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これから、シード・アーリー期のスタートアップはデザインに投資しないと生き残れない

どうも、こんにちは。
前回のブログでは『二郎系ラーメンから学ぶUX』という、少し、エモいテーマで、ブログを書きましたが、今回はかなり真面目なテーマで書いていきます。(以下、全て個人の見解です。)

シード・アーリー期のスタートアップにおいて、デザイナーを雇う価値とは? と、よく聞かれるので、ここでデザインに投資する価値について共有したいと思います。

はじめに

様々なリソースが限られているシード・アーリー期ののスタートアップにとって、〝一人雇う〟という投資は、経営者にとって大変重要な決断になります。経営者は、その投資に対するインパクトを理解した上で、デザイナーを雇うかどうかを決めるわけですが、エンジニアや営業のように短期的にインパクトが判る仕事と比べると、デザイナーの登用は、簡単にROI(投資収益率)を計算することができないのです。

かっこいいブランディングや最高のユーザー体験を提供することで、事業が伸びるというのは、みなさん直観的に分かっていることだと思います。
プロダクトが完成していないシード・(アーリー)段階で、デザインに投資をしたとしても、しっかりとした根拠や数字を通して効果を測るのは、正直難しいかもしれません。短期的な効果を示すことは難しいかもしれませんが、長期的な目で見てみると、様々な効果があると私は考えています。

今回のブログでは、まずスタートアップに限らず、デザインに投資することで、どのような長期的効果や価値が得られるかをグローバル企業の観点から見ていきたいと思います。
そして、その後に、シード・アーリーのスタートアップとって、デザインに投資する意味について考えていきたいと思います。

デザインがもたらす様々な効果

InVision社が2018年に行った、77ヶ国2200社を対象としたデザインとビジネスパフォーマンスの関係性に関する調査によると、以下の効果があると発表されています。

参考文献:https://www.invisionapp.com/design-better/design-maturity-model/

まず最初に、デザイナーを雇うとプロダクトのクオリティーが上がりのは、言うまでもありません。プロダクトのUI/UXをしっかりと設計することで、使いやすいプロダクトになり、顧客満足度が上がります。

次に、収益です。当たり前の話ですが、これが最も重要です。約40%の会社がデザインに投資するとコンバージョンが上がり、売上が向上すると回答しています。また、少し違う計算方法ではありますが、McKinsey社が2018年に出したデザインのビジネス的価値をテーマにしたレポートでも、それが実証されています。

このレポートでは、300社の公開会社の財務業績とデザインの関係性を5年間、調査・分析した後、財務業績との相関関係がある12のデザインアクションを抽出し、それを4つに類型化し、McKinsey Design Index(MDI)として指標化しています。これらのMDIにおいて、トップ25%の指数がある企業とそれ以外の企業を比較した上で、デザインはビジネスに貢献するという結論をだしています。

ここで肝なのが、会社での〝デザイン〟の立ち位置です。
たくさんのデザイナーを雇い、綺麗なUIやVIを作って、それらをデザインシステムに落とし、全てのタッチポイントに適用させていくという、単純な作業ではありません。これらの40%の会社で共通していることは、デザイナーが綺麗なUIを作っているだけ(もちろん、これも重要ですが)ではなく、しっかり川上からプロダクトの戦略に加わっているということです。その結果、経営者、エンジニア、PM, 営業、CSなどの、デザイナー以外の職種がデザイン対する捉え方(表面的なカッコいいデザインではなく、人間の課題解決のために、アイディアやビジョンを導き出し、最終的にカタチにしていく行為という広義での意味のデザイン)が変わり、組織全体にデザインの力がつき、デザイナー以外のところから自然にデザインの議論が生まれる環境になっていきます。

例えば、営業の人。それまでは、とにかく与えられたプロダクトを”売る”ことだけに集中していたとしましょう。川上の状態を知らずに、目の前にきた時点で、売る。ただ売る。一方で、デザインの議論から営業職の人間も加わることで、営業相手に”ただ売る”だけでなく、自ずとプロダクト開発に活かせるニーズをヒアリングするようになる。それらの声がUXのアップデートに活かせ、プロダクトが改善され、顧客満足度、NPS(顧客推奨度)、LTV(顧客生涯価値)などが上がる。つまりは、結果的にARR(年間経常収益)が良くなったり、するわけです。


