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「全日本高校先生クイズ選手権2024」 参戦記

「全日本高校先生クイズ選手権2024」というクイズ番組に中部・東海地区代表として出場しました。そのときの記憶です。

1 予選はいい風が吹いていた

 1月下旬から地区予選の募集が始まりましたが、高校入試・中学入試があったため、メンバー探しの時間もないまま締切1週間前になりました。予選と決勝でメンバーを変更できないこと、大人の日曜日が簡単に2回立て続けに空かないこと、などから4人のメンバー集めは困難を極めました。

 番組HPには予選参加申込とは別に、「この先生に番組に出てほしい(ただし予選通過は自力で)」という他薦ボタンがありました。あるとき、番組から私宛に電話があり「番組にHorieさんへの推薦があり、連絡しました。メンバー集めがんばってくださいね、予選会場でお待ちしております」と喋るだけ喋って、電話はほぼ一方的に切れました。

 ケンタッキー・フライド・チキンの創業者カーネル・サンダースは、かつて自分のチキンの売り込みに1009回失敗し、1010回目に成功したそうです。先ほどの他薦電話で覚悟を決め、サンダースほどではないですが、誘っては断られを繰り返し、無事に4人集まりました。最初に校長先生に「出ませんか?」と三顧の礼でお願いをしましたが、劉備でもない私は3回とも断られました。ちなみに他薦電話の主は卒業生と聞いています。

 結果的には教頭、教務部長、進路指導部長、広報室長という学校PRには十分すぎる布陣で、予選会で面接があれば「学校PRのための布陣を敷きました」と言えるようになり、300万円の使い道も「学校創立100周年記念行事に番組MCを呼ぶ」と平均点は超えられそうな作文もできたこと、が重なったので、アタック25のように筆記→面接で絞る形なら、面接はかなり有利になりました。

 肝心のクイズは、番組HPで「学校にまつわることがすべて出題範囲」とあったものの、学校関係の雑学を軽くチェックした程度ですが、ここでチェックしたことは決勝大会の問題として2問ほど出題されました(正解はできませんでした)。

 とある筋から、参加があまり伸びていないのでは、と聞かされていたのを鵜呑みにしていましたが、どれだけ少なくても代表は1校なのと、蓋を開けたら中部・東海地区は15校の参加があり、緊張感が増しました。

 予選は30分のペーパーテストで40点満点。1問1点の普通のクイズと、時間のかかる問題(魔方陣の穴埋め、1964年以降の夏の五輪開催値、四字熟語のクロスワード、国名しりとりなど)の構成でした。4人で協力して解いてよいとのことでした。

 1問1点の問題はそれほど難易度は高くなかったですが、知っていた問題の中では、世界第2位の淡水湖→スペリオル湖(タンガニーカ湖と書いた)、学問の自由→23条(22条と書いた)、伊豆の踊子の書き出し→天城峠(思い出せず)の3問を落としました。また、さそり座の絵→アンタレス、ホケミ→ホットケーキミックスの2問は教頭に助けてもらいました。

 時間のかかる問題は、夏の五輪開催地はアテネ以外を私が書き、忘れたアテネは教頭が思い出し正解、国名しりとりは先に答え(10カ国くらいのしりとりだったので、最後の国は「ン」で終わると思い、アゼルバイジャンの決め打ち)が浮かび、教頭と進路指導部長のダブルチェックで正解、魔方陣は私がひたすら当てはめ続け正解(数学的には解いてない)、四字熟語は国語の広報室長が解答までたどり着き、トータルでは8割くらいの出来でした。

 筆記終了後、採点結果とは関係ない4校が面接へ。事前作文をしっかり書いたことが功を奏しました。面接は一番最後で、他の高校も帰った後で、用意したこと用意していないことを喋り、十分アピールができたので、帰路につく頃には50%くらいは通っているかな、という期待が持てました。翌日10時くらいに電話があり、めでたく予選通過となりました。

