主任試験の改定について

年末に第一弾の発表があった主任試験の大改定ですが、いいねの数も普段よりもはるかに多く、いかに若手のみなさんの関心が高いかを示す結果となりました。

改めて人事委員会からもう少し詳細な発表もありましたので、ここらで今回の改定について記事を書いておきたいと思います。
どちらかというと、この前のマネジメントレビューの記事に近くて私の考えが大半なので、主任試験に受かりたい若手のみなさんにはあまりお役に立てない気がしますが、よければお付き合いください。
試験の合格だけ気になる若手の方は以下の3点目の「都政モノを添削してくれる人を早めに確保しよう」を参考にしてください。
ちなみに、言及するのは論文で職場モノが無くなり、都政モノだけになったことについてです。択一が基礎力確認テストとなり、入都後すぐに受けられるようになったことについては何の文句、心配もありませんので割愛します。
※構成もあまり考えないで思ったことつらつら書いているだけなので、かなり読みにくいです。暇つぶし程度にどうぞ。

目次
①都政モノを勉強することの意義
②職場モノを勉強しなくなることの弊害
③都政モノを添削してくれる人を早めに確保しよう

①都政モノを勉強することの意義
 今回の試験改定の趣旨ですが、「課題分析や政策立案能力を求める」ということらしいんですね。
 求めることはいいんです。課題分析能力や政策立案能力必要だと思います。でもそれって都政モノの論文を勉強することで測れるの?という疑問があります。解決策は今都が取り組んでいることを書くのはダメ。完全なオリジナルにしなさいというのであればまだ理解はできるんだけど、管試みたいにひねりもいらない、職場モノ以上に丸暗記で対応可能な都政モノでこの能力を測る、育てるというのは正直どうなのと思います。
 また、都政モノの論文を書ける実力がついても、正直それを実務で使う環境になっていない。これは主任試験うんぬんではなく、組織風土の問題。若手には裁量権はなく、上層部が意見を聴こうという意識が全くない中で
例えば少子化対策って数年前は「子ども作っても待機児童が多いから働きに出られない!働きに出られないと仕事辞めないといけない!収入も減っちゃう!安心して子育てしてもらうために保育所をたくさんつくろう!保育所作れば安心して子育てできるからみんな子ども産むに違いない!待機児童解消で少子化は解消だ!」というのが世間一般の大正解だったわけですが、全く違いましたよね。
 今でこそ婚姻数の増加こそが少子化対策に最も有効だと気付き始めて、婚活パーティどころかマッチングアプリにまで手を出したわけですが、数年前に主任試験の論文で少子化対策としてこんなこと書いたら「こんなこと都はやっていないし、行政のやることじゃない」と聞く耳すら持ってもらえずに、一刀両断されて0点になっているでしょう。
 少子化は極端な例かもしれないですが、特に最近は高学歴の方も多いですし、若い方は非常に面白い発想の方が多いと思っています。が、正直現在の東京都庁にそうした下からの意見を聞く文化があるようには思えません。それなのに、政策立案能力を主任試験の論文で求めて一体どこで使わせるの?というのがまず一点目、ナンセンスだなと思った点です。

②職場モノを勉強しなくなることの弊害
 次は、職場モノが試験からなくなることによる影響です。
 これまで主任試験を受けようとする人で、都政モノは捨てる人はいても、職場モノを捨てる人はいなかったと思われます。10数年前まではほとんどの人が職場モノを書いていて、都政モノを書く人なんてもの好きの一握りだけだったのですが、最近の傾向としては、職場モノが事例式となり、非常に細かな設定がされるようになって難易度が上昇したことから、準備したことがそのまま書ける都政モノを書く人が増えてきていると思われます。
 とはいっても、あくまで「当たれば」の話であって、数多くある都政課題全てを準備するのは難しく、外れたときように職場モノを準備しておいた人が大半でしょう。少なくとも私は職場モノを一切準備しないで主任試験に臨んだ人を見たことも聞いたこともありません。
 ということで、主任試験の勉強をした方は、合否に関わらず「仕事をする上では進行管理と業務を一人に任せっきりにしない」という大原則を嫌というほど自然に頭に叩き込まれているわけです。
 もちろん実際の職場はもう管理のしようがない問題職員がいたり、業務量に対して定数が少なすぎるとか主任試験では出ないシチュエーションがたくさんあるわけですが、それでも大原則は徹底的に叩き込まれます。
 日々感じている方も多いのではないかと思うのですが、わが社の管理職ってマネジメントがうまい方って本当に少ないです。ただ単に仕事ができる人が管理職になっただけという方が多いんです。名選手が必ずしも名監督とは限らないのにね。圧倒的にマネジメント能力が足りないのに、数少ない徹底的なマネジメントの原理原則である「進行管理と業務を一人に任せっきりにしない」を学ぶ機会が無くなるわけです。机上ですらマネジメントを学ぶ機会が少なくなり、新主任試験合格者が代理になったときに、マネジメントできるようになるのが遅くなるのでは?というのが心配です。
 これまで都政モノと職場モノがありましたが、いうなれば都政モノって「オフェンス」、職場モノって「ディフェンス」なんですよね。都政モノって解決策を実行して実をとりに行くものですが職場モノってマイナスになっている状態を「普通」に戻す方法を書けと言われているだけなんですよね。
 職場モノを無くしてしまうのは、上を見すぎて足元をおろそかにしているのではないか。地に足付けた業務の大半を占めるいたって平凡な、だけれども着実に正確に処理していくことが求められる業務のことを軽視していないかという思いがすごく強くなります。都庁の仕事の90%以上はこういう業務ですよ。

