r.teramoto0605

今はもう失われてしまったもの。二度と戻ることのできない場所。記憶の中にしかない温かい風…

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今はもう失われてしまったもの。二度と戻ることのできない場所。記憶の中にしかない温かい風景。そうした甘美なノスタルジーに心を揺さぶられます。 泣き虫は夕焼けの風に歌う。

最近の記事

コラム記事書きました

この度、コラム系旅サイト「Wanderlust」さんにてコラムを書かせていただきました。 http://wanderlust-travel.jp/serialization/nostalgia/kofu/ ぜひご一読いただければ嬉しいです。 また、どこかのメディアにて書かせていただける機会がありましたら、こちらでもご報告させていただきます。 それでは。

    • 制服

      クローゼットの奥にしまいこんだ制服を引っ張り出す。何年ぶりだろう。中学を卒業してから五年以上が経った。それ以来一度も出していないはずだから、五年振りということになるのだろう。五年ぶりに再会した制服は「久しぶり」と挨拶することもなく、一瞬で僕を中学時代に引き戻す。金属のバットが白球を捉える乾いた音が青空に吸い込まれていく。ベランダでは清掃委員が黒板消しをはたいていて、白く息苦しい煙が浮かんでいる。体育館からは地鳴りのようなドリブルの音と、定期的に甲高く響くホイッスルの音が聞こえ

      • 向日葵

        土臭い匂いが熱気と共に立ち上っており、乾ききった青空からは絶え間なく蝉の声が降ってくる。それ以外の音は全て遠くに聞こえ、見える景色も陽炎で揺らいでいて、現実感がない。凡ゆるものの輪郭や境界線が茹だるような暑さで溶けきってしまい、僕もその中に混ざってしまいそうだ。 緩く、長い坂道を登る。陽はまだ昇りきっておらず、坂の上から容赦なく僕を照りつける。シャツの袖で額の汗を拭いながら、陽射しから目を逸らし大きく息を吐く。坂を挟むように一面に咲く向日葵は綺麗だが、今は暑苦しい。意を決す

        • 僕とトウカイテイオー

          平成3年、西暦でいうところの1991年。皇帝の息子、トウカイテイオーが危なげもなくクラシック初戦を制したその年、僕は生まれた。後に奇跡を起こすあなたの未来を重ね、僕は名付けられた。 あなたへの想いは驚くほど自然に、くっきりと僕の中にあった。死の危険を伴う心臓手術も、あなたは僕をその柔らかな鞍上に乗せて、軽やかに飛び越えた。そうして、僕はあなたと共に歩んできた。ゆっくりと、ゆっくりと。けれど、不屈の精神で数々の困難を乗り越えた天才は、僕がその雄姿を目に焼きつける前に舞台から退

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