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「ハリーポッターと少年探偵団の世界にようこそ」~ 北ウェールズへの旅物語

初めてのイギリス。

初めてのウェールズ。

素晴らしい思い出をいただき、ありがとうございました。

「2週間滞在できるのならコンウィがいい」

ネットに誰かが書いていたこの一言で決めた滞在先。

そしてtripadvisorで見つけたEstuary View Apartment。

半年以上も前に予約して渡英を待っていると、

イギリスのEU離脱が現実になり、世界は大騒ぎに。

そんな中、妻と姉との3人旅。

成田から一路ヒースローへ。

空港近くのLeonardo Hotel London Heathrow Airportで一泊。

そして朝、Hertzへ。

ここでハプニング。

予約していたフォードの小型車に

3人分の大きなスーツケースが乗せられず、

価格が3倍もするボルボの新車ワゴンに乗る羽目に。

しかし、結果的にはこれが大正解。

高速道路網が極度に発達した、成熟の英国。

ボルボの太いタイヤは高速走行でも安定性は抜群。

全行程1156マイル(1850キロ)を疲れず、

安心して走ることができた。


北ウェールズに入ると

なだらかな丘陵もダイナミックな景観に変わり、

まさに「素晴らしい」の一言。

サービスエリアでの小休止を含めて約5時間、

いよいよ大詰め。

オーナーから送られてきた走行指示書通りにたどっていく。

右折して坂道を上がり、

さらに右へ細い路地を入っていくと、

古い煉瓦造りの向こう隣に

車一台分の駐車スペースが確かに。

やっと着いた。

少し高台になっている。

さて、どこから入るのか。

オーナーの指示書に従って、

勇気を持って目の前の階段を下りていく。

ガラスの入った木の白い扉がある。

さて、鍵は何処にある?