UXでの差別化が必須な昨今

プロダクトをローンチしたら、それぞれの領域で様々なビックプレーヤーと争わないといけません。このご時世、簡単にプロダクトを真似されてしまいます。ソフトウエアの場合、一つの機能を出したら、競合達がすぐに、その機能をいれてきます。そこで、この競合達に勝つための優位性の一つに「UX」があると思います。いかにユーザーに満足してもらえる体験を設計し、使っていて「いいな」と思えるブランドを作ることが、重要になってきます。
これは、Cのプロダクトだけに言えることではありません。Bのプロダクトもそうだと思います。例えば、Slackの事例をみるとわかります。

Slackとういうスタートアップが、Microsoftといったメガテックカンパニーと互角に戦えているのは、彼らが提要するUXにあると思います。私個人的には、Slackの特定の機能が好きだから使っているというよりは、他のチームコミュニケーションツールと比べると、使っていて、「楽しさ」を感じるから、Slackを使っています。グループチャット、1対1のメッセージング、音声通話などの機能は他の競合とほとんど変わりありません。
Slackには様々なタッチポイントに『楽しさ』が隠れています。

・ロードしているときにSlackのカラフルなロゴが回転したり、
・ワークスペースを変えるときスクリーン全体がカードのようにフリップしたり(アプリの場合)
・ボットがいけてないジョークいったり
・絵文字をカスタマイズできたり


他のエンタープライズ系ソフトウェアに比べると、使っていてはるかに楽しいです。
このように、BとC関係なく、競合に勝つためのバリュープロポジションとして、ユーザーに提供する体験が非常に大事になってきます。ある程度Product Market Fitができてきた後に、しっかりと最高のUXを作ればいい。と思うかもしれませんが、私は、できるだけ早くプロダクトのUXのを作る必要があると思います。
逆に途中から作ると、UXやその周りのブランドを変えるコストが高くなると感じています。情報設計をかえることで、エンジニアコストがかかったり、ブランドを変えることで、マーケティングや営業コストがかかる可能性があったりと、何かと出来上がってからの修正には時間もお金もかかるものです。

シード・アーリーにとっての価値

次に、シード・アーリー期のスタートアップとデザインの関係性について見ていきます。初期フェーズなので、そもそもプロダクト自体も完成してない……ユーザーもほとんどいない……売上もない……という状態かもしれません。ここでデザイナーを雇い、プロダクトのUXを少し変えたとしても、そもそも数字がない状態なので、効果は数字にほとんど反映されません。変化の実感があまり沸かないものなのです。

では、こういうのはどうでしょうか?知り合いの起業家の話ですが………。
はじめ、自分たちに合った(良い)デザイナーとは出会えなかったそうです。そのため、デザインには、ほとんど投資をせずにサービス開発を進めていました。しかしその当時は、資金調達も苦戦。その後、ようやく知人の紹介でデザイナーを雇うことができると、一変して今まで真剣に聞いてくれなかった投資家たちがしっかりと耳を傾けるようになり、資金調達も順調に進んだそうです。

さて、それは何故でしょうか?
ひとえに、〝カタチ〟化が重要であるということに尽きます。
まず、デザイナーが始めにしたことは、会社や事業のビジョンをしっかりとカタチに落としこんだことでした。そうすることで私たち自身もどこに向かっているのか、が明確になります。次に、それに沿って、プロダクトや会社のブランドビジュアルを作成。そうすることで、やりたい事業のイメージをカタチ化。伝えたいことが”正確に”伝わるようになりました。つまり、将来性が見える事業となり、信頼性が担保され、資金調達が上手くいったたわけです。ここで言うデザインとは、ただ、ビジュアルとしてのカタチを作るだけではありません。事業のストーリーや、コミュニケーションを”デザイン”したということなのです。
しかし、このように短期的に効果が生まれることは、稀かもしれません。


みんながUXデザイナー化

最初にデザイナーが入ることで、しっかりとUXを設計できるというメリットがあるかと思いますが、プロダクトの観点以外に、組織的観点でも大きなメリットもあります(先にも少し述べましたが)。それは、デザイナーがUXについて他のメンバーとしっかり議論することで、みんなのUXやDesign Lliteracyが上がり、最終的には全員がUXデザインができるという状態になるということ。UXはUIと違い、グラフィック的なスキルセットをあまり必要としません。UXとは体験をデザインする行為なので、しっかりとユーザーの潜在的ニーズが何で、その為にどうのような体験をデザインすればいいのか、考えるということです。エンジニアだから、営業だからといって、私には関係ないというわけでありません。ここで、重要なのは、デザイナーが”人間中心のデザイン”というものを組織に根付かせるという役割を担うことです。
最終的にはプロダクト開発に関わる全ての人間が、何かしらのユーザー行動変容をデザインする必要があります。

