青年期の初めというか19歳にニューヨークに降り立ったその日からおそらく27歳までは、食に対して無頓着であり、私のニューヨーク生活の３分の２はB級グルメ尽くしであった。

　今でも、特別な機会がなければ高級レストランなど出向かないし、食べ歩いるわけでもないので、もしかしたら私が好んで食べていたモノはC級に属するかもしれない。

　私が一番長く暮らしたであろうマンハッタンはイーストビレッジ。紆余曲折あって服屋の奥にあるシャワー・トイレ付きの倉庫に寝泊まりしていた期間が約４年間ほどあった。その経緯は別に記すが、キッチン無しの寝床で貪り喰っていたのは、主に３つ。屋台のチキン・オーバーライス、中華レストランのホワイトソース付きチキン・ブロッコリー＆ライス、そしてメキシカンのソースがかかったブリートだ。

　まず屋台のキチン・オーバーライス、元々はイスラム教徒のハラール飯（イスラム教の彼らが食べてよいもの）が起源であり、The Halal Guysなんて奴らがニューヨーク屋台飯で人気となって最近店舗をオープンしたらしい。

　ニューヨークの屋台の代表格といえば、ぼったくりのホットドック屋か、ハラールの屋台であろう。大体街の１０ブロック毎に一店あり、それぞれトッピングの違い、値段の違い、量の違いで各屋台の評価はバラバラであるが、総じて安くて美味い。2014年当時でライス、鶏肉（もしくは羊肉）、とサラダがついて5ドル程度であった。

　私のお気に入りの鶏肉と羊肉とのミックスは１ドル増しの６ドルで、私のお気に入りはに屋台は１２丁目とファーストアベニューの角にあり、イスラム教徒の集会所の向かいにあった。そこには週６日は休みなく働いていたエドウィンという目の不自由なオジさんがいた。

　私と話す時、彼は片目、もしくは両目を閉じていたが、学校帰りの夕方でも、酩酊した深夜でも私の声を聞くと笑顔を振りまいてくれた。

　「ハロー、エドウィン、いつものコンボライス！」