また指示書を読み返す。

keysafeの概念を知らない、

日本から来た老人3人は右往左往。

keysafeの場所にやっと気づいた後も、

鍵が中に入っているとも知らず、

番号を押しながら

ドアと連動しているのではないかと試行錯誤。

ポロっと、鍵を手にした時には、

どれほどの時間が経過していただろう。

しかも、最近ではお目にかかったことのない、

懐かしく古めかしい形の鍵。

鍵穴に差し込んで回すと、

カチャ。

やっとドアが開いた。

古い煉瓦造りの屋根の上、

高台の上空を舞う海鳥がなぜか怪鳥のように見える。

「ハリーポッターと少年探偵団の世界にようこそ」

ドアからすぐに続く絨毯風の階段が呼びかけているようだった。


ちょっと古い表現だが、

シネマスコープのように広く、

ワイドな一枚ガラスの大きな窓。

眺めは秀逸。

目の前はコンウィ川の河口。

帆柱を立てた多くの船が浮かんでいる。

潮の満ち干で景観が常に変化して、

船の行き来は満潮の時のみ。

それ以外は静かにたたずんでいる。

対岸はコンウィの市街地から続く丘陵。

姉が間違ってケースに入れてきたという双眼鏡のおかげで、

草を食む羊たちが小さいながらもよく見える。

天候は千変万化ながらも、

気温は16から18度。

空気はカラッとして湿度は最小。

快適な環境の中で2週間を過ごした。


遠出と近場のドライブ観光を日替わりで楽しむ。

ほとんど毎日、帰りは

巨大スーパーマーケットTESCOで買い物を楽しみ、

朝夕、美味しい手作り料理に舌鼓を打つ。

ただ、料理人たちは

日本とは異なる電熱タイプの調理器具の

温度管理に苦労しているようだが。

料理好きと掃除好きの二人が同行しているので、

万事良好。

小生は日々の無事を祈りながら、

ドライブの安全運転にいそしむのみ。


洗濯の3回目で洗濯機が壊れた。

連絡手段はEメールしかないので、

不慣れな英語でオーナーと仲介会社に報告する。

なんとか連絡がつき、

オーナーに来ていただいた。

修理に4日かかるとのこと。

その時はすでにコインランドリーを見つけて、

洗濯を済ませていたので

「ノープロブレム」と笑って答えると、

オーナーもホッとした様子で笑みがこぼれた。

洗濯機は、あとでメールを見て知ったのだが、

2日後には直っていた。

このコインラドリーのすぐ近くに見つけた

ユーズドセレクトショップ。

素敵な磁器や服、アクセサリーなどを格安で提供している。

それを知らずに最初はウインドウ越しに、

「いい器だなあ。いったいいくら位するのかな」

店に入って値段を見てびっくり。

しばらくしてユーズドショップだと気づく。

この店には、コインランドリーに行かなくなってからも、

日を置いて3度も通ってしまった。

洗濯機が壊れなかったら、知りえない店だった。


表道路から見ると3、4階が我が家。

2階部分(裏の駐車場側から見ると1階部分)はドアと階段のみ。

3階は食卓つきの居間、キッチン、お風呂場とトイレ。

4階に2寝室。

俗に言う、屋根裏部屋。

しかしこれが素晴らしい。

白を基調にした壁にアンチークの立ち鏡や椅子、鏡台など。

オーナーのセンスを感じる。

ベッドも日本人には少々高めだが、

寝ごごち抜群。

本当に落ち着く寝室だ。

ただ、最初は屋根の斜めの部分に、

白ゆえに気づかず、頭を打つこともあったが。


北ウェールズの7月の昼は長い。

なかなか夜が更けない。

それでも午後11時頃になると、

ライトアップされたコンウィ城が遠くに浮かび上がる。

明け方、朝、昼、夕、夜、絶景の日々。


話の種にと、2時間走って

リバプールのビートルズストーリーの入り口に立ち、

何気なくアルバートドックに入ってみると、

そのスケールの大きさと観光客の多さに目を丸くする。

女性たちは早速端から端までウィンドウショッピングを楽しむ。

リバプールの河口の風景も絶景。

美術館にも2館赴いた。

ただ、有料トンネルを通って

リバプールへ入るとは思ってもみなかったので、

突然の暗さと狭い車線には緊張の連続だった。


北ウェールズは、どこへ行っても絵葉書のようだ。

中でもスノードニア国立公園のドライブは圧巻。

そのスケール感は、

大げさに言うと阿蘇や北海道の雄大な自然を

何十倍にもしたように感じる。

カメラには入りきれない。

目に焼き付けておくしかない思い出となった。


約4時間の遠出、湖水地方にも足を伸ばした。

ツアーの定番ウィンダミアは噂どおり観光客でにぎわっていた。

近場では花好きの妻のためにボドナント・ガーデンも訪れた。

広大な庭園と風格のある館。

さまざまな表情を見せてくれる庭だ。

そしてコンウィからひと山、二山、三山越えて

ポートメイリオンへ。

そこに見た砂と水と丘陵の織り成す湾の美しさはたとえようがなく、

しばし呆然。

ただ見入るだけ。


ナビに入力したアルファベット1文字の間違いのために、

延々走っていざなわれたのは

対向車とのすれ違いも、

Uターンもできない一本道。

そして挙句の果ては行き止まり。

再び延々バックで引き返すこととなった。

しかし、その丘いちめんに広がった

牧場の美しさは忘れられない。

勘違いから始まった珍道中は感動の光景で幕を閉じた。


借りた我が家の前、

道路の向こうにホームがチラッと見える。

結構頻繁に列車が通っている感じがする。

終着駅ひとつ手前の駅デガヌイ(Deganwy)だ。

