放送大学 授業科目案内 認知行動療法('14)2 認知行動療法を支える原理とその活かし方

認知行動療法の現場と関係者の苦悩をチラ見

シラバス

放送大学 授業科目案内 認知行動療法('14)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/sinri/1528963.html
担当:神村栄一  ゲスト:奥田健次

2     認知行動療法を支える原理とその活かし方 

概要

人がある環境に対してある行動パターンをとる理由は様々な要因が複合的に効いている。認知行動療法は感染症治療モデルよりは生活習慣病の治療モデルに似ており、根本原因を解決することを目指すのではなく、解きやすいところから解く。すなわち問題行動の変化へと導く。

認知行動の基本モデル(人が環境に対して応答するシステム)は複数の要素(行動、認知、感情、生理的反応)の関連から成り立っており、問題行動をとる場合には悪循環が発生している。例えばうつ病の場合など。変化の技術はさらに多様であり、事例に即して柔軟な実践が必要。

奥田健次氏インタビュー。行動療法の道場を作った。つまり大学のカリキュラムでは即効性があり現実の課題に即した技術を経験できる場が不足しているためセラピストがそのようなことを経験できる場である。暴力や自傷行動をとる子供へお菓子をあげて行動を変えさせるのは餌付けであるという批判が多いが、言葉によるコミュニケーションが確立できていない子供へ語り掛けても暴行被害にあったり本人が怪我をする可能性があり良くない。お菓子は手段の一つにすぎず子供であってもお菓子を用いないことも多い。行動療法で最も大変なのは親や周囲の支援者の説得である。

変化のための常識的原理: 先行手掛かり->行動->結果(メリット出現) ... 学習により行動が習慣化していく

逆に行動を生じにくくさせる場合:誘発する手がかりを減らす、行動を強化するものを撤去する、など。注意*認知行動療法では嫌な感情(罰)を与えて行動を変化させるという手段はとらない。

例、レコーディングダイエット。

認知行動療法では本人の行動のモデルをもとに複合的なアプローチをとる:受け取り方を変える(注目、解釈、深刻さの認識)、対人のやり取りのコツを獲得する(他人のスキル観察、ロールプレイ、フィードバック、試行)、

感想

子供にお菓子をあげる件、学生の頃別の文脈でも見たことがある。教育方法に関する授業で「目が見えなくて耳が聞こえない子供とコミュニケーションするためどうやっているか知っていますか?」という質問の答えが子供にお菓子をあげる、であった。学生からは全く同様に嫌悪感が強かった。学生の答えで多かったのは「たたく」「つねる」であった。教育現場で体罰はまずいだろ・・・という感じだが、どうしてこうなるのか興味深い。

本題に話を戻すと、奥田氏インタビューの、一番大変なのは親の説得、という話は、人の問題行動やその改善を阻むものがまさに周囲との相互作用であるということを如実に物語っていて面白い。また本人にせよセラピストにせよあの手この手の具体的なスキルが重要とのことで、健常者なら当たり前にできることも一歩一歩獲得するしかないのだなあという印象。

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