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二歳差姉妹の抱っこ事情

今回の帰省の前日、「抱っこ紐を持ってきてほしい」とラインが入った。帰省中の育児主任である義父が、次女の寝かしつけに使うつもりのようだった。
「抱っこ紐なんてもう随分使ってないのにね」「お義父さん、腰痛めないかなぁ」なんて夫と話しながら、荷物の中に抱っこ紐を入れた。

二歳の次女は機嫌や体調が悪くなると私以外の人を拒むことがある。人見知りがなく、自立心旺盛で落ち着いた長女と比べると、やや気性が激しく甘えん坊で手を焼くことも多い。それもこの子の個性だと思っていたし、子を持つ友人知人とは「下の子あるあるだよね」と話のネタにしていた。 

二歳と言えば、イヤイヤ期真っ盛り。つたない言葉を懸命に発してはいるけれどうまく意思疎通出来ないことも多く、親も子もストレスを溜めやすい時期だ。果たしてそんな次女を、義父が抱っこ紐でうまく寝かしつけられるだろうか。最近は私でさえ手こずりがちなのに、と。


ところが義父は、実にあっさりと寝かしつけに成功した。それも一度ではなく、何度も。眠った次女を抱っこ紐から布団に降ろすのを手伝い、ポカンと口の開いた寝顔を見ながら、なぜ私はこんな便利なものを長らく使っていなかったんだろう、最後に次女を抱っこしたのはいつだっただろう、と記憶を巡らせた。


五年前のちょうど今頃。長女の妊娠が判明したとき、私たち夫婦は大阪から横浜に引っ越したばかりだった。夫の仕事の拠点が関東になり、私がそれについていく形をとったのだ。慣れない土地で始めてのマタニティライフ。大変なことも少しはあったけれど、つわりもなくすこぶる体調が良かったので、臨月まで好きな仕事に精を出し新生活を満喫していた。そしてほどなく長女が産まれた。

当時の寝かしつけ方法は「抱っこ紐で抱っこして、バランスボールに座ってゆらゆら揺らす」のが鉄板。眠気さえあれば百発百中で、今思えば長女は本当に手のかからない子どもだった。
徒歩圏内にある託児所への送迎、子連れでのお出かけなど、生後半年くらいまでは必ず抱っこ紐で連れて歩いた。体重が増えベビーカーを使うようになっても、抱っこ紐は必需品。外でぐずりだしたらすぐに抱っこしていたし、寝かしつけでは毎晩使っていた。

夫の仕事が一段落した2014年の秋、自宅を横浜から再び大阪へ移した。長女はその時一歳になったばかり、横浜生活はちょうど二年で終わりを迎えた。

新しい環境に慣れようとしていた矢先に、今度は次女の妊娠が発覚。お腹が大きくなるのに備えて早々に抱っこ紐を止め、添い寝で絵本を読んで寝かせ始めた。保育園への送り迎えには車を使うようになった。


夫が仕事の拠点を再度関東に移し、月曜から金曜まで大阪の自宅に帰らない生活が始まったのは、次女が産まれる直前だった。私はワンオペ育児と仕事を両立させるために、娘二人を同時に寝かしつける方法を模索した。ダブルの布団に川の字に並び、右手で次女をトントンしながら、左手で長女に絵本を読んでやった。
次女の寝つきが少しでも良くなるようにと、長女の時は一度も使わなかったおしゃぶりにも頼った。使う前は少し抵抗があったけど、おしゃぶりの威力は絶大だった。次女は一歳半を過ぎるまで、おしゃぶりがないと寝られなかった。

自分が家にいられない性分であることはとうに自覚していたので、生後半年くらいで次女を長女と同じ保育園に預け始めた。生活はすっかり車移動が基本になり、チャイルドシートが娘たちの定位置になった。
そのうち次女も長女を追いかけて歩きたがるようになり、お出かけで抱っこをすることもなくなった。それと同時に抱っこ紐は部屋の片隅に追いやられていったのだ。


そこで初めて気がついた。


私にとって「抱っこすること」は「抱っこ紐を使うこと」とほぼイコールだ。つまり歩き始めてからのこの一年、私はまともに次女を抱っこをしていないのだ。
それどころか、一歳になるまで毎晩抱っこしていた長女と比べると、新生児の頃から添い寝だった次女の「のべ抱っこ時間」はどれほど短いだろう。

「下の子は甘えん坊」あるあるネタにするくらい、それは傾向として知っていた。でもそうなる理由について、私にはあまりに実感が足りなかったのかもしれない。だっこだっことすり寄ってくる次女をハイハイとあしらいがちだったけど、あれは渾身のアピールだったのだ。

二歳差姉妹を育てるにあたり、私が気を遣ってきたのは長女の方だった。「長男・長女症候群」のような話を耳にするたびに、長女ばかりを叱らないようにしようとか、長女に負荷や期待をかけ過ぎないようにしようとか、そこにいつも意識を向けて、次女のことを後回しにしていたのかもしれない。甘えん坊は個性というより「甘え足りない」いち症状なのではないだろうか。


私も私なりに精一杯ワンオペ育児をしてきた自負があるので、罪悪感や後悔に襲われる、というほどではない。だけど気づいてしまった以上、次女との向き合い方をより良いものにしたいと思う。

まずは抱っこ紐の復権から。家事をしながらでも、おんぶなら出来るかな。このエルゴが使えなくなるまで、きっとあと一年足らず。三つ子の魂百までもって言うし、かーちゃん今のうちにがんばるよ。



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