列車に乗って

終着駅のスランディドノ(Llandudno)まで行ってみることにする。

駅舎も駅員も券売機もない駅。

下り線のホーム中ごろに来てみると、

電光掲示板に文字が流れている。

「列車はこの駅には止まらず通過する」

知ってドキッとする。

気を落ち着けて繰り返し読んでみると、

運転手にわかるようにサインを送れと言っているようだ。

時間はまだあるが緊張しながら待っていると、

突然、裏側の道から垣根を越えて

大きな男性がホームに飛び上がってきた。

やっと間にあったという表情でウインクしながら。

するとホームの端から乳母車を押しながら

若い女性がこちらへ歩いてくる。

乗客ができてホッとする。

疑問に思っていた

「チケットはどこで買うのか」

女性に聞いてみると、

一瞬けげんな顔をしたあと、

「乗ってから」と言う。

列車の来るほうを指して、

手を振るポーズをすると、

笑いながらうなずいてくれる。

乳母車の中からはつぶらな瞳が上を見上げている。

ほどなく列車が見えてきた。

大きく手を振る。

乳母車に手を貸しながら列車に乗り込む。

中は満席。

終着駅には7分ほどで到着。

乗客がすべて降りるのを待って、

駅員に乗車賃のことを話すと「必要ない」と言う。

日本人的によくわからないが、

おおらかなことだ。

どおりで若いお母さんに聞いたときけげんな顔をしていたのか。


スランディドノは

ウェールズでいちばんの海浜リゾートの地と後に知る。

コンウィ観光の団体客のほとんどが

この地のホテルに宿泊するとのこと。

アイリッシュ海を臨む海沿いに大きなホテルが延々と続く。

街なかも大賑わいだ。

ちなみにスランディドノは

「不思議の国の・・」アリスのルイス・キャロルが

家族と毎年避暑に訪れたところで、

アリスの物語もここで生まれたそうだ。

どおりで街中いろんなところで

「不思議の国・・」の登場者たちに会えるわけだ。


スランディドノには車でも何度か訪れ、

買い物を楽しんだ。

また、スランディドノが一望できる

ロングケーブルカーで有名な

グレート・オーム・カントリー・パークの山頂にも

ドライブして360度の大パノラマを堪能した。

山頂ちかくのSt. Tudno’s Church の教会墓地も

印象的なたたずまいだった。


2週間過ごしたコンウィに別れを告げ、

北ウェールズからイングランドへの帰路、

没後400年、シェイクスピアの生誕地

ストラトフォード アポン エイヴォンに立ち寄り、

さらにツアー人気ナンバーワンのコッツウォルズでは

ブロードウエイ、バイブリーを散策して土産話を仕入れた。


途中、高速道路で初めての有料区間を経験したが、

イギリスではほとんどの高速道路がフリー。

街中以外は信号のない

ラウンドアバウト(環状交差点)システムのおかげで

渋滞のない走行を実現している。

数車線の高速道路への進入、車線変更、追い越しも、

まさに徹底した譲り合いスピリットで、

時速70マイル(112キロ)の高速走行ながらも

スムーズに折り合いをつけている。

あらためて成熟した英国を実感する。

それにしてもイギリス人は洗車が好きだ。

車はみんなピッカピカ。

そして極端に言うと、商用車、キャンピングカーを除けば

日本のようなズングリしたワンボックスタイプは

まったく走っていない。

テールデザインは小型車を含めて挑戦的、

走りが好きな国民なのだろう。


早朝コンウィを出発して午後3時、

予約どおり無事にHertzに到着。

重い肩の荷を降ろし、ホッとする。

再び、Leonardo Hotel London Heathrow Airportで2泊。


女性二人の要望でロンドンへは地下鉄で。

サウスケンジントン駅で乗り換えて

ウエストミンスター駅で下車。

バッキンガム宮殿の近衛兵の交代儀式を見物、

待望のナショナルギャラリーにも足を運び、

ティールームでアフターヌーンティーとケーキを楽しむ。

帰りは、ピカデリーサーカスからビクトリア駅まで

二階建てバスに乗る体験も。

ウェールズ滞在中に決まった、

メイ新首相のNo.10ドアの官邸がある

ダウニングストリートにも土産話のために足を伸ばす。


地下鉄の乗り換えに汗を流しながら、

朝タクシーで送ってもらったヒースロー空港ターミナル③駅へ。

ところが、そこには常駐のタクシーがいない。

再び地下鉄に乗って、終点のターミナル⑤駅へ。

やっとタクシーでホテルに。

しかし後で考えてみれば、

一日乗車券を購入していたのだから、

空港から二階建てバスでホテル近くのバス停までくればよかったのだ。


ホテルの窓からは滑走路がすぐ目の前に。

次から次へと世界の飛行機が離陸していくのが見える。

今度の旅は、本当に絶景に恵まれた日々だった。

最後に、荷物の過重で高い超過料金を取られたこと、

機体不良で4時間出発が遅れ、

空港ショップで使える10ポンド分のバウチャーはいただいたが、

京都へ帰る姉が

予約していた国内便に乗れず新幹線になったことなど、

ハプニングの連続だったが、まずは無事に帰還。


新鮮な旅、

充実した日々。

ふりかえればふりかえるほど思い出は深くなる。

80歳、72歳、70歳、

老人3人の旅物語。

本当にありがとうございました。








ありがとうございました。

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