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めんどくさい女

初めて二人の時間を過ごしてから2週間が経った頃、仕事で遠方から帰ってきた彼から誘いがあった。
あれから私の脳内は彼でいっぱいだったから、嬉しくてドキドキそわそわしながら彼の部屋に向かった。
緊張で表情が固かった気がする。ちゃんと目を合わせての会話もぎこちないまま、向かい合って缶ビールで乾杯した。

何を身構えているんだろう。
何を期待してるの。
あーまた彼の横に座りたいな。
今日は隣に呼んでくれないのかな。
会話をしながら、頭ではそんなことばかり考える。
そんな私を察知してか、彼は世間話で私をはぐらかしていた気がする。

少し酔いが回ってリラックスしてきた頃、
彼「お酒が入ると色っぽくなるね。」
私「そう?」
彼「うん、ふわっとしていいね。隣に来ないの?」
私「だって指名されてないもーん。」
この前したキャバクラごっこの続きのつもりで答える。
初めからずっと隣に座りたかったくせに、素直になれずスネたりして、なんともめんどくさい女だ。

この気持ちは恋をするとよく現れる。
独占欲なのか、気持ちを確認したいのか、
期待が大きすぎるのか。
いくつになっても相変わらずで恥ずかしい。

おいで、と呼ばれすました顔で隣に座る。
嬉しいくせに、今日はなかなか素直になれない。
その後も、もっとたくさん会いたいとか夫とは前からうまくいってないとか、ひとつも面白くない話ばかりしてしまう。

それでも彼はちょうどいい相槌をしたり少し私を諭したり、冗談ぽく私を突き放しながら甘えさせてくれた。

好きな人に甘えられるって、最高に幸せ。
夫にはあまり甘えてこなかったので、実に20年振りのこの感覚。
彼は5歳下なのに、器の大きさと優しい強さを感じた。
積んでる経験が違うんだね。
いい男。

グダグダと存分に甘え、散々さらけ出した日だった。
めんどくさい女でごめんね、と帰りのタクシーでLINEをしたら、返事は「楽しかった!」だった。

いいように転がされるのも恋の醍醐味かもね。
また会いたいな。会えますように。

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