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髭とひげ剃りと私

久しぶりにひげ剃りを買い替えた。検索すると今どきは「シェーバー」と言うらしい。「シェーバー」あるいは「メンズシェーバー」だ。しかし私はその呼び名では落ち着かない。電気で剃るのが「ひげ剃り」で、T字のものは「カミソリ」だ。カミソリは漢字では「剃刀」と書くのか。

生えているヒゲそのものは場合によって「髭」「ひげ」「ヒゲ」を使い分けるが、剃る機械は漢字の「髭」よりも「ひげ剃り」の方が何故かしっくり来る。

シェーバーという名称の居心地の悪さで思い出したが、最近では「背広」のことを「スーツ」と呼ぶらしい。スーツじゃなんだか分からないな。男の背広は「背広」だ。「パンツ」はあくまで下着であって、人に見せても良いのは「ズボン」だ。


相変わらず前置きが長いな。


以前に電話機について書いた。
あれと同じように「ひげ剃り」について時系列で書いてみよう。

中学2年生の頃だろうか。身体が大人になってあちこちから毛が生えてくる。父が風呂でひげの剃り方を教えてくれた。父は「電気カミソリ」は使わなかった。普通のT字カミソリ1本だ。石鹸を泡立てて顔に塗り、カミソリを肌に当てて慎重に剃っていく。「絶対に横には動かすな。スパッと切れちゃうぞ」と言った。

その後の高校卒業までは、ひげをどうしていたのかは覚えていない。まだそんなに濃くなっておらず、たまに剃るくらいだったのだろう。身体の成長には個人差があった。高校写真部の同級生KTのひげは濃く、朝はジャイアンツの柴田選手のように頬と顎が青々としていた。

高3のとき。クラスメートのKIは美術部員で、似顔絵や漫画が上手な美少年だった。色白でひげなどなく、大魔神のようなKTとは対照的だ。KIがKTをモデルに4コマ漫画を描いた。パジャマ姿のKTが、夜寝ていて寝返りを打ってうつ伏せになる。朝になり寝ぼけまなこのKTは「おはよー」と言いながらリビングに行く。ひげがボーボーと生えていて、顎のひげに何と!枕が突き刺さってぶら下がっている。お母さんが両目をドーンと飛び出させてビックリしている。

大爆笑した。あれから40年が経ったのか。当時18歳だった私も58歳になったが、4コマ漫画の最高傑作として鮮明に覚えている。みんな元気かい?


例によって話が脱線した。戻そう。


大学入学とともに上京する。親父に教わったとおりにT字カミソリで剃っていた。今どきのようなプラスチックのオシャレなものではない。使い捨てで金色の貝印製5本セットである。水色の洗面器にケース入りの石鹸とシャンプーとこれを入れ、上にタオルを乗せて銭湯に行く。洗い場で剃るのだった。

必ず予備を含めて2本持っていく。ある時のこと。銭湯で隣に座った男にカミソリを盗られたことがあった。奴が剃っている最中に私が湯船から戻ってくる。男が金色のT字で髭を剃っている。私のT字が1本減っている。男の方を見ると男はこちらを睨んで「なんだよ〜」と凄んだ。しかしどこにでもある貝印T字カミソリだ。99%彼は泥棒確定なのだが、その日はたまたま私が1本しか持って行かなかったのだと自分に言い聞かせて、彼には言わずに我慢した。悔しかった。

手癖の悪い中途半端なチンピラっぽい男だった。夕方の早い時間に行くと、昔の銭湯では入れ墨を入れた男たちをよく見た。今のように入浴禁止ではなかったのだろう。最近のタトゥーとは別物。日本古来の入れ墨だ。もちろん反社会的勢力とかではなく職人さんのようだった。お祭りになると張り切る人たちだ。話をすると皆やさしく私の話も聞いてくれた。

髭を生やすのに憧れるのもこの頃だ。私も髪と髭を伸ばした時期があった。ハタチの頃はまだそんなに濃くはない。ポヤポヤとヤギのように髭を伸ばし、床屋にも行かず、ドテラを着てコタツに入っているセルフポートレート写真が残っていると思う。


