中井久夫先生のささやかな思い出 10

厳しい側面を。
中井先生を東京にお招きして懇親会が企画されたとき、私に事例提示(症例検討)のお役目がまわってきたので中井先生はじめ皆様の前でご披露した。
中井先生はじめ神戸大学が雑誌・精神科治療学で三ヵ月に一度とてもためになる検討会を掲載していたので私も張り切ってもいた。

厳しいというのは、例えば、「ひそめ眉」があると申し上げた。
眉間に皺がよって気難しい表情になることを病気からくると教わっていたので、そうお話しした。すると、かなり大きな声で、普通の人間でも疲れたら眉をひそめる、なんら病的ではない、というご主張。ごもっとも。男性俳優で眉間のしわが魅力的な人がいたなあ。確かにその通りではあるが、いつもひそめ眉なのはいかがなものか。また何も怒ったかのような大声を出されたのは予想もしていなかった。
さんざんな事例検討ではあったが、現実の患者さんは回復して旅行にも出かけられるようになった。そんなに間違いがあったのか不思議である。

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