 優勝した畝傍高校の堀家先生は、学生時代から、お世話になっている方で、クイズは二回りくらい強い方です。大学の先輩経由で連絡がとれ、予選会の前から色々アドバイスをしていただきました。面接対策のプリントが流れてきたり、予選通らんわー、とかボヤきながら、予選通過を報告したら「Me Too」と即座に返信するあたりが堀家先生です。

2 予選通過からが本当の試練だった

 予選通過から3月10日の決勝大会収録まで約2週間、後悔のないように対策をしたかったのですが、
 ① 学校取材のこと
 ② 300万円の使い道のこと
 ③ 応援団のこと
 ④ 新幹線の切符のこと
などの対応で連絡が二転三転し、年度末の通常業務の忙しさも重なり、振り返れば無事に大阪に行けただけで良かった、という感じでした。どこの業界もそうでしょうが、年度末はやはり忙しいですね。

 考査最終日に学校取材があり、講堂の前でいろんなポーズをしたり、ドヤ顔でインタビューされたり、と非日常の体験は楽しかったです。夏の五輪開催地を俳句調に覚える「アパセロス ベアパアロベト ロロヘメロ トメミモモロソ バアシアペロリ / トパロブリー」を取材前日に生み出し、黒板に書いておいたら、スタッフに「その落書きを消してください」と一蹴されました。ともあれ、取材協力のクイズ同好会メンバーは楽しそうだったので良かったです。もらえるかわからない賞金の使い道を真面目に話し合うという経験は二度とできないと思います。(本放送はほぼカットでしたが、事前番組で結構いいコメントを残してくれました)。

 さて、収録前のMVPは、私のマネージャー(自称)を語る嫁ちゃんなのですが、私の代わりに新幹線の時刻変更をみどりの窓口まで行ってくれました。時刻変更の連絡をもらった次の日に嫁ちゃんが休みでなかったら、冗談抜きに洒落(ちゃんと漢字で書けます)にならなかったので、無事に収録に行けたのは80%が嫁ちゃんのおかげです。残りの20%はクイズ力です。

3 収録とクイズの神様

 新幹線の切符入手という史上最大の危機を乗り越え、無事に収録当日を迎えました。東大王クイズ甲子園に出たクイズ同好会のメンバーはLINEでメモをためこんでいた、ということを聞いていたので、真似してとっていたメモを新幹線の中で見返すくらいのことはしていました。

 クイズ形式が事前に知らされておらず、ビジュアル問題と多答問題に照準を合わせていましたが、チェックした中では、世界の名画とうろ覚えの足利将軍は的中していました。ただ、全体的に難しめの単語をチェックをしたのは反省です。

 大阪に着いてから「全日本高校先生クイズ選手権2024」とは別の番組の収録がありました。「よんチャンTV」という大阪の番組で、道に迷った人をロザンの2人が目的場所までエスコートするコーナーに参加しました。一度入ったはずの控室から外に追い出され、一度入ったはずテレビ局周辺で道に迷ったところをロザンに道案内してもらうことになりました。

 道に迷いながらも、クイズの勉強は欠かさないということで、abcの問題集を読んでいたところ、ロザンの2人に気づいてもらって2問ほどクイズを出してもらいました。おかげで昼食を食べるタイミングがおかしくなりました。クイズには影響していません。

 リハーサルで立つ場所を確認して、スタジオ脇で堀家先生と話したり、紀元前の戦いを今でも書けますか?と大場先生に尋ねたり、私が東大王に出演していることをご存知だった札幌日大の小林先生と写真を取ったり(あとから写真をいただきました、ありがとうございます)しながら本番を迎えます。ここからはクイズを簡単に振り返ります。

【第1ステージ】
 最初は「抜き打ち学力テスト」。やや高めの難易度でボードクイズ。
 1問目「ウエストミンスターの鐘」は無事に正解したものの、実際は2問目の「1円玉」を私の勘違いで「テレホンカード」で間違えてからクイズの神様がそっぽを向き始めました。昭和30年くらいなら実験的にテレホンカードが生産されてもおかしくない、とか思っていたので目も当てられません。知らないマッカーサーと、読めないゼンマイで、4問中、正解は1問のみでした。