私はちゃんと就職せず写真の仕事を目指した。とは言え学生時代と同じというわけにはいかない。この頃に「電気カミソリ」今で言う「シェーバー」を買ったと思う。数千円の安いものだろう。当時はまだ多様性に対して寛容な世の中ではなかった。髭に対しても世間は優しくなかったので今よりも頻繁に剃っていた。現在は良い世の中になったと思う。少なくとも当時よりも多様性を認める社会だ。

20代の頃に使っていた「ひげ剃り」の記憶は全くない。覚えているのはこれだ。

ナショナルES563ブルー ※写真の出典について文末に解説あり
赤青黄の3色あったらしい ※写真の出典について文末に解説あり

大学を卒業して5年目。通信社で主に夜勤の暗室作業に従事していた。それと並行してカメラマンのアシスタント。徐々に撮影の仕事も増えていった時期だ。家で寝起きできない日も増えた。そんな生活に、乾電池式で水洗いができるこのひげ剃りは便利だった。カラフルでスポーティで私の趣味ではないように今では思うが、何か新しいことに挑戦していこうという当時の気分もあったのだろう。

これは本当によく使った。他の家電でも思うが、今の製品より当時の製品のほうが丈夫で長持ちした。1998年に結婚したが、さっき妻に聞いてみると「この青いひげ剃りの記憶が強い」と言う。結婚前にお互いの部屋を行き来したが、あちらに行くときは必ずこのひげ剃りが当時のドンケバッグに入っていた。

結婚後の何年まで使ったかは記憶にないが、だいたい2004〜2005年頃までか。12〜13年は使ったことになる。若い頃の10年は感覚的に長い。いま考えるともっと長く使ったような気がする。替え刃は何度も交換したがモーターが弱くなってきたので買い替えることにした。


次に買ったのもナショナルの製品だった。妻の記憶では「何か黒いのを買ったけど、あまり気に入らなくて短期間でまた買い替えた」そうである。そうなのだろう。前の青色のものが懐かしかった。

その次が先日まで使っていたものだ。

写真の右。ナショナルES611。左は今回買ったもの(後述する)

確かヨドバシカメラで2〜3千円だったと思う。乾電池式ではなく充電式になり、水洗いは不可能になった。ES611の裏側を見ると、ニカド電池の表示の所に「06年製」とある。電池の製造からひげ剃りの製造まで、そして店頭に並び私に買われるまで、どのくらいの期間があったのかは分からない。購入を仮に2007年としよう。すると買い替えたのは2024年2月だから何と!16〜17年も使ったことになる。

今回これを買い替えるにあたって妻に「これ買ったの7〜8年前だっけ?」と聞いたら、「とんでもない!もっとずーーーっと前だよ」と言われた。時間の感覚が私はおかしいのだろうか。しかし16〜17年とは。


髭が最も濃いのは30代から40代だろう。仕事も働き盛りで忙しい。最近では髭も髪も脛毛も若干薄く、そして1本1本が弱くなってきた。結婚後に妻は何度も「もっと良いシェーバーを誕生日かクリスマスにプレゼントしようか」と考えていたそうだ。しかしヨドバシカメラで私をシェーバー売り場に誘うのだが、肝心の私がその気にならない。

カメラや本なら何時間でも見ていられる。考えていられる。しかし洋服や靴など興味のない物となると途端に面倒くさくなる。「服も靴も試着しないと分からないから着てみて!」と妻は言う。しかし休みの日に店に行き、試着も2つか3つなら我慢できるが、それ以上になると耐えきれなくなり何度も妻と険悪になった。最近はもう決まったものしか買わない。ひげ剃りもナショナルの後継機を何も考えずに買い続けているのはそのためだ。

