吉上亮

小説・脚本・漫画原作。近作に『ドープマン』,『ブラック★★ロックシューター DAWN …

吉上亮

小説・脚本・漫画原作。近作に『ドープマン』,『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』主な作品に『泥の銃弾』,『パンツァークラウン フェイセズ』,『PSYCHO-PASS GENESIS』,『サイコパス|SS Case.1 罪と罰』,『サイコパス3』

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孤高なる巨星の去る朝に

……彼は長いあいだそうやって坐っていたがやがて東の空が本当に白み始め、しばらくすると神の創った本物の太陽がもう一度、分け隔てなく全てのもののために昇ってきた。 完璧な小説は存在する。 コ―マック・マッカーシーのある小説のある一節を読んだとき、そう思いました。 コーマック・マッカーシーは、僕にとって、世界について最も完璧な小説を創造する偉大な作家のひとりで、彼の作品を知って以来、つねに敬愛の対象であり続けました。 しかし、マッカーシーは別の作品でこうも言っています。 こ

    • C100新刊/SF作家デレマス合同第7弾「シンデレラガールズトリビュート7」試し読み

      C100にて頒布を予定していた新刊「シンデレラガールズトリビュート7」はBOOTH「中央総武線最寄りP」ショップにて通販予約受付中です。以下のリンク寄りぜひお買い求めください。 https://ch-sb-nearest.booth.pm/items/4008124 それでは新刊「シンデレラガールズトリビュート7」の収録3作品の試し読みをお楽しみください。 中央総武線最寄りP 「釜鳴りて神選ぶ」柴田勝家 1  私には悩み事が三つある。  まず一つ目は背が高いことだ。

      • 『dopeman narcotics anonymous.』#3 brotherhood part.3 吉上亮

        #3 brotherhood part.3  スポーツ特待で学校に入ったのはいいものの、格段に優れた成績が出せてるわけじゃない。それはキャリアの行き詰まりを予感させた。高校から大学へ、大学からプロへ――間口はどんどん狭まっていく。要求される能力もどこまでも青天井で上がっていく。  親父が会社を俺に引き継がせようとしていることも分かっていた。俺をスポーツで大学まで行かせて、あわよくばオリンピックにも出られるようなトップアスリートの道を歩ませられるかもしれない、と親が子供によく

        • 『dopeman narcotics anonymous.』#2 brotherhood part.2 吉上亮

          「ガキの頃に誘拐された? ――あいつまたそんな駄法螺ふきやがったのか」 弟は昔からそうだったよ。病的な怖がりなんだ。デカい図体しているくせにな。笑っちまうだろ。最初のうちはな。 だけど、段々と目障りになってくるんだよ。「狼少年」の話は知ってるだろう。狼が来た――と嘘を吐いて大人を騙して遊んでいた少年は、そんな法螺話を繰り返してるうちに誰も信じてくれなくなって、本当に狼が来た時には誰もそいつの話を聞いてくれず、結局、その少年は狼に喰い殺された。 あれと似たようなもんだよ。

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        • 『dopeman narcotics anonymous.』#2 brotherhood part.2 吉上亮

          『dopeman : narcotics anonymous』 #1 brotherhood part.1 吉上亮

          おれ? 針山二郎だよ。 どうして名乗んなきゃいけねえんだよ。あんた知ってんだろ。おれの名前を。あんたが逮捕したんだから。「触れたものを爆発させる」能力のドープマンだよ。あんたに毒を喰らわされて死にそうになった。毒殺しかけて解毒するなんてどんな趣味してんだよ。サドがよ。 マトリさんよ。 名前、そうだよ。 ――マトリクス。 あんた変な名前してるよな。もう少しマシな名前を考えたりしなかったのかよ。あんたのほうがよっぽど俺たちよりドープマンっぽいよ。 でもどうせ偽名だろ。マトリは本名

          『dopeman : narcotics anonymous』 #1 brotherhood part.1 吉上亮

          『dopeman:narcotics anonymous.』#0 peace maker and black sun. 吉上亮

          銃口から煙が溢れ出す。 煙は男の身体を覆っていく。 大地を洗う雨のように煙が晴れた後には肉を削がれて骨が剥き出しになっている。獣に肉という肉を喰われ、血と腐汁を蠅によって吸い尽くされ、百年の日差しと百年の雨に曝され、生の痕跡いっさい磨き抜かれ蛋白石のように光を帯びた煌白の骨。 煙という闇に浮かび上がる骸骨。死者の祝祭の日に街で一番の伊達男が街でもとびきりの美貌を誇る娘を舞踏に誘い、その手に捧げる死者の国からの贈り物。あるいは死そのものを祀る女神の首を彩る飾り。 捧げら

          『dopeman:narcotics anonymous.』#0 peace maker and black sun. 吉上亮

          C99新刊〈バベル合同〉試し読み

          2021年12月31日 コミックマーケット99 2日目 東3ホール"オ"40a「中央総武線最寄りP」で頒布する新刊、 SF作家デレマス合同第6弾『シンデレラガールズトリビュートⅥ BABEL』 その収録全6作品の試し読みを公開いたします。 ■01.野﨑まど『バベルの一六階』※媒体の性質上、本誌収録版と一部の演出に差異がございます(編者註)。 一八歳から。 ご鑑賞いただけます、と書かれた映画のポスターを見つめる。眺めていたところでボクはその映画を見られない。いいや正確には

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          2020年のこと

          2020年もありがとうございました。吉上亮です。 twitterにも書いた通り、商業媒体で発表した仕事は、小説文庫が2冊とwebサイトで1冊分で、合計3冊になりました。 発表時期の順で… ・「RE:BEL ROBOTICA レベルロボチカ β」…昨年末に発表になったイラストレーターMika Pikazoさん原作のオリジナル企画「レベルロボチカ」プロジェクトに、ストーリー・小説で参加しています。公式サイトでイントロダクションとなる短篇「レベルロボチカβ」を掲載していただき

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          新刊『泥の銃弾』第一章全文公開!

           吉上亮・主著『泥の銃弾』は、お陰様で多くのご好評を頂いております。  本編の冒頭から第一章全文を、note.にて公開しています。 SNSなどで本書を知った皆さま、未来に迫る現在へ――「日本」と「難民」を描いた、吉上亮渾身の〈勝負作〉を、この機会にぜひご一読ください。 『泥の銃弾』〈上〉吉上亮ひとつの明々白々たる事実がある。人間はつねに自分が真実と認めたもののとりこになってしまうということだ。 『シーシュポスの神話』アルベール・カミュ/清水徹訳 序章 二〇一九年七月九

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