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ナチュラルワインとカウンターカルチャー

世界において、ナチュラルワインが注目され始めたのは2000年前後だったと思います。

当時はヴァンナチュールとか、日本では自然派ワインと表現していたかな。

*最近、時折「ナチュールワイン」と表現されている方をお見受けしますが

ナチュール(仏)ワイン(英)と、非常に可笑しな感じになってしまいますので、お気を付け下さい。

ナチュラルワインか、ヴァンナチュールが良いと思います。


その頃のワイン生産の現場は

いつでも安定した、いつでも同じ味わいのワインを、いかに沢山生産できるか

そこに重きが置かれてたように思います。

言わばブランドの味。

それを守るために、最新のハイテクノロジーも入ってくる。


それは工場で生まれたワイン、畑で生まれたワインではない。


ん、ちょっと待てよ。

果たして、それで良いのだろうか?


当時から世の中に異を唱える人物は、既に少なからず居いました。


その代表的な生産者の一人が、フランス・ロワール地方でワイン作りを行っていたChristian Chaussard クリスチャン・ショサール。

ワイナリー名をDM. le Briseau ドメーヌ・ル・ブリゾーと言います。

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彼がワインを作り始めたのは1988年。

当時は醸造学校で先生をしていて、当時の生徒にはThierry Puzelat ティエリ・ピュズラも居た事は有名な話。


ティエリ・ピュズラと言えば、今日のナチュラルワインの世界に大きな影響を与えた、皆の先生の様な存在。

そのティエリ・ピュズラの先生が、クリスチャン・ショサール。

言わば、クリスチャン・ショサール校長先生と言った所でしょうか。



クリスチャンのワインは世界に衝撃を与えました。

周りからは「何故そんなに、態々面倒くさく、リスクたっぷりの事をするんだい」とも言われていましたが

クリスチャンは大声でNO!


彼が目指していたのは、昔ながらのスタイルのワイン。

ワインは農作物、昔のワインは畑から生まれていたはず。

そこには必要以上の人的介入や、ハイテクノロジーは必要ない。



彼を代表するワイン、Patapon パタポンのエチケットは実に鮮烈です。

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ユニークなエチケットは、クリスチャンが漏斗(じょうご)を逆さまに被った様子。
実はその漏斗の先からは5本の栓が伸びていて、クリスチャンが好んでいない物が書かれています。


左から
1. C12H22011→SUCROSE(蔗糖)の化学式
2. AOC→ソムリエの皆さんはお馴染み、原産地統制名称(ワイン法)のこと
3. SO2→二酸化硫黄(酸化防止剤)の化学式
4. levure→酵母、この場合は培養酵母のこと
5. syndicat des vins→ワイン組合、この場合はINAO(フランスの原産地呼称国立研究所)のこと
漏斗を通して、外に出してしまおう、と言うことですね。


そして、クリスチャンの顎周りには
vigneron non conforme(規範に従っていない醸造家)とメッセージを込められています。

「俺は、単に美味しいワインを作りたいんだ!」


クリスチャンのこの取り組みに、先のティエリ・ピュズラなどが共鳴し

ナチュラルワインの大きな流れが生まれ始め、カウンターカルチャーとなっていきます。



今でこそナチュラルワインへ対する理解が深まり、ナチュラルワインの生産者が多く誕生したり、愛飲家も増えてきました。


偉大な先人達の取り組みがあって

私たちは今日も素晴らしいワインを愉しめています。


改めて、感謝しなければいけませんね。




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