この数年は仕事も減り、髭は3日に1回程度しか剃らない。しかし先日は珍しくヨドバシカメラのシェーバーコーナーを妻と見た。だいたい4万円台が主流だと分かった。よし!今度こそこういう良い物を買ってみるか!しかし休日は客も多い。私は平日ヒマな日があるので、髭を伸ばしておいて来店してシェーバーのプロに相談しよう。そう決めた。

しかしそのタイミングでメインで使っているデスクトップパソコンが壊れてしまった。金がかかる。あーあ。買うなってことか。パソコンを優先して4万円台のシェーバー購入計画はお流れとなってしまった。

パナソニックES-KS30 (パナソニックの公式サイトより転載)

そして何も考えずにナショナルの後継機をヨドバシドットコムで検索。ナショナルはパナソニックになっていた。お値段なんとたったの1,710円。ES611とそんなに仕様上の違いはないようだ。さて2024年の今日から何年間もつだろう。58歳の私はあと何年ひげを剃るのだろう。それともこれが壊れる前に4万円台のシェーバーを買うのかな。再び面倒くさくなって買わないのかな。


以上、私と髭とひげ剃りの話でした。


※青色のひげ剃りの写真について解説


文の序盤の方で、青い色のひげ剃り「ナショナルES563」の話を書いた。ネット検索で情報と写真が見つかった。しかし一部の例外を除き、基本的に私はSNSでもブログでも電子書籍でも、他人の写真を勝手に使うことはしない。

無断で使うのはもちろん、よく「ネットで拾った画像です」などとあるが、ネットに掲載された写真は「落ちている」わけではない。その人が無断で使ったものは論外であり、その人のオリジナルならもちろん、たとえその人が使用許可を得た写真であっても第三者が使用してはならない。当然だ。

このNoteの最初の投稿である「なぜ撮るのか」には、撮影と写真に関する私のステートメントが記載してある。詳細はそちらを読んでほしいが、著作権について簡単に言うと「すべての制作物には著作権が存在する。好むと好まざるとに関わらず、著作権は制作された瞬間に『自動的に』発生する」のである。

これはSNSであれ何であれ、何か物事を発信する人の全員がしっかり認識すべきことである。全員が加害者にも被害者にもなり得るのだ。私も完全に出来ているとは限らない。常に自分に問うことにしている。

長くなった。ここまで偉そうに語っといて何だけど、今回はネットの写真を使わせてもらうことにした。もちろん充分に考えた。経緯はこうだ。

青い色のひげ剃りを検索した。すると1つだけヒットした。とある中古ブランド品の販売サイトだった。一般の人が出品と購入が出来る。そこに既に販売済みだが、この製品があった。まずは写真の使用許可を得ようと考えた。

すでに売り切れなので出品者の情報はない。販売サイトに当たるのか?しかし写真の著作権は出品者にある。販売サイトには守秘義務がある。私に出品者の情報を教えるわけがない。まして出品者に連絡してくれるはずもない。それでも取りあえず問い合わせるのか?しかし販売サイトは100%「お断りします」となるだろう。私ならそうする。

そこで熟考の上で今回は写真を使うことにした。勝手な考えだがおそらくは良い使い方であり、出品者に迷惑がかかったり、出品者の心象を害するとは思われない。それでも著作権侵害であることには間違いない。もしくは引用元をここに明記するのか?いや、かえって迷惑がかかるかもしれない。

こんな記述もまったくの言い訳でしかないし、何の罪滅ぼしにもならないが書いてみた。販売サイトと出品者の方。すみません。勝手に使った事について謝罪します。またサイトや御本人様から苦情があれば、誠意をもって対応します。

私のフォロワーの方、たまたま読んでいただいた方。この件についてご意見があればお受けいたします。


電子書籍

「カメラと写真」

https://www.amazon.co.jp/s?k=%E6%9C%9D%E6%97%A5%E8%89%AF%E4%B8%80&__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=4P8ICTVTZ5Q0&sprefix=%E6%9C%9D%E6%97%A5%E8%89%AF%E4%B8%80%2Caps%2C174&ref=nb_sb_noss_1


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