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お父さんチーンしてあげようか…

ときどき、右手の中指がばね指と呼ばれる状態になります。

ばね指は、指を曲げて伸ばそうとすると指がばねの様になってスムーズに伸びなくなり、指が曲がったままになってしまいます。それを反対の手で戻そうとすると痛みを伴います。

それでもしばらくすると治ります。

また、さほど生活には困らないので、放置しています。しかし、ひとつだけ困っていることがありません。鼻がかめません。

鼻をかもうとして、鼻に手を添えると指に痛みが走ります。鼻をかむたび、声をあげヒクヒクする私を見て、家族は笑ってこう言います。
「お父さん、チーンしてあげようか」

私はその言葉を聞くたび、暗い過去を思い出します。

私は幼少のころ、自分で鼻をかむことができませんでした。幼稚園に入園前のことです。通う予定だった幼稚園の入園テスト、適性検査のようなことがありました。そこで鼻をかみましょう、という課題が出されました。私はその課題をクリアすることができませんでした。また、そのときの園の先生に「お鼻チーンする練習をしてきましょうね」、そのようなことを言われて泣き出しました。

幸いにも、そのあと、急に引っ越すことになり、その幼稚園に行くことはありませんでした。またほどなくして自分で鼻をかむことができるようになりました。

それなのに、また再び自分で鼻をかめない日が来るなんて思ってもいませんでした。

家族は大笑いです。また家族に笑いを提供してしまいました。

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