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雨は、新しい季節のブルーシート。

春から夏に季節が移る時期をわたしたちは「梅雨」と呼ぶけれど、秋から冬にかけて季節が移ろう時にもよく雨が降る。

私は小学生の頃から、「これってあたらしい季節へのブルーシートみたいだ」と思っていた。
私が育った街は住宅街で、しょっちゅう建設中の建物がブルーシートにくるまっているのを見かけていたかもしれない。

建設途中の建物がその姿を隠している間にこっそりと完成して、ブルーシートをはがすとぴかぴかの家ができているように、

雲によって隠され、雨によって空を見上げることを妨げられている間に、新しい季節が雲の上でできあがっていて、雨が去るとすっかり新しい季節がやってきている。

そんなことを想像していたらいつのまにか15年くらい経っていて、いまだに季節の変わり目の雨が降ると「雲の上で今新しい季節が準備中だ!!」と思ってしまっている私がいる。


そんなおとなになってしまった私だけど、最近はじぶんの毎日にも、「季節の変わり目の雨」を重ねるようになった。

何かを新しくはじめるとき、大体はとっても苦しいことばかりだ。雨の日は憂鬱で、頭が痛くなったり、いつもより足取りが重くなったり、いつもなら見える景色がずっとずっと狭くなって見えたりする。

だけど、何かをあたらしくはじめるとは、同時に「何かが新しく変わり始めているとき」なのだと思う。雨が続いて、毎日のなんでもないことがすべて嫌になったり、ときにびっくりするくらい晴れたのにまた雨ばかりの季節に戻ったりしてがっかりしたりすることもあるけれど、じっと毎日を暮らしている間に、いつのまにか雨がいなくなっている。

そうして、ふと吹いてきた風が雨が降る前の季節とは全く別のものになっていることに気づくのだ。

目隠しみたいに雨が降っている間に、ブルーシートの奥では変化の高低差がゆっくりと均されている。今週末もまだ、派手に雨が降るようだけど、その雨が何処かに行ってしまったあと、わたしたちはどんな季節に出会えるだろうか。

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