③都政モノを添削してくれる人を早めに確保しよう
 最後の問題点は今後の組織のことというよりかは受験生個人の問題になりそうなことです。
 ①と②で延々問題点を述べてきたわけですが、もう都政モノしか出ないということは決まってしまったわけですから、次の受験生は嫌でも都政モノの準備をしないといけないわけです。
 こうなるともう後は「未来の東京戦略」を読み漁って、都政課題とそれに対する都事業の勉強をしてね。あ、あと、課題に対してどうしてそのと事業をやろうということになったのか、課題の背景分析もしっかりやらないとダメだよ。これは書かれていないことが多いから自分でググるなりして勉強する必要があるよ。頑張ってね。
 と、勤勉なみなさんはちゃんと勉強すると思うのですが、よくよく考えるとその後、ものすごく心配なことが発生します。それは、「練習で書いた論文をいったい誰が添削指導してくれるのか」ということです。
 既にご存じのとおり、論文を書いたときはわが社の管理職に添削してもらう人が大半でしょう。②で述べたとおり、職場モノは自分も書いてきたからどんな管理職でも採点できるのですが、都政モノは管試Bの管理職は添削できないのでは?という心配があります。
 というのも、都政モノって事実上管試Aの問題と大して変わりないわけで、管試Aの人は主任試験のときは職場モノだったとしても、管試で同じような論文書いてきたから添削はできると思います。ただ管試Bの人は主任試験でも管試でも「都政モノ」を書いてことがない人が多いわけで、「書いたことがない論文を添削する」といってもいったいどうやって?と思う管理職が大半だと思うのです。
 実際問題私が主任試験で都政モノの添削をお願いしたけれども、「俺は都政モノは書いたことないから添削できない」と断られたことがそれなりにありました。みなさんも経験ないですか?
 私が受験した頃とは違って、最近は都政モノを書く人が増えていたと聞きますから、ある程度の都政モノ添削ノウハウが各局にあるのかもしれませんがね。
 少なくとも職場モノであれば直属の上司には必ず添削をしてもらえていたのが、都政モノについては全く添削を受ける機会がないという状況に陥る受験生がいるのではないかと非常に心配になります。特に管理職の少ない出先にいる方にとっては、今まで以上に本庁が何とかしれくれないとその時点で非常に大きなハンデをしょっていると言っても過言ではない気がします。
 直属の上司がたまたま管試Aだったという偶然がなければ添削すらろくにしてもらえない格差が発生し、土俵にすら乗れない受験生が出てくる可能性さえあると思います。局内に管試A合格者が何人いるかとか、都政モノを書くためのマニュアルがどれくらい蓄積されているかという局間の差も大きくなりそうです。各局(特に受験人数の割に自局の管理職を自局歴が長い管試Bで固めていて、管試A合格者が非常に少ない局)の主任試験対策担当は相当危機感持っているんじゃないですかね。
 下手すると「主任試験で都政モノを書いて合格した課長代理や主任の方、添削にご協力ください」なんてことになると思います。


以上3点、今回の主任試験改定に関する意見を書いてみました。
意思決定の過程が何ら表に出ていないので、好き勝手に意見させてもらいましたが、実際は相当な分析して決定したことだと思います。書いたようなことなど織り込み済み、対応策も考えていると思いますので、受験生の方はとにかく都政モノ書きまくりましょう。

 ただ私だったら都政モノに統一するより職場モノに統一したかな。
 少なくとも課題分析力というなら既に正解(かどうかはわからないけど、公式見解)が出ている都政モノより、いくらでも事例をひねって難易度調整できる職場モノの方がよっぽど測れると思います。
 また政策立案能力についても「職場モノの回答なんて進行管理とコミュニケーションだけ書いておけばいいんでしょ」というのが浸透しているので、回答条件に「あなたの考えを書きなさい。ただし、進行管理に関する解決策は使用してはいけません。」とか縛り入れるだけで阿鼻叫喚となって、企画力勝負になるかなと。
 何より不平不満だらけの主任試験で少なくとも試験問題だけは所属などに関係なく「平等」になります。
 そもそも今回の主任試験改定が大激減中の管試A受験者を増やしたいだけでは?という思惑があるのではと邪推してしまいます。管試Aを狙うような中の上くらいまでは将来見据えて主任試験の勉強もやると思うけど、中の中より下の若手がやる気をなくしてしまわないでしょうか。配属ガチャだのいつまでも出先のループから抜け出せないだの人事に対する不平不満が募っているところに、さらにそれを固定化、分断を進めてしまわないですかね。
 「勤評もわからない、点数の配分もわからない、論文の評価も詳細はわからない。ないないづくしのブラックボックス試験なのに、とうとう試験問題すら所属している部署のテーマか、勉強したところが当たるかどうかのガチャになるのかよ。もうやってらんねーよ。」とならないかどうかだけが心配です。

 何はともあれ、決定した事項です。受験生はやるしかないです。吉と出るか凶と出るか。今後の都政を担う若手の将来を大きく左右する決定打と思います。数年後、どのようになって結果が表れてくるのか注視したいと思います。
 頑張れ、受験生。