 続く早押し間違い探しは、1問目が、予想問題としてチェックした教室の窓の位置だったのですが、教員はたいてい知ってるので押し負けました。カットされた自由の女神に関する問題(正解は「たいまつの色が違う」)は、ウルトラクイズファンなら一目ですが、これも正解できずでクイズの神様がどんどん遠くへ行ってしまいます。

 それでも「bolleyball」を奇跡的に押し勝って、ちょっと盛り上がったのでよかったです。最初に目に入ったのがバレーボールで良かったです。総じて間違い探しは苦手のようです。

解答者席(鉛筆多い、早押しボタンは赤いボタン)

【第2ステージ】生徒役からの質問に回答クイズ
 100秒間で交代しながら、NMB48とゆうちゃみと錦鯉の長谷川さんのクイズに答え続けるクイズです。他チームの問題を聞きながら、難易度としては大丈夫だったので、不安はありませんでした。

 チーム内順序を教務部長→教頭→進路部長→広報室長にして、1人10秒ペースなら3回解答権が回ってくるので確実に3問正解できればよいかな、と思い、1人10秒で10問正解で100点取って追いつきます、と挑戦前にコメントしましたが難なくカット。何ならクイズ自体もカットということで、我が家で暴動が起きていました(笑)。

 ちなみに私達の100秒間ですが、最初に私が指名したアイドルさんがノートをうまく出せずにやり直しになりました。2回目も同じアイドルさんを指名する余裕はありました。

 私自身の正解は「ウスバカゲロウ(アリジゴクの幼虫、15回ウルトラのドミニカ)」「カミナリ(青天の霹靂の霹靂って何のこと?)」の2問、残り3秒で「openAI(chatGPTの開発元)」が間に合わず終了。チーム全体では「サイエンス・フィクション(SFとは何の略?)」「<(クレッシェンド書いて)」が正解でした。

【第3ステージ】偉人進路相談クイズ
 第1問の野口英世は「母親の名前がシカ」が5着で5点。第2問の美空ひばりは「9歳でのど自慢」で反応できて2着20点、これで首の皮一枚つながりましたが、第3問の西郷隆盛を間違えて終了しました。

 点数差だけ見れば、第3問は何着でも正解してたらサドンデスになっていたわけですが、そんな戦況を判断できる余裕はないので、早めに浮かんだ「渋沢栄一」に賭けましたが、犬のツンを見た瞬間に負けました。

 ということで、決勝戦には進めませんでした。どこでどう言ったか覚えていない「負けちゃいましたね」がオンエアされていました。カメラが回っていたから、何か喋ったんだと思うのですが、3人のメンバーや応援団の方には申し訳なかったなぁと思いました。

【決勝】5ジャンル(5教科)制覇
 決勝戦はスタジオ内で観戦。決勝は解きやすい問題が多く、勝ち負けよりその場で問題を解きたかったなあと多少凹みながら見てました。畝傍高校の優勝は変な意味はなくおめでとうの気持ちが強かったです。これをウルトラクイズに例えるならば、16回のキャメロンパークで敗者となったパソコン父ちゃんの言葉に集約されるのですが、こういった例えがすぐ出てくるくらいのウルトラクイズフリークではあります。だったら自由の女神問題くらい難なく正解しろよ、ということなんですが。

 スタジオをあとにするとき、放送作家の矢野了平くんと会えました。番組が生まれる前に、少しやりとりをする機会がありましたが、当日会えるとは思ってなかったので嬉しかったです。

 私とはほぼ同世代で、90年代半ば、テレビのクイズ王番組が軒並み終わったころに大学生になった世代です。自分たちが活躍の場として夢見たクイズ番組を、作る立場として次々と形にしていくのはホントすごいです。

4 放送後

 番組HPに学校名が掲載されてから、学内を始め卒業生にも反響があったみたいで、地上波の影響力のすごさを感じました。放送前日、保護者の方100人ほどを前に数学の学習法について喋る機会がありましたが、ほぼすべての保護者がご存知でした。

 あと、学校へ向かう道すがら「昨日テレビで出ていた方ですか?」と近所の方から声をかけられました。地上波おそるべし。


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