見出し画像

人間は本当に"合理的"?

「自分は合理的な人間だ」と思いますか?もし、そう思っているなら、実は「そう思いたいだけ」なのかもしれません。行動経済学では人間は合理的な生き物ではなく、感情によって行動が左右されていると考えています。
UX全般の話題を扱うメディアUXplanetにデザイナーにとって有用な行動経済学の5つの原則が投稿されています。

①アンカリング効果:先に提示された情報に影響され、判断が変わってしまうこと。

ある大学の実験ではワインの値段を決める際に先に学生にランダムな番号(自分の社会保障番号の下2桁)を書かせ、ワインの値段がどう変わるか実験しました。結果は書いた数字が高いほど(70や99など)ワインの値段が高くなる傾向が認められました。認知バイアスとしても意識しづらいアンカリング効果ですが、使いこなせば強力な武器になります。

②デフォルト効果:難しい選択肢よりも最も簡単な選択肢を選んでしまうこと。

またデフォルトは脳の認知負荷を下げ、かつ「最適な選択肢のように」感じさせます。特徴的な事例として臓器提供の許諾率があります。デンマークでは臓器提供率が4.25%と低く、同じ北欧のスウェーデンでは85.9%と高い傾向があります。教育水準や経済的水準が大きく変わらないのに一体この差はどこから生まれるのでしょうか?スウェーデンが高い理由はあらかじめ臓器提供に対してYESと設定されていることでした。

③摩擦コスト:小さな障害でも人間の行動は抑制されること

入力フォームが長い、支払いは銀行振込しかないなど「ちょっとした手間」によって人の行動は左右されます。Amazonの1クリックで買えるボタンによってどれだけAmazon依存しているか分かりません。これは逆に言えば、手間を増やすことでその行動を抑制できるということ。退会するためにはわざわざ電話しなければいけない、アンケートに答えないと退会ができないなど望ましくない行動を避けることができます。

④ダチョウ効果:リスクがあると分かっていても、そのリスクが存在しないように考えること。

つまり「見て見ぬふり」をする傾向が人にはあるということです。投資家がリスクを見過ごすことから発見された効果ですが、私達にも当てはまります。夏休みの宿題を思い出してみてください。宿題のドリルは何度も目に入っているのに実行するのは夏休み最終日。可能な限りユーザーフレンドリーなガイドラインを作り、リスクをリスクと感じさせない工夫が必要です。

⑤社会的証明効果:他人の行動・意見に妥当性を感じてしまうこと。

行列ができているラーメン屋を見ると「きっと美味しいんだろう」と考えてしまいます。(ラーメンの提供に時間をかけているだけだとしても)あるホテルではタオルの再利用のためにメッセージを

「環境保護のためにタオルの再利用をお願いします」

から

「この部屋に泊まったお客様の大半がタオルを再利用しています。環境保護をするお客様の輪に入りましょう」

と変更したところ44%の増加がありました。

——
私達は社会的な生き物であり、周りの行動から多くを学習します。人間は少数でいるより、その他大勢でいる方が心地よいのです。その意見がたとえ"非合理的"でも脳の省エネにつながるため、楽な道を選びたがります。

最後にローマ帝国の哲学者セネカの言葉を紹介します。

最もよく踏みならされ、また最も人通りの多い道ほど、どれもみな多くの人を迷わせるものである。

頂いた資金は子供支援団体などに寄付していきます。