Uberの場合、通常は”電話して、タクシーを呼ぶ”という行動に対して、アプリで簡単に呼ぶという行動の変化をプロダクトを通して促しています。そのプロダクトがCであれ、Bであれ、まずユーザーから注目を集め、プロダクトを使ってもらえるようなコミュニケーションを図り、最終的には何かしらのアクションを取ってもらえることがゴールになります。これらは、デザイナーだけで行なう作業ではありません。もちろん、デザイナーがしっかりと考え、議論をリードする必要がありますが、これらの体験を作るには、全員がUXを考えられる体制を敷くということが重要です。

次に重要なことは、Iterative design(反復設計)というプロセスを社内に構築させるということです。デザインというプロセスは試行錯誤の連続です。完璧なものを一回作って完成というものではありません。とりあえず、プロトタイプして、チームやユーザーからフィードバックをもらって、一回壊して、再構築させるというPDCAを回すこと。
時間がない中、そんなにたくさんのPCDAを回せないよ……と思うかもしれませんが、ここで重要なのがいかに、プロトタイプを通して適切な問いが立てられているか、そして、どれだけそれを高速で回せるかという点です。( いわゆる、lean startupの概念です。)「このデザインを通して、何がしたいんだっけ?」そして、「ユーザーに当てたときにその答えを導けられる設計になっているか?」が明確である必要があります。

最適なデザイナーとは

会社の創業初期の段階で、組織としてのUX や Design Literacyの底上げとIterative Designの文化を根付かせることができたら、素晴らしいプロダクトができると私は思います。ここまで読むと、気になってくるはずです。最初にどんなデザイナーを雇うべきなのかということが。


以下のことができるデザイナーをお勧めします。(必ずしも、正解ではありませんが。あくまでも個人の見解です。)


・自分のデザインをしっかりと言語化でき、他のメンバーにその意図をロジカルにコミュニケーションできる。
・主観的そして直感的なデザインというよりは、human centeredのデザイン設計ができる。
・完成品ではない、30%ぐらいものを見せることができ、それをベースにしっかりと議論できる。
・自分でPDCAサイクルを回すことができるマネージメント能力
・個人プレーヤーというよりはチームプレーヤー


創業初期の段階では、カッコイイものを作らなくてもいいと思います。(最低限はできる必要はありますが。。。)まだ、プロダクトができてない状態で、モバイルのアイコンを作るために、たくさんの時間を割く必要はありません。まずはしっかりと最初のデザイナーがリードして、組織的にhuman centeredでプロダクトを作れるチームを築くこと。最初はこれが重要だと思います。

後からにでも(もしくは同時に)、カッコイイ外面(皮)を作ることは可能なので、まずは丈夫な骨を作ることです。

ご存知の通り、ゼロから事業を作るということは、総合格闘技です。なにか、一つの卓越したスキルを持っているデザイナーよりは、プロダクトやその体験を総合的にデザインできる人材のほうが重宝されます。

まとめ

個人的には、シード・アーリーだからこそ、デザインに投資するべきだと思います。デザイナーが中心となって、会社全体としてのデザインやUXのLiteracyを高め、高速でプロダクトのPDCAを回せる体制を敷くことで、プロダクトを高速で作る。プロダクトがグロースしていくなかで、新しい機能・サービスや、プロダクトの改善が必要なときは、それが自然にできるようになっている状態にする。そして、最終的には売り上げやコンバーションがなどが上がる。最初はすぐに結果に反映されないかもしれませんが、長期的に目でみると、様々なメリットがあるのです。デザイナーは、プロダクトのデザインだけではありません。カッコいいものを作るだけではありません。組織を創り上げていく上で、重要な役割を担っています。ですので、シード・アーリー時からデザインに投資をしていくことをお薦めします。


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高橋亮 / D4V

D4V・IDEO所属 デザイナー兼キャピタリスト @Hyperisland卒業

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