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トークイベント「#好きだから宣伝したい」を終えた感想を書いてみる

トライバルメディアハウスでは、10/14から10/21のあいだ「 #好きだから宣伝したい 〜インフルエンサーマーケティングを変えよう〜」というイベントを計5日間にわたって開催。インフルエンサーマーケティングに取り組む企業の担当者の皆さんをゲストにお招きし、トークイベントという形式で、各社の取り組みについてお話を伺いました。

イベントも盛況に終わり、少し時間も経ちましたが、改めてゲストのトークから得られた発見や感想についてまとめてみようと思います。


まず、このイベントの趣旨は「 #好きだから宣伝したい 」というハッシュタグにも表現されているように、インフルエンサーのフォロワー数だけでインフルエンサーマーケティングの成否を考えるのではなく、ブランドに対して向けられている熱量からインフルエンサーとの取り組みを見直そうというものでした。(ぜひTwitterで「#好きだから宣伝したい」でご覧ください)

5日にわたってそれぞれ、DINETTE尾崎さん、栃木SCえとみほさん、DeNA坊さん・川口さん、アダストリア田中さん、ワークマン林さんの5社6名のゲストの皆さんからインフルエンサーに対する考えや、具体的な取り組みについてお話を伺いました。

僕自身もこれまでファンの熱量を軸にマーケティングを考えてきた立場から、6名のお話を伺って大切だと再認識したことが多くありました。一つひとつの学びを挙げればキリがなくなってしまうので、今回はその中でも特に重要だと感じた点をまとめてみたいと思います。


1. 「影響力」の再定義

まずはインフルエンサーの「影響力」とは何なのかについて、5社それぞれの取り組みを具体的にお伝えしてきましたが、共通して自分たちのブランドにとっての「影響力」とは何なのか、かなり明確に定義されているということが印象的でした。

インフルエンサーの影響力について、われわれも普段からブランドに対する「ファン度」と、フォロワーに対する「インフルエンス度」を軸に定義をしています。その中でも、各社のお話で印象的だったのは「ファン度」を強い選定要件として捉えているということです。
短期間のプロモーション施策であれば「インフルエンス度の高い人の中からファン度の高い人を選ぶ」という順序でも一定の成果は出そうですが、各社がインフルエンサーを長期的なパートナーとして捉えているからこそ、「ファン度の高い人を大前提とし、かつインフルエンス度の高い人を選ぶ」という軸を重視しているように見えました。

さらに、僕がトークセッションを担当したDINETTEさんとワークマンさんもそれぞれ、ファンに出会うポイントとして「トレンドにどれだけ敏感な人か」(DINETTEさん)「新商品にどれだけ早く反応してくれているか」(ワークマンさん)とおっしゃっていたように、自社ブランドに言及されたSNSのクチコミに張り付きながら、ファン度を測る具体的で明確な軸を持たれているということもトークの中でとても印象的でした。各社でファン度を測る上でも、いったい何を持って自社のファンとするのかを定義する作業は欠かせないと思います。つまりは自分たちにとって大切な顧客は誰なのか、マーケティングの一般的な定義ではなく、自社ブランドにとって解像度の高い定義を持たれていることが伝わってきました。

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ワークマンさんも「基準はない」とおっしゃっていましたが、自社にとってのインフルエンサーに選ばれるための<基準>を儲けるのではなく、ファンである可能性を見定める<軸>を持っていらっしゃることが、他の企業においても重要になるポイントに感じました。
これは、自分たちのまわりにはどんなファンがいるのか、徹底して見てきたからこそつくられているものなのだと思います。

各社のトークの中で明らかになってきたのは「インフルエンサーマーケティングにおいて大切にすべき『影響力』とは何なのか」また、「『影響力』が一体何によってもたらされているのか」ということかもしれません。
それは、必ずしもブランドを広く認知させてくれる人だけではなく、ブランドが好意的な文脈を伴って伝わることによって、フォロワーの意識や行動を変えてくれる人であり、またその影響力はフォロワー数で測れるものではなく、ブランドのことを愛している、フォロワーが好きと表明した時に愛情を持ってブランドのことを教えてくれる素養の備わっている人こそ、ブランドがリレーションを取るべきインフルエンサーだと再認識させられます。



2. 自社のインフルエンサーと共通言語を持つ

次にインフルエンサーとのリレーションについてです。インフルエンサーマーケティングと聞くと、インフルエンサーをメディアとして捉え、情報のリーチが約束された場へ出稿し、露出を測るという構図で捉えられることがまだまだ多いように感じます。ですが、実際にインフルエンサーマーケティングを長期の取り組みとして捉えている企業は、ファンやインフルエンサーに仕事を依頼するということから始めるのではなく、自社にとってのインフルエンサーとまずはじっくりとリレーションを取ることから始めているケースがほとんどです。

ワークマンの林さんのお言葉を借りると「身内化」という言葉で表現されるほど、リレーションを取るべきインフルエンサーは本来ブランドにとってのパートナーであるべきです。実際に担当者が店舗に足を運び、インフルエンサーになりそうな方に直接会いにいくことの意義は、「自分たちのことをもっと好きになってもらうため」とおっしゃっていました。

インフルエンサーマーケティングの施策の中では、まだまだインフルエンサーとのリレーションが企業からの「依頼」から始まることが多く、今回の5社のお話を伺い、まずインフルエンサーとのリレーションをしっかり築くことがいかに重要かが伝わってきました。
特にワークマンの林さんのお話の中で、「アンバサダーはファンの意見を代表するものである」という発言も印象的でした。アンバサダーがファンの意見を代弁してくれていると感じてもらえる状態を作るためには、<①ブランドとアンバサダーが本音で語れる関係を作っている必要がある>、かつ<②アンバサダーがファンから認められている存在になっている>という2つの状況が不可欠です。そのためにはまずブランドとアンバサダーが主客の関係を超えたパートナーとしての関係を築けていることが大前提になります。

