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中井久夫さんの本から 10

『西欧精神医学背景史』は、何度か改訂されていて、そのたびごとに読み直した。このなかで「魔女狩り」を取り上げて精神疾患と関連づけたのは独創的であり、スケープゴート、あるいはジェンダー問題からみても基本文献かも。
確か中井先生が渡欧旅行をされて彼の地の理解ある教授が魔女狩りとの関連を、お認めにならなかったとか。当時ヨーロッパの人々に魔女狩りの話題はタブーだったよう。
この本は、一行一行が一論文になるほど濃密と評され、流し読みできない。中東からネパールの記述も仕込みのように挟まれている。

この本は、その昔、中山書店の「現代精神医学大系第1巻に収められていて、系統的に精神医学を勉強しようとしたら中井先生の歴史ならぬ背景史にあたるのだった。
現在にしてみると精神分析に少し詳しいのが脳科学全盛からみて時代を感じさせるかもしれない。
中山書店の大系本はたいていの精神科病院図書室に置いてあったので当直の時によく読んだ。先輩のF先生は学生時代に全巻通読したとか。

中井先生に大系志向があったかどうかはわからないけれど上昇志向はお強い方ではなかったと思う。

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