらをマネジメントしていく人材が生まれていくのではないかと思います。

仮説その④:ファン株主への注目

ファンと寄り添っていくマーケティングのなかで、株主とのリレーションも変わってくると思います。短期的な収益性を目的とした投資ではなく、その企業を応援したいという思いから投資をする、いわゆる「応援経済」のなかで、企業のファンとなり、より長期的な視点で株を保有する個人株主の比率をどう高めていくかという議論がより活発になると思います。さらにファンとしての個人株主を増やしていくために、株主との関係性をどうしていくべきか、株主とのリレーションが見直されていく流れが加速するのではないかと思います。
企業はこれまでIRを中心に、主に収益性の観点からさまざまな資料を公開し、ステークホルダーとリレーションを構築しようとしてきましたが、それに加えて、ファンで株主になってくれている方から、より長期的なビジョンやそのビジョンを達成するための活動の正当性について問われていくのではないでしょうか。
ファンはサービスを受けるだけの人ではなく、企業活動をともにつくっていくステークホルダーとして、どのように関係をつくっていくべきか、見直されていくと思います。

仮説その⑤:コミュニティはownedからsharedへ

これまで、企業はより多くのファンをコミュニティに囲い、さまざまな施策によってその生簀の中の会員をアクティブにさせるかということに苦心してきました。しかし、多くの企業がコミュニティに着目し、それぞれの企業がコミュニティを独自で構築していく流れのなかで、企業どうしのコミュニティのコラボレーションによってファンの熱量を高める機会を生み出したり、新たにファンになってもらえるような機会を獲得するということが注目されていくと思います。
これまでコミュニティは企業のownedとしての機能が主な役割でしたが、コミュニティが社会に定着しつつあるからこそ、他社との連携により、sharedの場としてコミュニティを活用していく流れが生まれ始めるのではないかと思います。

以上が個人的に感じている2019年の変化の仮説です。ホントにこんなことが起こるかどうかは分かりません。でもこういう変化が起こったらマーケティングは断然楽しくなるし、ビジネスや経営そのものともっと関わりの深いものになっていくと思います。

マーケティングがもっとワクワクする時代をつくるために、今年も走っていきたいと思います。



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