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これは、DeNAさんのお話にもあった「ファンは顔が見える存在」ということにも通じるお話で、ブランドにとってまさにファンが道しるべになっていると感じたエピソードでした。その上で、ファンに対する調査とファンと共に行う施策を分けずに、その二つが循環しているということも大きなポイントだと感じました。通常、調査会社を使ってリサーチを行い、そのリサーチを元に施策に落とすということがマーケティングの手法の中でのセオリーということかと思いますが、今回お話を伺ったそれぞれのブランドでは、ファンを理解することと、ファンとともに施策を実行し、そのフィードバックをファンから得るというループを継続的に循環させていることも各社に共通して得られた発見でした。その小さな循環が常に回っていることも、彼らのブランドのパートナーとしてインフルエンサーとの関係づくりがなされていることの証明かもしれません。

3. インフルエンサーにとってのWinになる指標をつくる

インフルエンサー施策のKPIは誰もが悩んでいるポイントかと思います。SNSでのクチコミによってブランドの好意度や購入意向が高まっていることは明白だが、それをどのように施策として構築し、どの指標を見ていくことがクチコミによる好意度、購入意向につながるのかを課題とされている企業は多い気がします。
今回のトークイベントの中では、アダストリアさん、ワークマンさんのケースを見ると、KPIをブランドとインフルエンサー(アンバサダー)、インフルエンサー(アンバサダー)とその他の顧客で分けていることが特徴的でした。

なんとなくUGCが増えればブランドの好意度、購入意向に結びつくと考えられているものの、上記の2社が実践されていることは、インフルエンサー(アンバサダー)自身のパフォーマンスが上がることにより、その他のファンにも影響が生まれるという因果をしっかりと捉えられている点が大きなポイントです。それぞれ、ワークマンさんではアンバサダー自身のPVが伸びることで、その他のユーザーのUGCも相関して伸びる(結果売り上げにもつながる)ことや、アダストリアさんもスタッフのSNS投稿によってスタッフ経由の購買につながるという点を明確に意識された運用をされていました。

このようにブランド→インフルエンサー(アンバサダー)→その他の顧客でKPIを分けているブランドも少なくないと思いますが、中でも大きなポイントは、ブランド自身が中間にいる「インフルエンサー(アンバサダー)のWin」を大きなKPIとしているという点です。ブランド都合で考えると、アンバサダー経由で自社のPVがどれだけ伸びたかということもKPIに置くことは可能に思えますが、あえてインフルエンサー(アンバサダー)にとって利点になる指標をKPIに置いている点が特徴といえます。インフルエンサー(アンバサダー)にとってどんなことがWinになるのか、そのWinはブランドにとってもWinになっているのかという整合性がピタリとハマった時に、インフルエンサーマーケティングで見るべき指標が歯車として機能していくのだと思いました。

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インフルエンサーを活用するということ自体を目的にするのではなく、そこから自社のビジネスへどういった貢献をもたらすのかを明確に指標として落としていることも忘れてはいけないポイントでした。



4. 思想としてのカルチャーが競争優位を生む

最後に、各社のインフルエンサーとの取り組みを支えている企業のカルチャーも注目すべきポイントでした。
インフルエンサー(アンバサダー)がどのような状態になれば幸せなのか、その意思決定が行動として現れている背景に各社の強いカルチャーが見えました。
たとえばワークマンさんだと、アンバサダーのPVが伸びない場合は自社が費用をかけても良いと言い切れること、DeNAさんがどんなに少人数だったとしてもファンに会いにいくことを徹底されていたこと。各社が行動を起こす背景には「何を大切にしているか」という明確なカルチャーがあり、そのカルチャーこそが競争優位を生み出しているのではないかと感じました。

インフルエンサーマーケティングは手法は模倣できても、その背景にある企業のカルチャーを模倣することは困難です。カルチャーは言語化しづらいと言われ、実際に強みとして機能している仕組みや制度、空気は当事者にとっては無自覚であることが多いからです。

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今回のトークイベントでは企画段階からそのカルチャーの断片でも参加者の皆さんにお伝えできるといいなと思っていました。成功と呼ばれるケーススタディから学ぶことは重要です。しかし、思想のない手法は模倣されやすいのも事実です。ただの手法から一歩踏み込んで、企業が持つ思想としてのカルチャーに触れることで、今回のトークイベントをきっかけに自社でどんな取り組みができるかを検討する際、「自分たちは何を大切にしてきたのか」ということからマーケティングのあり方を再検討できるような機会が生まれると、僕たちにとってこのイベントを開催した意義は大きいと言えるのかもしれません。

全てのことは一朝一夕にできないからこそ、何が大切なのかの価値の見直しを行い、自分たちのブランドだったらどうするのかを問いなおすことが、ひいてはインフルエンサーとの取り組みを捉え直すことにつながるのかもしれません。

5日間、登壇いただいた企業のみなさまのご協力なくしては成り立たないイベントでした。トライバルメディアハウスのスタッフのみんなも本当にお疲れ様でした!
僕たちも5社のトークから多くのことを学ぶことができました。本当にありがとうございました。

5日間のイベントの様子は以下にまとめられていますので、もしよかったら覗いてみてください。


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