山の色が夏に向かっている。緑が増えて、ああ、そうか桜が散って葉桜になりつつあるんだと気づく。雨上がりで、朝日に沸き立つ匂いが心地良い。どこかこのまま遠くへ行きたい気持ちでいつもの通勤道路を車で走る。窓を開けると好きな匂いがする。みずみずしい若葉を青い空気に浸して光で燻したらこんな匂いがするのかもしれない。天気が良くてお昼休みにご飯を食べた後に歩いてコンビニへ行く。いい散歩だ。コーヒーを買って、店前のU字の金属のフレーム(あれなんて言うんだろう、公園の入り口とかに車が入ってこないようにするようなやつのこと)にほんの少しのあいだ腰掛けてコーヒーを飲んで日差しを浴びる。コーヒーの匂いと初夏の匂い。気持ちいいなぁと思って空を見ていると、ああなんか、一緒にいるのにこんなふうにひとりで青い空を見ているときと同じ気持ちになる人がいるなぁと思い出した。それって、もしかして、会っていても会っていなくても同じ気持ちになれる人がほんとうは大事なのかもしれないな、とふと思う。会っているときに一緒にぼんやりできたら、それだけでいいのではないか。